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51. 姫は『同期』と初めて出会う

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51. 姫は『同期』と初めて出会う



 1週間後。時間は21時。事務所が指定したお洒落な居酒屋にオレはいる。幸いにも誰も来ていないので少しだけホッとした。あのあと『Fmすたーらいぶ』内で会議を開き、オレのモチベーションやメンタルを考慮して、最優先で動いてくれ、1期生にだけなら明かしてもいいという結論に至ったのだ。

 そして今に至るわけだが……緊張してきた……。とりあえずドリンクメニューを見て時間潰しをしているとドアが開き誰かが入ってくる。

「お疲れ様です」

「あ。あのお疲れ様です」

 一番最初に来たのはこの前一緒だったひなたさんだった。

「あれ?かのんちゃんのマネージャーさん?」

「あっいやその……」

「……とりあえず座ってもいいですか?」

 そう言ってオレの目の前に座るひなたさん。もしかしてオレのこと事務所の飲み会とかで来てると思ってたりして……

「あの……ひなたさん……」

「神崎颯太君でしたよね?私は26なんですけど、颯太君っていくつですか?私より年下ですよねたぶん」

「え?ああ24です……」

「そっかそっか。なら敬語じゃなくて大丈夫だね。とりあえず他の子が来るまで先に飲み物頼んで始めない?収録終わりだから、私喉渇いちゃった」

 そう言いながらひなたさんは店員を呼び、注文を始める。

「ビールでいいよね?生2つ。あと唐揚げとポテトと……適当に頼んじゃうね」

「はい……」

「いやぁ今日は2本撮りだから疲れてさ」

「あのひなたさん!オレ!」

「……君がましろちゃんなんでしょ?」

 そう言われオレは目を大きく見開く。やっぱり……オレが『姫宮ましろ』だと思っていたんだな……

「やっぱりそうなんだね。この前の打ち合わせの時になんとなくそうかなって思ったけど。ほらあの時、私がましろちゃんの事を聞いてかのんちゃんは君のことをチラチラ見ていたし、途中でパソコンにディスコードに通知が来てたじゃない?あれ1期生に事務所からのやつだよね?同じタイミングだったからそうかなって思って」

「はい……そう……です。オレが『姫宮ましろ』です」

「そっかそっか。なるほどねぇ。あ。ビールきた。とりあえず乾杯しようか」

 そう言ってお互いのジョッキをカチンと合わせる。そして一口飲むと、一気に半分くらい飲んでしまうひなたさん。意外に豪快な人なんだな。

「あ。ポアロちゃん着いたって」

 次はポアロさんか……そして扉が開いて入ってきたのは、少し息を切らせたポアロさん。

「お疲れ様~!ごめ~ん。ちょっと遅れちゃっ……た……」

 そこにはセミロングの茶髪にチェック柄のワンピースを着て、肩からバックをかけた女性がいた。オレを視界に入れた途端、動きを止めてしまったポアロさん。

「初めまして、オレは……」

「おお!姫?姫だよね!初めまして、あたしポアロ!中身は男性の方だったんだ。びっくりだよぉ!」

「怒らないんですか?オレが『姫宮ましろ』だって知って」

「ん~?怒らないけど?Vtuberのモデル通りの中の人なんていないよ。声だって作ってる、喋り方、仕草、それこそ姫みたいに性別を偽ってる人もいるだろうしね。つまり演者なんだよ。その人がどういう気持ちで演じているのか、それが大事だと思うんだ。そして『隠し事』はいいけど、『嘘』は良くないと思うんだポアロは。姫は男ってことを隠してるけど、今までの『姫宮ましろ』としての活動に嘘はないじゃん?」

 そう言って笑顔を見せるポアロさん。目の前に座っているひなたさんが拍手をする。するとそこに少し遅れてもう1人やってくる。

 外見は20代後半。全体的に色っぽい服装で、上は胸元が大きく開いたピンクのシャツに、下はロングスカートを履いている。

「なにしてるの?早く中に入りなさいよポアロ」

「あ。リリィママ!姫がいるよ!」

「ん?え?……ましろ?」

「はい。オレが『姫宮ましろ』です」

 こうして、結成から3年目。初めて『Fmすたーらいぶ』の1期生はオフで会うことができた。
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