63 / 85
63. ごめんなさい
しおりを挟む
63. ごめんなさい
夏の夜空を彩る花火。それをオレは聖菜さんと一緒に見ている。本当に幸せだ。そう思っていると、まだ花火の途中ではあるけど、聖菜さんがオレに提案する。
「さて。それじゃ行こうか彩音ちゃんと関原君のところへ」
「え?覗くってこと」
「そのくらいの権利はあるでしょ。それに最後まで見届けてあげないとさ」
「その前にどこにいるか知ってるの?」
「もちろん『タイムリープ』してるんだよ私。ほら急いで」
聖菜さんはそう言うと歩き出す。オレもその後に続く。まぁ2人が上手くいくように願うだけだが。
聖菜さんの後について行くと、少し離れた場所にある高台の神社に2人はいた。そのまま木陰に隠れて様子を伺う。……というか本当にいたよ。別に疑ってたわけじゃないけど。
「あの聖菜さん?」
「しーっ。見つかっちゃうよ」
「やっぱり覗くのやめたほうが……」
「……ダメ。優斗君は見届けてほしいから」
そんなことを言われても……。そんなことを考えている間に西城さんと関原は話し始める。
「つーか。神坂とか聖菜とか舞子とか妹ちゃんはなんで遅刻するかな?もう花火終わっちゃうけど」
「あの西城さん」
「どした?」
「その……」
「あー……そういうことか。」
西城さんは何かを察したのか、浴衣の襟をなおして、真面目な顔に変わっていた。そしてしばらく沈黙の時間が続く。
すると、突然花火が打ち上げられた。大きな音が鳴り響き、夜空に綺麗な花火が咲き乱れる。それと同時に関原は口を開く。
「西城さん。ずっと好きでした!オレと付き合ってください!」
花火の色鮮やかな光が西城さんと関原を照らしていた。とても幻想的な光景にオレと聖菜さんは息を飲む。そして西城さんは言った。
「ごめんなさい。あたし今は誰とも付き合う気ないんだ」
オレは思わず目を背ける。隣を見ると聖菜さんは涙を浮かべながら、ただじっと目の前の光景を眺めている。
「少し前のあたしなら……オーケーしてたかもね」
「そうなの?」
「あたしさ。付き合うなら聖菜と神坂みたいな関係になりたいんだ。本当に2人は幸せそうじゃん?理想が高くなったんだよ」
「そっか。じゃあしょうがないか」
「うん。でもありがとう。告白されたの初めてだったから少し嬉しかった」
そう言って2人の会話は終わった。きっとこれで良かったのだろう。花火が終わり、オレたちはそのまま家路に帰ることにする。
「残念だったな。さっき関原から連絡きて、聖菜さんにありがとうって伝えてほしいってさ」
「……ねぇ優斗君」
「ん?なに?」
オレがそのまま振り向くと聖菜さんは目に涙を浮かべていた。それは今まで見せたことのない表情で、どこか寂しそうな顔をしていた。そして聖菜さんは涙を流しながら呟いた。
「ごめんなさい……」
「聖菜さん?一体どうしたの?」
「……『タイムリープ』をしてない世界線は彩音ちゃんと関原君はここで付き合うの」
「え……?」
西城さんと関原が?聖菜さんは何を言って……
「さっきの彩音ちゃんを見て確信したよ。私が……私のワガママで彩音ちゃんと……きっと優斗君の未来までも変えちゃったんだよ!」
聖菜さんは泣きながらそう叫んだ。『タイムリープ』の記憶。それが聖菜さんを不安や恐怖に駆り立てられていたのかもしれない。
「その記憶を思い出してから今日まで不安だった。告白が上手くいかないと困る。でも上手くいかなかった。今までのことが溢れて……高校生で優斗君と付き合えた、初めても優斗君に……すごく幸せ……そう思っていたのに……」
「落ち着いて聖菜さん。オレが好きなのは聖菜さんだし、それは変わらない!」
オレがそう言うと聖菜さんは不安を取り除きたい気持ちからか心から吐き出すようにオレに言った。それは、そうしないと壊れてしまうから……。
「じゃあ!……私が『タイムリープ』してなかったら、優斗君はこうやって……私のこと好きでいてくれたの!?25歳まで私のことを思ってくれてたの!?こんな思いをするなら……『タイムリープ』なんかしなきゃ良かった!」
「聖菜さん……」
「……ごめんなさい。今は1人にして」
オレが今の聖菜さんと出会えなかったら……。聖菜さんのその言葉にオレは答えることが出来なかった。花火大会の余韻に酔いしれるなか、オレの未来の奥様は1人歩いていく。その後ろ姿をオレは見送ることしか出来なかった。
そして長かったような短かった夏休みが終わり2学期が始まる。
オレは隣の席を見る。オレの未来の奥様はその日から学校にくることはなかった……
夏の夜空を彩る花火。それをオレは聖菜さんと一緒に見ている。本当に幸せだ。そう思っていると、まだ花火の途中ではあるけど、聖菜さんがオレに提案する。
