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229. 後輩ちゃんは『感謝』されるようです
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229. 後輩ちゃんは『感謝』されるようです
彩芽ちゃんがえるるちゃんにディスコードでやり取りした3日後、ついにその焼き肉会は開催されようとしている。現在時刻は17時で待ち合わせは17時半に現地集合となっている。
オレと彩芽ちゃんはその焼き肉会が開かれるお店に向かっている。あれから、どこのお店にするかを決めたり、予約したりと彩芽ちゃんは頑張っていた。もう大人だし当たり前のことだが、彩芽ちゃんはコミュ障陰キャ女だから、少し心配していたけど杞憂だったみたいだ。
そんなことを思いながら、隣に並んで歩いている彩芽ちゃんの顔を見ると、やっぱり緊張しているのか、顔が強張っているのが分かる。
こういう時は先輩として何か声をかけてあげるべきだよな……。よし! オレは意を決して口を開く。
「彩芽ちゃん。もっとリラックスして楽しもうよ。仕事じゃないんだしさ?」
「……仕事の方が……気楽です」
「そう言わずにさ。せっかくだし、オレもいるんだから彩芽ちゃんは楽しんでよ?」
「……分かりました」
まぁまだ緊張はしてるみたいだけど少しはマシになったかな?そんなことを話している間に、焼き肉会が開かれているお店に辿り着く。そこはオシャレな外観をしたお店で、中に入ると、肉が焼ける香ばしい香りに包まれる。
「いらっしゃいませー」
店員さんの元気な接客を受けながら、予約していた席に通される。個室になっているし雰囲気も良くていいお店だな。
ちなみに、このお店は前に衣音ちゃんが配信で言っていた、『すたフェス』の時に日咲さんが奢ってくれた焼き肉屋さんだ。いいお店を知ってるな日咲さんは。そう思いながら彩芽ちゃんの方を見ると……やっぱり緊張しているのか少し顔が強張っているのが分かる。
「ほら、彩芽ちゃん。深呼吸して」
「はい……すーはー……すーはー……」
「落ち着いた?」
「……はい。ありがとうございます。あの……無理矢理参加させて……ごめんなさい」
「え?いや気にしないで。オレも一ノ瀬さんしか4期生と会ったことないし。それに彩芽ちゃんとの焼き肉楽しみだったしさ」
そうオレが言うと彩芽ちゃんは恥ずかしそうに『私もです』と小さな声で呟く。そんな彩芽ちゃんを微笑ましく思いながら、色々話していると2人が到着したのか個室のドアが開く。
「お疲れ様です。あ。神崎マネージャーお久しぶりです」
「初めまして八神えるるです。あ。かのん先輩ですか?」
「双葉かのんです……初めまして……」
「今日はお誘いありがとうございます。座ってもいいですか?」
「どっどうぞ……」
なんか彩芽ちゃんの緊張がオレにまで伝わって来るんだが……ぎこちない感じになっているな。まぁしょうがないんだろうけどさ。
「かのん先輩。私は園崎ラビです。本名は一ノ瀬凛花です。良かったらお名前聞いてもいいですか?」
「はい。鈴町彩芽です……」
「アタシは柊明日香です。彩芽……ちゃんって呼んでもいいですか?私のことは好きに呼んで下さい」
「えっと……私の方が……年下だと思うので……敬語じゃなくて大丈夫……です」
そこからは4人で食事会が始まる。最初はぎこちなかったが、だんだん打ち解けて、それなりに話せているように見える。
オレはビールを飲みながらその様子を見ている。こうして見ると彩芽ちゃんもすっかり普通の女の子になったよなぁ……そんなことを思いながら焼き肉を食べる。うん!美味いな!流石は日咲さんだ。
「彩芽ちゃん。お皿出して、お肉焼けたから」
「あっはい……」
「仲いいんですね。なんか兄妹みたい!凛花さんアタシもお肉とってほしい」
「ちょっと待ってください。網交換してもらうんで」
兄妹……彼氏彼女には見えないのか。なんか複雑だが……まぁいいか。
「そう言えば、アタシ。彩芽ちゃんにお礼を言いたかったんですよ!と言っても何のことだか分からないと思いますけど。とりあえず聞いてほしくて」
「え?」
「実は、アタシがFmすたーらいぶにハマったのはかのん先輩の切り抜き観てからなんですよ。あの時は大学を卒業して、1年間将来について考えてて。前からVtuberは知ってましたけど、その時は良く分かってなくて。かのん先輩の切り抜きを観るたびに色々なことをしてて、アタシもゲームとか歌とかヘタですけど好きなので、楽しそうだなって思って『今日は何するのかな?』って。それでそこからは、他の先輩の切り抜きや、それこそ過去の『すたフェス』を観たら、もう一瞬で虜になって」
「うっうん……」
「そこからは早かったですね!今はこうして4期生として頑張ってますし。そのきっかけをくれたのはかのん先輩だから、この道を選べたことに本当に感謝しています!」
そう言って、明日香ちゃんは頭を深く下げる。そんな明日香ちゃんに彩芽ちゃんも頭を下げる。
オレも嬉しいけど、なんか照れくさいな。でも、こうして感謝されるのは本当に嬉しく感じるな……。
「なんか恥ずかしくなっちゃった。でも言えたからスッキリした!」
