上 下
174 / 718

153. 姫は『やる気』があるそうです

しおりを挟む
153. 姫は『やる気』があるそうです



 4期生御披露目配信まで残り2日。オレは一ノ瀬さんと最終調整をしながら、初配信で何を話すかなどを決めていった。

 設置した機材の扱いにも慣れてきているので、スムーズに準備が出来ていると思う。あとはなるようにしかならない。

 時間は16時。そんなオレは、『姫宮ましろ』として事務所に呼ばれていた。今日は公式企画の収録があるからだ。

 内容は『夢のFmすたーらいぶ!先輩!あの子の良いところ教えてください!』というもので、これからデビューする4期生のためにオレこと『姫宮ましろ』と立花さんこと『魔月リリィ』のFmすたーらいぶでトップの2人が他のライバーのことを話していくというものだ。

 ちなみに3D生配信で司会は玲奈ちゃんこと『葉桐ソフィア』ちゃん。初司会らしい。

 そんなこんなで、控え室に案内される。中にはもう既に玲奈ちゃんがいた。

「おはようございます」

「あ。ご機嫌よう。颯太さん今日はよろしくお願いいたします」

「うん。よろしく」

 オレが席につくと、スタッフの方がやってくる。台本を受け取り、内容を確認する。

「颯太さん。リリィママってどんな人ですか?私あまり話したことなくて、挨拶は何回かしたことあるんですけど」

「うーん。そうだな……」

 その質問に答えようとするとタイミング良く立花さんがやってくる。

「おはようございます。魔月リリィです。よろしくお願いします」

「あ。おはようございます。葉桐ソフィアです。こちらこそよろしくお願いします」

 ……Fmすたーらいぶの最年長と最年少が目の前に並んでいるのを見ると、不思議な気分だ。しかし、今は打ち合わせの時間なので雑談をしている暇はない。そして、今回の企画について説明を受けて配信時間まで待つことにする。

「あの!私……佐伯玲奈って言います。もしよろしければお名前を聞いてもよろしいですか?」

「あ。私は立花紫織よ。よろしくね玲奈」

「立花さん?紫織さん?紫織ママ?」

「ママじゃないわよw」

 そんな感じで、玲奈ちゃんは緊張しているのか、ソワソワしていた。彼女にとってみんな年上だし、大人だからな。高校生が良く頑張っているよ。とオレも関心する。

「そう言えば颯太。あなた4期生の『園崎ラビ』のマネージャーになったんだって?」

「一応、正式な担当マネージャーが退院するまでの間ですけどね」

「あれ?彩芽さんのマネージャーは?」

「今は桃姉さん……神崎チーフマネージャーがついてくれてるよ」

 玲奈ちゃんはそれを聞いて、何かを納得するような顔をしながら話を続ける。

「だから最近、彩芽さん元気ないんですね。配信の切り抜き観ててもいつもと違いますし、同期だから分かります」

「颯太。ちゃんとフォローしてあげなさいよね?今まで一緒にいたのに仕事とはいえ急に離れるなんて、本当は辛いんだから」

「ちゃんと一緒に居てあげてるんですか?いつもと同じじゃありません?ダメですよ、離れた分はきちんと埋めないと。嫌われちゃいますよ?」

「え?嫌われるのか?本当に?」

「当たり前でしょ。放って置けば熱が冷めるでしょうに。私たちVtuberだって長期間配信を休んだら、少なからずリスナーにも離れる人がいるのと同じよ?」

「颯太さん。もう少し考えてあげたほうがいいですよ?女の子はデリケートなんですから!」

 なるほど。そういうものなのか……なんかJKの玲奈ちゃんにまで言われているオレって一体……。というかただ心配してくれているだけだよな?彩芽ちゃんと付き合ってるのバレてる?

 すると、扉がノックされスタッフが入ってくる。そろそろ配信開始のお時間のようだ。

 スタジオに入り、オレは気を引き締め直し配置につき画面を確認する。こうして自分の動きに『姫宮ましろ』が動いているのを見ると、違和感はあるが、それと同時にやる気が出てくる。

「ねぇ颯太」

「なんですか?」

「こうやって『姫宮ましろ』と並ぶ時が来るなんてね」

「確かに初めてですよね……すいません。大分待たせてしまって」

「謝らないでよ。すごく嬉しいし、前にも言ったけど、私たちはこれからなんだからさ?」

 そう言うと、立花さんは少し微笑みながらオレの顔を見る。オレもそれに答えるように笑顔で返すと、スタッフから合図が出る。

 良く考えてみたら、まだまだ初めてのことが多いよな。『姫宮ましろ』として、これから色々と経験していくことになる。そんなことを考えるとまた不思議とやる気が出てくるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!

電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。 しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。 「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」 朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。 そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる! ――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。 そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。 二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...