「さて。それじゃ行こうか彩音ちゃんと関原君のところへ」
「え?覗くってこと」
「そのくらいの権利はあるでしょ。それに最後まで見届けてあげないとさ」
「その前にどこにいるか知ってるの?」
「もちろん『タイムリープ』してるんだよ私。ほら急いで」
聖菜さんはそう言うと歩き出す。オレもその後に続く。まぁ2人が上手くいくように願うだけだが。
聖菜さんの後について行くと、少し離れた場所にある高台の神社に2人はいた。そのまま木陰に隠れて様子を伺う。……というか本当にいたよ。別に疑ってたわけじゃないけど。
「あの聖菜さん?」
「しーっ。見つかっちゃうよ」
「やっぱり覗くのやめたほうが……」
「……ダメ。優斗君は見届けてほしいから」
そんなことを言われても……。そんなことを考えている間に西城さんと関原は話し始める。
「つーか。神坂とか聖菜とか舞子とか妹ちゃんはなんで遅刻するかな?もう花火終わっちゃうけど」
「あの西城さん」
「どした?」
「その……」
「あー……そういうことか。」
西城さんは何かを察したのか、浴衣の襟をなおして、真面目な顔に変わっていた。そしてしばらく沈黙の時間が続く。
すると、突然花火が打ち上げられた。大きな音が鳴り響き、夜空に綺麗な花火が咲き乱れる。それと同時に関原は口を開く。
「西城さん。ずっと好きでした!オレと付き合ってください!」
花火の色鮮やかな光が西城さんと関原を照らしていた。とても幻想的な光景にオレと聖菜さんは息を飲む。そして西城さんは言った。
「ごめんなさい。あたし今は誰とも付き合う気ないんだ」
オレは思わず目を背ける。隣を見ると聖菜さんは涙を浮かべながら、ただじっと目の前の光景を眺めている。
「少し前のあたしなら……オーケーしてたかもね」
「そうなの?」
「あたしさ。付き合うなら聖菜と神坂みたいな関係になりたいんだ。本当に2人は幸せそうじゃん?理想が高くなったんだよ」
「そっか。じゃあしょうがないか」
「うん。でもありがとう。告白されたの初めてだったから少し嬉しかった」
そう言って2人の会話は終わった。きっとこれで良かったのだろう。花火が終わり、オレたちはそのまま家路に帰ることにする。
「残念だったな。さっき関原から連絡きて、聖菜さんにありがとうって伝えてほしいってさ」
「……ねぇ優斗君」
「ん?なに?」
オレがそのまま振り向くと聖菜さんは目に涙を浮かべていた。それは今まで見せたことのない表情で、どこか寂しそうな顔をしていた。そして聖菜さんは涙を流しながら呟いた。
「ごめんなさい……」
「聖菜さん?一体どうしたの?」
「……『タイムリープ』をしてない世界線は彩音ちゃんと関原君はここで付き合うの」
「え……?」
西城さんと関原が?聖菜さんは何を言って……
「さっきの彩音ちゃんを見て確信したよ。私が……私のワガママで彩音ちゃんと……きっと優斗君の未来までも変えちゃったんだよ!」
聖菜さんは泣きながらそう叫んだ。『タイムリープ』の記憶。それが聖菜さんを不安や恐怖に駆り立てられていたのかもしれない。
「その記憶を思い出してから今日まで不安だった。告白が上手くいかないと困る。でも上手くいかなかった。今までのことが溢れて……高校生で優斗君と付き合えた、初めても優斗君に……すごく幸せ……そう思っていたのに……」
「落ち着いて聖菜さん。オレが好きなのは聖菜さんだし、それは変わらない!」
オレがそう言うと聖菜さんは不安を取り除きたい気持ちからか心から吐き出すようにオレに言った。それは、そうしないと壊れてしまうから……。
「じゃあ!……私が『タイムリープ』してなかったら、優斗君はこうやって……私のこと好きでいてくれたの!?25歳まで私のことを思ってくれてたの!?こんな思いをするなら……『タイムリープ』なんかしなきゃ良かった!」
「聖菜さん……」
「……ごめんなさい。今は1人にして」
オレが今の聖菜さんと出会えなかったら……。聖菜さんのその言葉にオレは答えることが出来なかった。花火大会の余韻に酔いしれるなか、オレの未来の奥様は1人歩いていく。その後ろ姿をオレは見送ることしか出来なかった。
そして長かったような短かった夏休みが終わり2学期が始まる。
オレは隣の席を見る。オレの未来の奥様はその日から学校にくることはなかった……
0
お気に入りに追加
225
あなたにおすすめの小説

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。


切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる