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89. 後輩ちゃんは『逆凸』されるようです

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89. 後輩ちゃんは『逆凸』されるようです



 時間は0時を回る。オレは鈴町さんとお酒を飲みながら色々話をしていた。

「鈴町さん。Fmすたーらいぶのライバーでまだ絡んだことない人いる?」

「2期生の先輩のクララ先輩とルナ先輩は……まだ絡んだこと……ないです」

「そっか。でも今度『ましポん48』の企画の『迷える子羊に慈悲を。シスターいのりのお悩み相談室』で一緒になるな。2人とも優しいよ」

「そう……ですか。頑張ります」

「オレもできる限りサポートするからさ」

 そのあとも色々話をしながら飲み続けていると、気づけば鈴町さんのお酒を飲むペースが早いような……。というか……もう何本開けたんだよ?

「鈴町さん。そろそろやめた方が……」

「大丈夫れす。ふぅ~……」

 全然大丈夫じゃないだろ。呂律回ってないし。とりあえずお水飲ませないと。そんなことを思っていると鈴町さんのスマホに通知がくる。

「あ。」

 そう一言呟くと自分のノートパソコンを開き、カタカタと何かを打ち始める。何をしているのだろうか?

「ポアロ先輩から逆凸がきましゅ」

「いや。その状態で配信に行くの?大丈夫か鈴町さん?」

「先輩の配信なので……」

 オレもそのままパソコンを開き、日咲さんの配信を開く。どうやら公式に発表された『ましポん48』の話の流れで、逆凸することになったようだ。

 とにかく鈴町さんが変なことを言って炎上しないようにしないと。これは『姫宮ましろ』として、『双葉かのん』のマネージャーとしての責務だからな。

 《もしもし?ポアロ探偵です。ごめんね夜分遅くに。かのんちゃん寝てた?》

「いえ。寝てましぇん」

 《あれ?もしかして酔ってる?》

「今飲んでましゅた……ふぅ~……」

 《お~い!ヤバそうじゃんかのんちゃんw》

 確かにヤバそうだな。オレは日咲さんに通話を繋ぐことにする。

 コメント
『かのんちゃん可愛い』
『酔っぱらい妖精』
『草』

 《ん?あっ待って!もう1人来た……もしもし?》

「こんばんは。ましろです」

 《おお姫!もしかして、かのんちゃんと一緒にいる?今日案件だったもんね?配信観たよ》

「ありがとう。今はかのんちゃんと一緒にお酒飲んでたよ。声大丈夫かな?ノートパソコンだからさ?」

 《大丈夫。聞こえるよ。今さ『ましポん48』の意気込みを聞きたくて凸したんだよね!》

 コメント
『ナイスタイミング』
『神回確定演出』
『姫最高!』

「意気込みでしゅか?かのんはコミュ障陰キャ女おつなので、みんなと色々な企画で仲良くなりたいでしゅ。あとは大好きなましろん先輩と一緒なので幸せでしゅ。よろしくお願いしましゅ」

「ましろは、48時間耐久配信だから体調に気をつけながら、かのんちゃんとポアロ探偵と一緒に頑張りたいかな。みんな楽しみに待っててくださいね」

 《ありがとう2人とも!ところで今は温泉施設にいるの?》

 コメント
『ましのんてぇてぇ』
『一緒に温泉入ったの?』
『もしかして一緒に寝るの?』

「そうだよ。温泉は一緒には入ってないし、別々に寝るかな。ビジネスだからw」

「え?一緒に寝ないんでしゅか?私一緒に寝れると思って楽しみにしてたのに……」

 《お~い!『私』になってるぞかのんちゃんw》

 コメント
『私助かる』
『かのんちゃんとましろん一緒の布団でおねんね』
『このままだと事故りそうw』

「あはは。ごめんなさい。ちょっとお酒飲み過ぎちゃったみたいで。それじゃ、お酒飲んでるからこの辺で切るよ。またねポアロ探偵」

「なんで切るんでしゅか?まだ私話したいことある……」

 《あはは。かのんちゃん、姫ありがとね!まさか飲んでるとは……。危ない危ない。これポアロの配信だからさ?切り抜かないであげてねw》

 とフォローをしてもらい、通話を切る。本当に危ないよ鈴町さん。あのままなんか変なことを言われたら大変だし。まぁオレは裏でも鈴町さんにはましろん先輩と呼ばれているけど。

 そのまま鈴町さんを布団に誘導し、オレは隣に座る。

「ほら鈴町さん。横になりな。風邪ひくよ」

「ましろん先輩……優しい……大好き……」

 オレの左頬に柔らかい感触。そして鈴町さんの顔が目の前にあった。突然のことで頭が真っ白になる。

「鈴町さん……今……何を?」

「ましろん先輩……大好き……ずっと……こうしていたい……です」

「鈴町さん……オレは」

「……すぅ……すぅ」

 数秒して鈴町さんはスヤスヤと眠りについた。オレはその唇に視線がいってしまう。柔らかそうなぷっくりした桜色の小さな口。鈴町さんが起きないようにそっと指先で触れてみると……思った通り柔らかく弾力があった。

「はぁ……オレも寝るか」

 オレは左頬を手でなぞりながら、隣の布団を少し離してからを目を瞑る。するとすぐに睡魔に襲われ眠りについた。
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