47 / 693
38. 姫は『誇らしい』のです
しおりを挟む
38. 姫は『誇らしい』のです
そして翌日。オレは『AME』さんの連絡先を聞いたので、連絡がとってみることにする。
「お忙しい中申し訳ございません。私はFmすたーらいぶの神崎颯太と申します。実は所属タレントのVtuberの『双葉かのん』のオリジナル曲の作成をお願いできないかと思いまして、ご連絡差し上げました。一度お会いして話をさせていただければと思いますので、ご都合の良い日を教えていただけますでしょうか。……これでいいか。送信と。」
しばらくすると、返信がきた。『お世話になっております。いつでも大丈夫です。カレーが食べたいのでおすすめのカレー屋さんで会えると嬉しいです。』
「……ん?」
なんだこの返事。なんか面白い人だな。オレは思わずクスリと笑ってしまう。
「分かりました。後で日時と住所を送らせていただきますね」
これでよし。後は会うだけだ。さて……どういう人がくるのやら。
そして約束の当日。時間は午後7時。待ち合わせ場所の駅前のカレー屋さんに鈴町さんと共に向かう。店内にはインド風の音楽が流れていて雰囲気のある店だ。店員さんに個室に案内されると、すでにその人はいた。
長い髪を後ろで束ねており、その髪の色はとても綺麗な茶色。歳はオレと同じくらいで顔はどこか幼く見えるが美人な方だと思う。ジーパンにパーカーというラフな格好だが、それがまた似合っている。その女性は立ち上がり挨拶をする。
「こんばんは。Fmすたーらいぶの神崎さんと双葉かのんさんですね。初めまして『AME』と申します」
「わざわざご足労頂きありがとうございます。こちらこそよろしくお願い致します」
「よ……よろしく……お願いします」
いつも通りだけど鈴町さんは緊張しているのか少し声が震えている。オレたちは席に座り、注文を済ませる。そしてすぐに飲み物が届いた。一口飲むと話を切り出す。
「今回AMEさんにお願いした経緯ですが、彼女が『姫宮ましろ』のファンでしてそのオリ曲の『ホワイトプリンセス』が特にお気に入りで。そこで彼女からAMEさんに依頼をしてみたいと言われたので、こうしてご相談させていただきました」
オレの話を聞きながら、彼女は嬉しそうな表情で鈴町さんを見つめる。鈴町さんは恥ずかしそうに下を向いてしまった。
「それは光栄です。『ホワイトプリンセス』ですか……あれは私のボカロP人生……いや私自身を救ってくれた曲ですからね……」
「そうなんですか?」
「かのんさんのオリ曲の話の前に少しだけ私の話をしてもいいですか?私は最初に出した『夢色トリック』っていう曲が結構バズったんです。でもその後の曲はそこまで……元々可愛らしい曲ばかりだしていたんですけど、どこかで違うと思ってました。私はバンドやゲームが好きなんでカッコいい曲が作りたくて。」
「確かに『ホワイトプリンセス』は疾走感のある曲でしたね」
「正直あの時、もうボカロPを引退しようと思ってました。これが最後のチャンス……だからご依頼をもらった時に自分の好きなように作ったんです」
なにか思い出に浸っているような遠い目をしている。それほど思い入れがある曲だったんだろう。そんな曲を歌わせてもらったんだなオレ……
「Fmすたーらいぶの『姫宮ましろ』に私は救われました。NGを貰うことも覚悟していた。でもそのままオリ曲として採用してくれた。彼女のイメージとは全然違ったのが良かったのか……『ホワイトプリンセス』は大きな反響をもらった。私の理想で。おかげで私は立ち直れた。そんな曲なんです」
「ましろん先輩……すごい……」
鈴町さんが憧れのまなざしを向けてくる。こらこら。バレるだろうが。オレは慌てて視線を外す。
まぁ偶然かもしれないけど、オレとAMEさんの利害が一致した曲だったんだな……。この話を聞いて少しだけ、『ホワイトプリンセス』をもっと大勢の人に聞いて欲しいと思うのと同時に誇らしくもあるのだった。
そして翌日。オレは『AME』さんの連絡先を聞いたので、連絡がとってみることにする。
「お忙しい中申し訳ございません。私はFmすたーらいぶの神崎颯太と申します。実は所属タレントのVtuberの『双葉かのん』のオリジナル曲の作成をお願いできないかと思いまして、ご連絡差し上げました。一度お会いして話をさせていただければと思いますので、ご都合の良い日を教えていただけますでしょうか。……これでいいか。送信と。」
しばらくすると、返信がきた。『お世話になっております。いつでも大丈夫です。カレーが食べたいのでおすすめのカレー屋さんで会えると嬉しいです。』
「……ん?」
なんだこの返事。なんか面白い人だな。オレは思わずクスリと笑ってしまう。
「分かりました。後で日時と住所を送らせていただきますね」
これでよし。後は会うだけだ。さて……どういう人がくるのやら。
そして約束の当日。時間は午後7時。待ち合わせ場所の駅前のカレー屋さんに鈴町さんと共に向かう。店内にはインド風の音楽が流れていて雰囲気のある店だ。店員さんに個室に案内されると、すでにその人はいた。
長い髪を後ろで束ねており、その髪の色はとても綺麗な茶色。歳はオレと同じくらいで顔はどこか幼く見えるが美人な方だと思う。ジーパンにパーカーというラフな格好だが、それがまた似合っている。その女性は立ち上がり挨拶をする。
「こんばんは。Fmすたーらいぶの神崎さんと双葉かのんさんですね。初めまして『AME』と申します」
「わざわざご足労頂きありがとうございます。こちらこそよろしくお願い致します」
「よ……よろしく……お願いします」
いつも通りだけど鈴町さんは緊張しているのか少し声が震えている。オレたちは席に座り、注文を済ませる。そしてすぐに飲み物が届いた。一口飲むと話を切り出す。
