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69. 女の子の勘かな

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69. 女の子の勘かな



 あれから数日が経ち、聖菜さんもすっかりいつも通りに戻ってくれた。毎日メッセージを送り合い、電話で話したりと充実した日々を送っていた。

 そして今日は休日。聖菜さんと会う約束をしている。待ち合わせの時刻は午前10時。場所はオレの家の最寄駅の改札口。

「優斗君お待たせ」

「聖菜さん?」

 駅前広場の10時の鐘が鳴ると聖菜さんが現れた。今日は秋らしく白のロングスカートに赤のカーディガン姿。それに黒縁の眼鏡をかけていて普段とは違う雰囲気の聖菜さんに見惚れてしまう。

「どうしたの眼鏡なんかして?」

「これは伊達メガネだよ。オシャレアイテムだね」

「なんか……いい。似合ってる」

「おや?優斗君は眼鏡女子がお好みなのかな?」

「いや。聖菜さんなら何でも好きだけどさ……あとエロいかな」

「最後のはいらないかな」

「ごめん。正直者なんでね」

「優斗君は私がバッチリおめかしするとすぐ台無しにしようとしますなぁ」

「結構尽くすタイプなんじゃないの?」

「じゃあなにして欲しいのかな?」

「そこは聖菜さんにお任せしようかな」

「ふふ。ズルい男だ優斗君は」

 聖菜さんは呆れた表情を浮かべるが、どこか嬉しそうだ。そんな聖菜さんを見て、これから楽しいことが待っていると思うと自然とオレの足取りは軽くなった。

 そしてオレは聖菜さんの手を握る。聖菜さんは何も言わずに握り返してくれた。オレ達は手を繋いで歩き始める。

 今日のデートは水族館。電車に乗り目的地へと向かう途中、聖菜さんが話しかけてきた。

「そう言えばそろそろ文化祭だね」

「ああ。うちのクラスは何やるんだろうな」

「メイド喫茶だね。絶対」

「……絶対というか聖菜さん知ってるんでしょ?」

「私の晴れ舞台だね。きっと可愛すぎると思うよ?」

「メイド服か……いいな。西城さんとか胸元やばそうだし、東雲さんも身長あるからな……」

「こらこら。せめて彼女で未来の奥様の私のこと考えてほしいかなぁ」

「いや聖菜さんはその先まで想像しちゃうけどいいの?」

「……変態さんかな?」

 聖菜さんはジト目でオレのことを睨みつける。このやり取りが何より嬉しかった。

 それから目的の駅に着くと、水族館までの道を歩く。その道中もオレたちは繋いだ手をそのままにしている

 水族館に着くとチケットを買い中に入る。休日ということもあり館内は多くの人で賑わっている。そんな中、オレたちは人が少ない場所を選び進んでいく。

 まず最初に目に映ったのはクラゲの展示コーナー。まるで水の中を漂っているかのような感覚に陥るほど綺麗だ。そんな水槽を眺めていると、反対側に見知った人物がいるのが見えた

「は?怜奈?」

「おにぃ!?じゃなかった……お兄ちゃん!?」

 そこには怜奈とこの前夏休みの自由研究をしていた本田君と沖野くん、それとお泊まりをしていた沢城さんがいた。

「こんにちは怜奈ちゃん」

「あっ聖菜さんこんにちは」

「ほう。ダブルデートとはやるな怜奈?どっちがお好みなんだ?」

「そんなんじゃないし!ただ遊んでるだけだし!」

 焦る怜奈。なるほど面白くなってきたな。オレはいつも聖菜さんに言われているみたいに怜奈に言ってやることにする。

「ふっ。それを世間一般ではデートというのだよ怜奈ちゃん。」

「それ私のかな」

「怜奈ちゃんとかキモッ。」

「本当に仲がいいね優斗君と怜奈ちゃんは」

 聖菜さんの一言で一瞬にして場の空気が変わる。聖菜さんがニコニコしながらオレのことを見るものだから、オレはつい目を逸らす。

 すると、聖菜さんはオレの腕に抱きつく。柔らかい感触が伝わってきて、思わずドキッとする。

「せっかくなら私たちも混ぜてもらおうよ優斗君」

「え?」

「ダメかな怜奈ちゃん?」

「私はいいですけど……みんなに聞いてみます」

 そう言うと怜奈は確認を取りに行った。

「聖菜さんいいの?せっかくのデートなのに」

「みんないたほうが楽しいと思うよ。ほぼ同級生みたいなものだし。それに何か面白そうなことが起きそうだからさ。」

「『タイムリープ』で見たことあるの?」

「ううん。女の子の勘かな」

 すると怜奈が戻ってくる。どうやら怜奈の友達もオーケーしたようだ。

「あの聖菜さん。実はもう1人いるんですけどちょっと遅れていて」

「そうなんだ」

「日柳花音さんって子なんですけど」

 それを聞いたオレは見逃さなかった。聖菜さんは一瞬悪い顔をしていた。そしてオレを見る。

「あれ?確か優斗君の唯一のお友達だよね?せっかくだからご挨拶しようかな?」

「別にいいんじゃない?しなくても」

「ダメかな。ふふ。楽しみだね?どんな子なのかな?」

「……そだね」

 なんか本当に面白いことになりそうなんだけどさ。
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