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75. 相思相愛
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75. 相思相愛
9月下旬。放課後、クラスは来月行われる文化祭の準備を進めている。オレたちのクラスはメイド喫茶をやることになっている。
まぁメイド喫茶はともかく、出し物なんて喫茶店かお化け屋敷とかがセオリーだよな。女子はノリノリでメイド服を買いに行ってたけどさ。
それがこの前聖菜さんが着ていたメイド服だ。……やめよ。この前のことを思い出してしまうから。そんなことを思いながらも準備を黙々と進めていく。
ちなみに他のクラスメートの男たちはほとんど部活かサボりでいない。しかも今日は聖菜さんは他の用事でいない。だから無性にやる気がないのだ。
「神坂」
「ん?西城さんどうした?」
「看板はみ出て床に色塗ってんだけど?大丈夫なん?」
西城さんはオレの目の前の床を指差す。確かに床にペンキが塗られていた。これは怒られるな。オレは近くにあった雑巾で拭いてみるが全く落ちる気配はない。ダメだなこりゃ。
「真面目にやってくんない神坂?」
「いやそれは帰ってしまった奴らに言ってほしいが?」
「あんたはあたしの班なんだから文句言わずにやって」
「はぁ……わかったよ」
オレは渋々だが作業を続ける。その横で『まったく……』と呟きながら西城さんはせっせと看板の色塗りをしている。器用なんだな……オレとは大違いだ。
そして作業を再開して何とか看板は完成した。
帰り道。時間は18時を過ぎて辺りも暗くなり始めていた。すると後ろから声をかけられる。
「神坂。一緒に帰らん?」
「ああ。いいよ」
「あ。聖菜怒るかな?」
「本気では怒らないと思うぞ?いつも楽しんでるだけだから聖菜さんは」
そんな話をしながら一緒に帰る。良く考えれば西城さんはご近所さんだもんな、帰り道が同じなだけだ。別に何も問題はない。
「そう言えば関原とのデートはどうだったんだ?」
「別に。普通に楽しかったし。さすがにキスとかヤったりとかはなかったけどさ」
「関原も誠実そうだしな」
「そう?神坂のほうが誠実に見えるけどねあたしは」
「だよな」
「あはは。肯定すんなし。少しは遠慮しろし。」
西城さんはケラケラ笑いながらオレの横を歩く。改めて西城さんを見る。制服のリボンを少し緩めにして、スカートはもちろん短い。その大きな胸もそうだけど、やっぱり顔も可愛いよな。性格は少し男勝りだけど。
「どした?あたしに惚れた?」
「オレには聖菜さんがいるから。ごめんな」
「なんであたしが振られたことになってんの?」
そう言いながら再び笑い出す。こういうところはオレも嫌いではない。というか好きなほうかもしれない。そして西城さんは立ち止まり、オレの顔を見つめてくる。その可愛い顔を見て一瞬ドキッとする。
「聖菜がうらやましい。こんなにも想ってくれる人がいて」
西城さんのその言葉を聞いて不思議と言葉が出ていた。それは今までとは違うオレ自信の気持ちの変化なのかもしれない。だから胸を張って言えた。
「それは聖菜さんだけじゃないよ」
「え?」
「オレも同じくらい聖菜さんに想われてるからさ。もしかしたら聖菜さんのほうがオレを好きかもね」
「ノロケですか?」
「ああ。相思相愛だからな」
「はいはい。ごちそうさまでした」
そう言って再び歩き出した西城さんはオレの前に出て振り返り、また笑顔を見せる。
「じゃあ。あたしこっちだから」
「おう」
「また明日学校でね」
「西城さん」
「ん?」
「西城さんにもきっと見つかるよ相思相愛の相手がさ」
「はいはい。期待しておくよ」
オレに手を振りながら去っていく西城さん。いつもはオレの背中を押してくれる西城さん。もし西城さんにそういう相手ができて、何かに迷うのなら今度はオレが押してあげる番なんだ。オレはその背中が見えなくなるまでずっと見ていた。
9月下旬。放課後、クラスは来月行われる文化祭の準備を進めている。オレたちのクラスはメイド喫茶をやることになっている。
まぁメイド喫茶はともかく、出し物なんて喫茶店かお化け屋敷とかがセオリーだよな。女子はノリノリでメイド服を買いに行ってたけどさ。
それがこの前聖菜さんが着ていたメイド服だ。……やめよ。この前のことを思い出してしまうから。そんなことを思いながらも準備を黙々と進めていく。
ちなみに他のクラスメートの男たちはほとんど部活かサボりでいない。しかも今日は聖菜さんは他の用事でいない。だから無性にやる気がないのだ。
「神坂」
「ん?西城さんどうした?」
「看板はみ出て床に色塗ってんだけど?大丈夫なん?」
西城さんはオレの目の前の床を指差す。確かに床にペンキが塗られていた。これは怒られるな。オレは近くにあった雑巾で拭いてみるが全く落ちる気配はない。ダメだなこりゃ。
「真面目にやってくんない神坂?」
「いやそれは帰ってしまった奴らに言ってほしいが?」
「あんたはあたしの班なんだから文句言わずにやって」
「はぁ……わかったよ」
オレは渋々だが作業を続ける。その横で『まったく……』と呟きながら西城さんはせっせと看板の色塗りをしている。器用なんだな……オレとは大違いだ。
そして作業を再開して何とか看板は完成した。
帰り道。時間は18時を過ぎて辺りも暗くなり始めていた。すると後ろから声をかけられる。
「神坂。一緒に帰らん?」
「ああ。いいよ」
「あ。聖菜怒るかな?」
「本気では怒らないと思うぞ?いつも楽しんでるだけだから聖菜さんは」
そんな話をしながら一緒に帰る。良く考えれば西城さんはご近所さんだもんな、帰り道が同じなだけだ。別に何も問題はない。
「そう言えば関原とのデートはどうだったんだ?」
「別に。普通に楽しかったし。さすがにキスとかヤったりとかはなかったけどさ」
「関原も誠実そうだしな」
「そう?神坂のほうが誠実に見えるけどねあたしは」
「だよな」
「あはは。肯定すんなし。少しは遠慮しろし。」
西城さんはケラケラ笑いながらオレの横を歩く。改めて西城さんを見る。制服のリボンを少し緩めにして、スカートはもちろん短い。その大きな胸もそうだけど、やっぱり顔も可愛いよな。性格は少し男勝りだけど。
「どした?あたしに惚れた?」
「オレには聖菜さんがいるから。ごめんな」
「なんであたしが振られたことになってんの?」
そう言いながら再び笑い出す。こういうところはオレも嫌いではない。というか好きなほうかもしれない。そして西城さんは立ち止まり、オレの顔を見つめてくる。その可愛い顔を見て一瞬ドキッとする。
「聖菜がうらやましい。こんなにも想ってくれる人がいて」
西城さんのその言葉を聞いて不思議と言葉が出ていた。それは今までとは違うオレ自信の気持ちの変化なのかもしれない。だから胸を張って言えた。
「それは聖菜さんだけじゃないよ」
「え?」
「オレも同じくらい聖菜さんに想われてるからさ。もしかしたら聖菜さんのほうがオレを好きかもね」
「ノロケですか?」
「ああ。相思相愛だからな」
「はいはい。ごちそうさまでした」
そう言って再び歩き出した西城さんはオレの前に出て振り返り、また笑顔を見せる。
「じゃあ。あたしこっちだから」
「おう」
「また明日学校でね」
「西城さん」
「ん?」
「西城さんにもきっと見つかるよ相思相愛の相手がさ」
「はいはい。期待しておくよ」
オレに手を振りながら去っていく西城さん。いつもはオレの背中を押してくれる西城さん。もし西城さんにそういう相手ができて、何かに迷うのなら今度はオレが押してあげる番なんだ。オレはその背中が見えなくなるまでずっと見ていた。
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