「今回AMEさんにお願いした経緯ですが、彼女が『姫宮ましろ』のファンでしてそのオリ曲の『ホワイトプリンセス』が特にお気に入りで。そこで彼女からAMEさんに依頼をしてみたいと言われたので、こうしてご相談させていただきました」
オレの話を聞きながら、彼女は嬉しそうな表情で鈴町さんを見つめる。鈴町さんは恥ずかしそうに下を向いてしまった。
「それは光栄です。『ホワイトプリンセス』ですか……あれは私のボカロP人生……いや私自身を救ってくれた曲ですからね……」
「そうなんですか?」
「かのんさんのオリ曲の話の前に少しだけ私の話をしてもいいですか?私は最初に出した『夢色トリック』っていう曲が結構バズったんです。でもその後の曲はそこまで……元々可愛らしい曲ばかりだしていたんですけど、どこかで違うと思ってました。私はバンドやゲームが好きなんでカッコいい曲が作りたくて。」
「確かに『ホワイトプリンセス』は疾走感のある曲でしたね」
「正直あの時、もうボカロPを引退しようと思ってました。これが最後のチャンス……だからご依頼をもらった時に自分の好きなように作ったんです」
なにか思い出に浸っているような遠い目をしている。それほど思い入れがある曲だったんだろう。そんな曲を歌わせてもらったんだなオレ……
「Fmすたーらいぶの『姫宮ましろ』に私は救われました。NGを貰うことも覚悟していた。でもそのままオリ曲として採用してくれた。彼女のイメージとは全然違ったのが良かったのか……『ホワイトプリンセス』は大きな反響をもらった。私の理想で。おかげで私は立ち直れた。そんな曲なんです」
「ましろん先輩……すごい……」
鈴町さんが憧れのまなざしを向けてくる。こらこら。バレるだろうが。オレは慌てて視線を外す。
まぁ偶然かもしれないけど、オレとAMEさんの利害が一致した曲だったんだな……。この話を聞いて少しだけ、『ホワイトプリンセス』をもっと大勢の人に聞いて欲しいと思うのと同時に誇らしくもあるのだった。
10
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた
ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。
俺が変わったのか……
地元が変わったのか……
主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。
※他Web小説サイトで連載していた作品です
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
催眠アプリで恋人を寝取られて「労働奴隷」にされたけど、仕事の才能が開花したことで成り上がり、人生逆転しました
フーラー
ファンタジー
「催眠アプリで女性を寝取り、ハーレムを形成するクソ野郎」が
ざまぁ展開に陥る、異色の異世界ファンタジー。
舞台は異世界。
売れないイラストレーターをやっている獣人の男性「イグニス」はある日、
チートスキル「催眠アプリ」を持つ異世界転移者「リマ」に恋人を寝取られる。
もともとイグニスは収入が少なく、ほぼ恋人に養ってもらっていたヒモ状態だったのだが、
リマに「これからはボクらを養うための労働奴隷になれ」と催眠をかけられ、
彼らを養うために働くことになる。
しかし、今のイグニスの収入を差し出してもらっても、生活が出来ないと感じたリマは、
イグニスに「仕事が楽しくてたまらなくなる」ように催眠をかける。
これによってイグニスは仕事にまじめに取り組むようになる。
そして努力を重ねたことでイラストレーターとしての才能が開花、
大劇団のパンフレット作製など、大きな仕事が舞い込むようになっていく。
更にリマはほかの男からも催眠で妻や片思いの相手を寝取っていくが、
その「寝取られ男」達も皆、その時にかけられた催眠が良い方に作用する。
これによって彼ら「寝取られ男」達は、
・ゲーム会社を立ち上げる
・シナリオライターになる
・営業で大きな成績を上げる
など次々に大成功を収めていき、その中で精神的にも大きな成長を遂げていく。
リマは、そんな『労働奴隷』達の成長を目の当たりにする一方で、
自身は自堕落に生活し、なにも人間的に成長できていないことに焦りを感じるようになる。
そして、ついにリマは嫉妬と焦りによって、
「ボクをお前の会社の社長にしろ」
と『労働奴隷』に催眠をかけて社長に就任する。
そして「現代のゲームに関する知識」を活かしてゲーム業界での無双を試みるが、
その浅はかな考えが、本格的な破滅の引き金となっていく。
小説家になろう・カクヨムでも掲載しています!
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで
あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。
お兄ちゃんは今日からいもうと!
沼米 さくら
ライト文芸
大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。
親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。
トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。
身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。
果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。
強制女児女装万歳。
毎週木曜と日曜更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる