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65. 後輩ちゃんは『特訓』するらしいです

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65. 後輩ちゃんは『特訓』するらしいです



 そしてその日の夜。オレは今、鈴町さんと明日の朝配信の練習に付き合っている。どうやらトップバッターは鈴町さんこと『双葉かのん』のようだ。

 ちなみに夏風邪がうつるからと言ったのだが、鈴町さんが半泣きでお願いしてきたので、仕方なくこうして練習している。

「おは……おはようござ……います」

 ……良く考えたら『双葉かのん』じゃない鈴町さんでは練習の意味ないのでは?

「あのずずまぢさん?」

「ましろん先輩……喋らなくて大丈夫ですから」

 いや。このままじゃまずい気がするんだけど……オレはスマホを取り出し、メモの機能を使い鈴町さんに伝える。

『鈴町さんがいつもやってる夜配信と同じで大丈夫だよ』

「でも……普段は1時間です……2時間も……もつか心配で……それに、話す内容は……その日にやったことですし……」

『なら前日のこと話せば?』

「2時間も話せません……それに……私……コメント拾うのヘタだし……」

 陰キャでコミュ障の鈴町さんには荷が重いかもしれないが……話題がなければ話せないし、コメント拾わないと雑談配信なんてできない。

『鈴町さんが2時間話せそうな話題とかないの?これなら誰にも負けないみたいな?』

「ましろん先輩のことです」

 ……だよな。やっぱりこうなると思った。でも、それでもいいかもしれない。オレはそのまま鈴町さんに伝えてあげることにする。

『なら姫宮ましろを語ればいいんじゃないか?少なからず最初は姫宮ましろの話題に触れるわけだし、鈴町さんは自分の配信ではたまに話してると思うけどガッツリ話すことはないだろ?それにオレのTwitterも少なからず見てくれてるから親衛隊も観に行ってくれるから、コメントも拾いやすいかも』

「ましろん先輩を……語る……あの……やってみます」

 鈴町さんは目を輝かせてやる気を出す。これはもう止まらないだろうな。

「みなさんおはようございます!今日はましろん先輩が夏風邪をひいてしまったので、かのんがピンチヒッターとして朝配信をやるよ~!今日はましろん先輩について語る2時間……『朝からましろん』にするからお付き合いよろしくね!こんな……感じ……ど……どうですか?」

 オレは首を縦に振る。少しやりすぎのような気もするが問題はなさそうだな。

『それなら明日も大丈夫だと思うぞ』

「良かった……あの……ましろん先輩は……どうやって……コメント拾ってるんですか?」

 え?そんなこと言われても……でもこれは仕事のことだし、先輩として教えてあげるべきだよな。オレはとりあえず鈴町さんに自分のやり方を教えてあげることにする。

『基本はスパチャを拾うことが多いけど、コメントを拾うというよりは会話をしていると言ったほうが正しいかもな。自分の話のあと、そうだよね~とかどう思うとか一言を入れるだけで結構違うかな?まぁ慣れるまでは大変だけど、頑張れ。応援してるからさ』

 鈴町さんは真剣な顔でオレの話しを聞いてくれた。こうして、明日の朝配信に不安を抱きながらも、鈴町さんはやる気に満ち溢れていた……と思う。
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