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274. 姫は『なんとか』するらしいです
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274. 姫は『なんとか』するらしいです
オレはそのまま残した仕事をするため事務所に、月城さんは自分の収録のためにスタジオに行った。事務所での雑務を終え、コーヒーを買って休憩をしていると女性が入ってくる。
「お疲れ様です」
「あっお疲れ様です」
軽く挨拶をし、その女性も飲み物を買ってオレの向かい側のベンチに座る。
「はぁ……」
女性はスマホを見ながら悩んでいるようだった。見た目はオレと同い年くらい、身長は少し低めで髪の毛は茶髪で少しウェーブがかった全体的に可愛らしい印象だ。まぁ……オレが気にすることでもないかと思い、コーヒーに口を付ける……
いや……ちょっと待て……ここで無視するのも違わないか?なんか……嫌だよな。でも、見知らぬ女性に声を掛けるのもハードル高いよな……でもこのままって訳にもいかないし、オレは思い切ってその女性に声をかける。
「あの……初めまして。オレは3期生の『双葉かのん』のマネージャーの神崎颯太と言います。何かあったんですか?」
「あ。こちらこそ初めまして。私は……2期生の『伊集院クララ』です。えっと……本名は朝比奈紗希と言います」
え?この子がクララちゃんなのか……全然『プロレス芸』のイメージが湧かないが……改めて思うがVtuberってすごいな……とりあえず話を聞くことにする。
「悩み事があるなら聞きますよ。力になれるかは分からないですけど」
「あー……それは……他のライバーのマネージャーに相談してもいいのかな?」
「構いませんよ。朝比奈さんが良ければ」
朝比奈さんは少し言いづらそうにするが話をしてくれた。話をまとめると最近の配信がマンネリしており、チャンネル登録者の伸びが低迷しているそうだ。何とかしてリスナーのみんなに喜んでもらえるようにしたいが、どうしたらいいか分からなくなったらしい。
色々企画を考えても、他のライバーがやったほうが面白くなりそうでモチベーションが上がらない。自分には『プロレス芸』しかないのが分かっていても、それが最近は面白いとリスナーには思ってもらえないんじゃないか?そもそも自分には、その能力が欠如しているのではないか……不安になって眠れなくなる時もあるという。
かなり悩んでるようだった。そして、自分のマネージャーさんに少し休むように言われたらしい。確かにこのまま続けてもどんどんヘラってくだけだろうしな……
それに『伊集院クララ』のキャラはどっちかと言うと気が強いお嬢様だし、今のメンタルならキャラを維持するのも厳しくなるだろうな。
「来週から休むべきなのか……こんな時……ましろ先輩ならどうするんですかね?」
「え?」
「ほら。私って一応ましろ先輩のライバルポジションでデビューしたじゃないですか?だから、一番憧れてるのはましろ先輩なんです。それこそ配信も切り抜きも良く観てますし……もちろん1期生の先輩は全員尊敬はしてます。去年はましろ先輩と企画配信でしたけどコラボ出来て、少しは自分で頑張ったって思ったんですけどね……こんな私が何言ってんだって話ですけど」
「そんなことないと思うよ。朝比奈さんはVtuberとして頑張ってるよ」
「……ありがとうございます」
朝比奈さんのマネージャーの判断は間違ってはいない。でも……オレも配信者として伸び悩む時期は経験してるから、気持ちは分かる。何とかしてやりたいけど……どうしたもんか……
結局大したアドバイスはできずにそのまま仕事を終えて家に戻る。ベッドに横になりながらも朝比奈さんのことを考えてしまう。
「……彼女には武器がある。その武器の『プロレス芸』すら今は……」
オレじゃダメだ。そう……神崎颯太では。そのままパソコンの電源を入れ、『伊集院クララ』のスケジュールを確認するとタイミング良く配信中だ。そのままチャットを送る。
「分かりましたわよ!うるさいですわね。あなたたち、わたくしの執事とメイドなんだから少しは主人のわたくしを……あれ?え?」
コメント
『どしたお嬢?』
『御手洗いか?』
『我慢は良くない』
「違いますわよ!それセクハラですわよ!その……ましろ先輩からチャットが……こんなこと初じゃないかしら……あ!かかってきちゃった、どうしよう……」
コメント
『お嬢語尾w』
『姫がお嬢に何の用だ?』
『とりあえず出よう』
「もしもし?ごめんなさい今配信中ですわ」
《観てたよ。こんばんは姫宮ましろです》
「どうしたんですの?こんなこと今までなかったですわよ?明日雪降ったりw」
《ひどいなぁ。ましろさ、クララちゃんに聞きたいことあるんだけど》
「聞きたいこと?今日のディナーの話?」
コメント
『んなわけないだろw』
『姫のほうが良いもの食べてる』
『やめとけクララ』
「うるせぇクララお嬢様な!……まったくお嬢しか勝たんだろうに!」
《ましろはコンビニのたまごのサンドイッチと唐揚げ食べたよ》
「答えなくていいですわよ!ましろ先輩のイメージ崩れますわよw」
……彼女も立派なVtuberだ。その姿からは悩み事なんて微塵も感じさせない。配信ではしっかりと『伊集院クララ』を演じている。だからこそ辛いんだろう。でもオレが何とかする。彼女は同じFmすたーらいぶの仲間で後輩で……『姫宮ましろ』のライバルだから。