明日香ちゃんは満面の笑みでそう言った。『姫宮ましろ』に憧れて『双葉かのん』になった彩芽ちゃん。そんな『双葉かのん』を観て、『八神えるる』になった明日香ちゃん。こうやって繋がっていくんだな……。
彩芽ちゃんがえるるちゃんにディスコードでやり取りした3日後、ついにその焼き肉会は開催されようとしている。現在時刻は17時で待ち合わせは17時半に現地集合となっている。
オレと彩芽ちゃんはその焼き肉会が開かれるお店に向かっている。あれから、どこのお店にするかを決めたり、予約したりと彩芽ちゃんは頑張っていた。もう大人だし当たり前のことだが、彩芽ちゃんはコミュ障陰キャ女だから、少し心配していたけど杞憂だったみたいだ。
そんなことを思いながら、隣に並んで歩いている彩芽ちゃんの顔を見ると、やっぱり緊張しているのか、顔が強張っているのが分かる。
こういう時は先輩として何か声をかけてあげるべきだよな……。よし! オレは意を決して口を開く。
「彩芽ちゃん。もっとリラックスして楽しもうよ。仕事じゃないんだしさ?」
「……仕事の方が……気楽です」
「そう言わずにさ。せっかくだし、オレもいるんだから彩芽ちゃんは楽しんでよ?」
「……分かりました」
まぁまだ緊張はしてるみたいだけど少しはマシになったかな?そんなことを話している間に、焼き肉会が開かれているお店に辿り着く。そこはオシャレな外観をしたお店で、中に入ると、肉が焼ける香ばしい香りに包まれる。
「いらっしゃいませー」
店員さんの元気な接客を受けながら、予約していた席に通される。個室になっているし雰囲気も良くていいお店だな。
ちなみに、このお店は前に衣音ちゃんが配信で言っていた、『すたフェス』の時に日咲さんが奢ってくれた焼き肉屋さんだ。いいお店を知ってるな日咲さんは。そう思いながら彩芽ちゃんの方を見ると……やっぱり緊張しているのか少し顔が強張っているのが分かる。
「ほら、彩芽ちゃん。深呼吸して」
「はい……すーはー……すーはー……」
「落ち着いた?」
「……はい。ありがとうございます。あの……無理矢理参加させて……ごめんなさい」
「え?いや気にしないで。オレも一ノ瀬さんしか4期生と会ったことないし。それに彩芽ちゃんとの焼き肉楽しみだったしさ」
そうオレが言うと彩芽ちゃんは恥ずかしそうに『私もです』と小さな声で呟く。そんな彩芽ちゃんを微笑ましく思いながら、色々話していると2人が到着したのか個室のドアが開く。
「お疲れ様です。あ。神崎マネージャーお久しぶりです」
「初めまして八神えるるです。あ。かのん先輩ですか?」
「双葉かのんです……初めまして……」
「今日はお誘いありがとうございます。座ってもいいですか?」
「どっどうぞ……」
なんか彩芽ちゃんの緊張がオレにまで伝わって来るんだが……ぎこちない感じになっているな。まぁしょうがないんだろうけどさ。
「かのん先輩。私は園崎ラビです。本名は一ノ瀬凛花です。良かったらお名前聞いてもいいですか?」
「はい。鈴町彩芽です……」
「アタシは柊明日香です。彩芽……ちゃんって呼んでもいいですか?私のことは好きに呼んで下さい」
「えっと……私の方が……年下だと思うので……敬語じゃなくて大丈夫……です」
そこからは4人で食事会が始まる。最初はぎこちなかったが、だんだん打ち解けて、それなりに話せているように見える。
オレはビールを飲みながらその様子を見ている。こうして見ると彩芽ちゃんもすっかり普通の女の子になったよなぁ……そんなことを思いながら焼き肉を食べる。うん!美味いな!流石は日咲さんだ。
「彩芽ちゃん。お皿出して、お肉焼けたから」
「あっはい……」
「仲いいんですね。なんか兄妹みたい!凛花さんアタシもお肉とってほしい」
「ちょっと待ってください。網交換してもらうんで」
兄妹……彼氏彼女には見えないのか。なんか複雑だが……まぁいいか。
「そう言えば、アタシ。彩芽ちゃんにお礼を言いたかったんですよ!と言っても何のことだか分からないと思いますけど。とりあえず聞いてほしくて」
「え?」
「実は、アタシがFmすたーらいぶにハマったのはかのん先輩の切り抜き観てからなんですよ。あの時は大学を卒業して、1年間将来について考えてて。前からVtuberは知ってましたけど、その時は良く分かってなくて。かのん先輩の切り抜きを観るたびに色々なことをしてて、アタシもゲームとか歌とかヘタですけど好きなので、楽しそうだなって思って『今日は何するのかな?』って。それでそこからは、他の先輩の切り抜きや、それこそ過去の『すたフェス』を観たら、もう一瞬で虜になって」
「うっうん……」
「そこからは早かったですね!今はこうして4期生として頑張ってますし。そのきっかけをくれたのはかのん先輩だから、この道を選べたことに本当に感謝しています!」
そう言って、明日香ちゃんは頭を深く下げる。そんな明日香ちゃんに彩芽ちゃんも頭を下げる。
オレも嬉しいけど、なんか照れくさいな。でも、こうして感謝されるのは本当に嬉しく感じるな……。
「なんか恥ずかしくなっちゃった。でも言えたからスッキリした!」
明日香ちゃんは満面の笑みでそう言った。『姫宮ましろ』に憧れて『双葉かのん』になった彩芽ちゃん。そんな『双葉かのん』を観て、『八神えるる』になった明日香ちゃん。こうやって繋がっていくんだな……。
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