上 下
210 / 693

188. 姫は『まずい』ようです

しおりを挟む
188. 姫は『まずい』ようです



 翌日。オレは桃姉さんと共にリビングで元日の配信の打ち合わせをしている。彩芽ちゃんは事務所のスタジオで年末のすたライの3期生のユニットとルナちゃんとのユニットの収録が入っているので不在だ。

「今回の最後の枠は『姫宮ましろ』の枠で行きたいんだけどいいかしら?」

「企画は考えるのか?」

「ううん。事務所で会議したから、颯太が良ければこれでいくけど」

 そう言って桃姉さんはスケジュールをオレに見せてきた。

『あけおめ!元日からFmすたーらいぶ!』日程

 9:00~10:00 
 すたライフ あけおめアニメーション

 10:00~13:00
 Fmすたーカウントダウンライブ見逃し配信

 13:00~14:00
 あけおめ座談会!昨年の振り返りと今年の抱負を添えて~4期生~ 
 ※枠主は夢花かなえ

 14:00~15:00
 あけおめ座談会!昨年の振り返りと今年の抱負を添えて~3期生~ 
 ※枠主は九重キサラ

 15:00~16:00
 あけおめ座談会!昨年の振り返りと今年の抱負を添えて~2期生~ 
 ※枠主は遠山さくら

 16:00~17:00
 あけおめ座談会!昨年の振り返りと今年の抱負を添えて~1期生~ 
 ※枠主は神川ひなた

 17:00~19:00
 姫の初演説
 ~ライバーとの関係性を再確認!~

 なるほど初演説か。あとは同期が集まる座談会か。去年は『リスナーが選ぶ公式企画配信ベスト10』とか『Fmすたーらいぶオリジナル曲メドレー』をやって、最後の枠でさくらちゃんの『あけおめだぜい!逆凸捜査の巻』をやったんだったな。

「今年の『姫宮ましろ』はコラボも多かったし、何より今までとは違う一面を見せてきたでしょ?Fmすたーらいぶの在籍ライバーとの関係性の変化を話しながら、初演説をする。この内容でいこうと思ってるの」

「ああ。いいんじゃないか?去年の思い出を話しながら、今年そのライバーさんとやりたいこととかを話すのもいいかもな」

「よし。じゃあ決定ね。これでライバーには事務所から連絡するから」

 1期生とのコラボも新年一発目からあるのか……座談会か。去年のオレなら考えられなかったよな。本当に色々変わったな。

「そういえば颯太」

「ん?」

「最近彩芽ちゃんとどうなの?上手くやってる?」

「え?別に仕事に支障は出してないはずだけど?」

「そんなこと言ってないわよ。最近忙しくてすれ違いになってない?ちゃんとフォローしないとダメよ?仕事もプライベートも」

 そのまま桃姉さんはパソコンで仕事をし始める。確かに……最近は忙しくて彩芽ちゃんとは『双葉かのん』の仕事の話ししか、まともに出来てないかも……

 待てよ……良くドラマや漫画などで、こうやって仕事のすれ違いが続いて別れるなんてこと聞いたことあるぞ……これはマズい……でもどうすれば……

 オレはそのまま部屋に戻り、日咲さんにディスコードで通話をすることにする。残念だが、オレには日咲さんしか頼る人がいないんだ。

「あ。もしもしポアロ探偵?」

 《姫?どした?》

「ちょっと話したいことあってさ。今仕事中かな?」

 《今、事務所であるととのすたライの収録の仕事中だけど?》

 そうか、日咲さんは衣音ちゃんと『あるアロ』のユニットを組んでいるんだったな。すると後ろから声が聞こえてくる。

 《あの……ましろん先輩ですか?》

 《うん。なんか話したいことあるんだって》

「あ。かのんちゃんいるんだった……忙しそうだね。またかけるよポアロ探偵」

 《え?あっうん》

 そうしてオレは通話を切る。彩芽ちゃんがいるなら今は無理だ。さすがのオレも空気くらい読める。しかし、オレはこのままではまずいと感じている……だって彩芽ちゃんと付き合ってからもうすぐ3ヶ月が経とうとしているのだ。なのにその間まったくデートというデートをしていない。

 つまりオレと彩芽ちゃんは恋人として全く進展がないのである。彼氏という立場よりマネージャー、先輩のVtuber『姫宮ましろ』として接しているほうが長いのかもしれない。

 これは……なんとかしなければ……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた

ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。 俺が変わったのか…… 地元が変わったのか…… 主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。 ※他Web小説サイトで連載していた作品です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

催眠アプリで恋人を寝取られて「労働奴隷」にされたけど、仕事の才能が開花したことで成り上がり、人生逆転しました

フーラー
ファンタジー
「催眠アプリで女性を寝取り、ハーレムを形成するクソ野郎」が ざまぁ展開に陥る、異色の異世界ファンタジー。 舞台は異世界。 売れないイラストレーターをやっている獣人の男性「イグニス」はある日、 チートスキル「催眠アプリ」を持つ異世界転移者「リマ」に恋人を寝取られる。 もともとイグニスは収入が少なく、ほぼ恋人に養ってもらっていたヒモ状態だったのだが、 リマに「これからはボクらを養うための労働奴隷になれ」と催眠をかけられ、 彼らを養うために働くことになる。 しかし、今のイグニスの収入を差し出してもらっても、生活が出来ないと感じたリマは、 イグニスに「仕事が楽しくてたまらなくなる」ように催眠をかける。 これによってイグニスは仕事にまじめに取り組むようになる。 そして努力を重ねたことでイラストレーターとしての才能が開花、 大劇団のパンフレット作製など、大きな仕事が舞い込むようになっていく。 更にリマはほかの男からも催眠で妻や片思いの相手を寝取っていくが、 その「寝取られ男」達も皆、その時にかけられた催眠が良い方に作用する。 これによって彼ら「寝取られ男」達は、 ・ゲーム会社を立ち上げる ・シナリオライターになる ・営業で大きな成績を上げる など次々に大成功を収めていき、その中で精神的にも大きな成長を遂げていく。 リマは、そんな『労働奴隷』達の成長を目の当たりにする一方で、 自身は自堕落に生活し、なにも人間的に成長できていないことに焦りを感じるようになる。 そして、ついにリマは嫉妬と焦りによって、 「ボクをお前の会社の社長にしろ」 と『労働奴隷』に催眠をかけて社長に就任する。 そして「現代のゲームに関する知識」を活かしてゲーム業界での無双を試みるが、 その浅はかな考えが、本格的な破滅の引き金となっていく。 小説家になろう・カクヨムでも掲載しています!

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで

あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。

お兄ちゃんは今日からいもうと!

沼米 さくら
ライト文芸
 大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。  親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。  トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。  身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。  果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。  強制女児女装万歳。  毎週木曜と日曜更新です。

処理中です...