オレはそのまま残した仕事をするため事務所に、月城さんは自分の収録のためにスタジオに行った。事務所での雑務を終え、コーヒーを買って休憩をしていると女性が入ってくる。
「お疲れ様です」
「あっお疲れ様です」
軽く挨拶をし、その女性も飲み物を買ってオレの向かい側のベンチに座る。
「はぁ……」
女性はスマホを見ながら悩んでいるようだった。見た目はオレと同い年くらい、身長は少し低めで髪の毛は茶髪で少しウェーブがかった全体的に可愛らしい印象だ。まぁ……オレが気にすることでもないかと思い、コーヒーに口を付ける……
いや……ちょっと待て……ここで無視するのも違わないか?なんか……嫌だよな。でも、見知らぬ女性に声を掛けるのもハードル高いよな……でもこのままって訳にもいかないし、オレは思い切ってその女性に声をかける。
「あの……初めまして。オレは3期生の『双葉かのん』のマネージャーの神崎颯太と言います。何かあったんですか?」
「あ。こちらこそ初めまして。私は……2期生の『伊集院クララ』です。えっと……本名は朝比奈紗希と言います」
え?この子がクララちゃんなのか……全然『プロレス芸』のイメージが湧かないが……改めて思うがVtuberってすごいな……とりあえず話を聞くことにする。
「悩み事があるなら聞きますよ。力になれるかは分からないですけど」
「あー……それは……他のライバーのマネージャーに相談してもいいのかな?」
「構いませんよ。朝比奈さんが良ければ」
朝比奈さんは少し言いづらそうにするが話をしてくれた。話をまとめると最近の配信がマンネリしており、チャンネル登録者の伸びが低迷しているそうだ。何とかしてリスナーのみんなに喜んでもらえるようにしたいが、どうしたらいいか分からなくなったらしい。
色々企画を考えても、他のライバーがやったほうが面白くなりそうでモチベーションが上がらない。自分には『プロレス芸』しかないのが分かっていても、それが最近は面白いとリスナーには思ってもらえないんじゃないか?そもそも自分には、その能力が欠如しているのではないか……不安になって眠れなくなる時もあるという。
かなり悩んでるようだった。そして、自分のマネージャーさんに少し休むように言われたらしい。確かにこのまま続けてもどんどんヘラってくだけだろうしな……
それに『伊集院クララ』のキャラはどっちかと言うと気が強いお嬢様だし、今のメンタルならキャラを維持するのも厳しくなるだろうな。
「来週から休むべきなのか……こんな時……ましろ先輩ならどうするんですかね?」
「え?」
「ほら。私って一応ましろ先輩のライバルポジションでデビューしたじゃないですか?だから、一番憧れてるのはましろ先輩なんです。それこそ配信も切り抜きも良く観てますし……もちろん1期生の先輩は全員尊敬はしてます。去年はましろ先輩と企画配信でしたけどコラボ出来て、少しは自分で頑張ったって思ったんですけどね……こんな私が何言ってんだって話ですけど」
「そんなことないと思うよ。朝比奈さんはVtuberとして頑張ってるよ」
「……ありがとうございます」
朝比奈さんのマネージャーの判断は間違ってはいない。でも……オレも配信者として伸び悩む時期は経験してるから、気持ちは分かる。何とかしてやりたいけど……どうしたもんか……
結局大したアドバイスはできずにそのまま仕事を終えて家に戻る。ベッドに横になりながらも朝比奈さんのことを考えてしまう。
「……彼女には武器がある。その武器の『プロレス芸』すら今は……」
オレじゃダメだ。そう……神崎颯太では。そのままパソコンの電源を入れ、『伊集院クララ』のスケジュールを確認するとタイミング良く配信中だ。そのままチャットを送る。
「分かりましたわよ!うるさいですわね。あなたたち、わたくしの執事とメイドなんだから少しは主人のわたくしを……あれ?え?」
コメント
『どしたお嬢?』
『御手洗いか?』
『我慢は良くない』
「違いますわよ!それセクハラですわよ!その……ましろ先輩からチャットが……こんなこと初じゃないかしら……あ!かかってきちゃった、どうしよう……」
コメント
『お嬢語尾w』
『姫がお嬢に何の用だ?』
『とりあえず出よう』
「もしもし?ごめんなさい今配信中ですわ」
《観てたよ。こんばんは姫宮ましろです》
「どうしたんですの?こんなこと今までなかったですわよ?明日雪降ったりw」
《ひどいなぁ。ましろさ、クララちゃんに聞きたいことあるんだけど》
「聞きたいこと?今日のディナーの話?」
コメント
『んなわけないだろw』
『姫のほうが良いもの食べてる』
『やめとけクララ』
「うるせぇクララお嬢様な!……まったくお嬢しか勝たんだろうに!」
《ましろはコンビニのたまごのサンドイッチと唐揚げ食べたよ》
「答えなくていいですわよ!ましろ先輩のイメージ崩れますわよw」
……彼女も立派なVtuberだ。その姿からは悩み事なんて微塵も感じさせない。配信ではしっかりと『伊集院クララ』を演じている。だからこそ辛いんだろう。でもオレが何とかする。彼女は同じFmすたーらいぶの仲間で後輩で……『姫宮ましろ』のライバルだから。
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