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54. 期待には答えないと

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 54. 期待には答えないと



 そして次の日。私たちは王都のギルドの依頼の通り南にある『魔法の森』を目指すことにする。

 魔法の森。この大陸の中でも有数の未開の森で王都もその広大な大森林のおよそ10%ほどしか調査が出来ていない場所。日々王国の魔法士による調査を行っていて、そんなところに未開のダンジョンを発見したと言うわけだ。

 それは所々に魔力の結界が張られていて調査が困難なのも1つの原因。そのせいか今まで誰も発見できなかったらしい。

 しばらく歩くと大きな森が見えてくる。その入り口には王国の騎士団が見張りをしていた。勝手に入らないようにという配慮だろう。それだけこの『魔法の森』がすごい場所と言うのがわかる。

「止まれ。お前たちは?」

「私たちはクラン『妖精の隠れ家』。私はマスターのアリシア=フォン=ルーザリアです。ギルドから正式に依頼を受けて参りました。こちらが書状です」

 そう言ってアリシアさんはギルドからの書状を見せる。

「あぁ、あんたたちが。話は聞いているよ。『魔法の森』は不思議な場所だ。気をつけて行くようにな。未開のダンジョンには目印として王国の赤い旗をたてているから、頼んだぞ」

「ありがとうございます」

 そうしてようやく私たちは森の中へと入ることが出来た。しかし入った瞬間空気が変わる。まるで生き物のように生い茂る木々や草花。しかし森の中は木々の葉によって太陽の光が遮られて薄暗いけど、それが逆に神秘的な雰囲気を醸し出している気がする。

「ここが魔法の森……それにしてもなんか怖いわね?」

 私はそう呟くと私の横にいたルシルが言う。

「はい……そうですね。でも何か不思議な感じがします」

「確かに。何かこうゾクッとする感じがありますわね?」

「そう?あたしは何も分かんないけど?」

 みんな口々にそう言ってる中、アリシアさんがキョロキョロしながら言った。

「ここはすごいマナで溢れているわね……。エステルちゃん、索敵をお願いできるかしら?」

「はい。わかりました。」

 私は目を閉じて辺りを探る。しかしいつもとは違う感覚……索敵がうまくいかない?なんだろうこの違和感……。

「どうしたのエステル姉さん?」

「いえ、ちょっと変な感じが……」

「ねぇエステルちゃん。索敵が出来なかったんじゃない?」

「はい。アリシアさん」

「ここはマナが膨大で魔法やスキルに干渉してくるみたいね……。よし先頭は私とキルマリアちゃんで行くわ。ミルフィちゃんはエステルちゃんとルシルちゃんの護衛をお願いね?」

「「「了解!」」」


 そうして私たちは奥へ進んでいく。索敵ができない中でも道中の魔物はキルマリアがほとんど倒してくれたので問題はなかった。そしてしばらく進むと開けた場所に出た。そこには小さな泉があってとても綺麗だ。


「ふぅ……ここまで来るのに疲れちゃったわね。少し休憩にしましょうか?」

「賛成~!もう足パンパンだよぉ」

 キルマリアが地面に座り込む。確かに結構歩いたし、ずっと戦闘もあったから仕方ないかも。私もなんだか体が重い気がする。するとルシルが回復術を使ってくれた。

「【ヒール】」

 淡い緑の光に包まれると疲労感が取れていく。やっぱりルシルの回復術は心強いわ。

「ありがとうルシル」

「いえ。これがボクの役割だから」

 ルシルはそう言って微笑む。そしてキルマリアやミルフィにもヒールをかけていた。

「あ、そういえばアリシアさん。ここに来てから索敵が全く出来てません。こんなことってあるんですかね?」

「そうね……。多分だけど、ここのマナの影響でしょう。さっきも言ったけど『魔法の森』は不思議な場所でね。普通のところよりも強力な魔力を持っているのよ。それでスキルや魔法に影響が出ることもある。」

「なるほど……。じゃあ今は私のスキルは使えないということですか?」

「そうかもね。まだまだエステルちゃんの魔力が低いと言う証拠でもあるんだけどね?」

 そう言いながらいたずらっぽく笑うアリシアさん。うーん、それなら私がいてもあまり意味がないような?まぁいいか。私はとりあえず周りを見渡してみる。とても静かだ。鳥の声すら聞こえない。本当に生き物がいるのかわからないくらい……まさに神秘的としか言えない場所だった。

「エステルちゃん」

「何ですかアリシアさん?」

「頼りにしてるわよ?」

「え?あっはい」

 そうアリシアさんは私にだけ聞こえるように耳元で言う。そう言われてもなぁ。でも期待には答えないと。私はそんなことを思いつつ、泉の水を汲んでおいた。これはいざという時のためだ。

 こうして、私たちは再び『魔法の森』を未開のダンジョンに向かって歩き出すのだった。
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