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242. 姫は『不思議』らしいです

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242. 姫は『不思議』らしいです



 そして更に翌日。オレは今、ある場所に向かっている。それはというと……

「あ。こんにちは。散らかっでますけどどうぞ」

「はい。お邪魔します」

 そう……一ノ瀬さんの自宅に来ている。製菓メーカー『ソプラノ』との案件が決まり、その内容の打ち合わせだ。事務所だと遅い時間にしか集まれないし、オレや衣音ちゃんは一ノ瀬さんの自宅を知っているから、そこに集まろうと言う話になった。

 やっぱり緊張するな……だって女性の部屋だし……一ノ瀬さんは年上だし……でも仕方ないよな……。

 一ノ瀬さんの部屋は、整頓されていて綺麗な部屋だが……オレの視界には部屋干しされた一ノ瀬さんの洋服やら下着やらが目に入ってしまう。違うんだ彩芽ちゃん!これは不可抗力だから!

「あっ!すいません今片付けますがら!」

「いえ……」

 一ノ瀬さんは顔を赤くしながら、慌てて下着などをクローゼットにしまう。なんか……悪いことした気分……

「私の可愛くもない下着を見せてしまってすいません」

「大丈夫だから気にしないでください」

「マネージャーさん。コーヒーでいいですがね?」

「はい。お願いします」

 そう言って一ノ瀬さんはキッチンでコーヒーを入れている。うん。下着は見てしまって悪いと思ったが……可愛い下着だったな……って!何考えてるんだオレは!だからそういうのじゃないからな!?

 一ノ瀬さんの服は水色と白の可愛らしいワンピースを着用している。部屋着なんて初めてだな……なんか……悪いことした気分……

「そう言えば衣音ちゃんはまだ来てないんですね」

「衣音ちゃんは、せっかくだから『ソプラノ』のチョコレート買ってから来るって言ってましだよ?」

「なるほど……」

 オレは一ノ瀬さんが入れてくれたコーヒーを飲みながら、雑談をして衣音ちゃんを待つことにする。ふと配信のパソコン周りをみると、4期生のグッズが置かれていた。

「一ノ瀬さん。4期生のグッズ増えましたね?」

「嬉しい限りです。デビューしてまだ3ヵ月ですけど、本当に毎日忙しくで。マネージャーさんや先輩方はすごいです」

「慣れだと思いますよ。一ノ瀬さんももう立派なVtuberです」

「そう言ってもらえると嬉しいでず。もっと頑張って、みんなの力になれるよう頑張らねばですね」

 そう力強く言う一ノ瀬さん。この3ヵ月で一ノ瀬さんもだいぶ成長している。元々田舎から上京してきて、何も分からない状態だった彼女も、今やFmすたーらいぶを代表するライバーだ。

「あれから3ヵ月……本当にマネージャーさんには感謝してます。あの出会いがなかったら、衣音ちゃんとも繋がれてなかったですし。1人なら挫けてだかもしれないです」

「……昔のオレなら助けなかったですよ。オレも彩芽ちゃんと出会って、1期生と初めて裏で会って変われました。だから本当に今は『姫宮ましろ』のことを誇りに思ってます。彼女もオレだから」

 それからしばらく雑談をしていると、インターホンが鳴り、衣音ちゃんがやってくる。

「すいません遅くなりました」

「別に大丈夫だよ。それよりチョコレートありがとう」

「いえいえ。なんか……神崎マネージャーが『姫宮ましろ』だと思うと、緊張もしますけど……それ以上に不思議な感覚で。それがなんだかおかしくて……」

 そう言って笑う衣音ちゃん。まぁまだ昨日の今日だもんな。普通は驚くよな。

「じゃあ揃ったから、早速だけど製菓メーカー『ソプラノ』とのコラボ案件の企画内容を考えよう」

「初めての『海の迷宮』コラボなんで、絶対楽しいものにしだいですね!」

「そうですね。姫先輩……神崎マネージャーがあけおめ座談会で言ってたコラボの実現ですから、頑張らないとですね!」

 そんな感じでオレと衣音ちゃん、一ノ瀬さんの『海の迷宮』はチョコレートをつまみながら案件コラボの内容打ち合わせを始めていくのだった。
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