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62. ありがとう
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62. ありがとう
花火大会が始まる10分前になり、オレは聖菜さんを連れて会場である河川敷に向かう。既にそこには多くの人が集まっていた。
「すごい人混みだね」
「毎年これくらいはいるからな」
オレと聖菜さんははぐれないように手を繋ぐ。しかし、聖菜さんの手は小さくて細い。強く握ったら折れてしまいそうなほどに。
「そんなに強く握りしめなくても大丈夫だよ。ほら」
そう言って聖菜さんはオレの手を離すと、自分の腕をオレの右腕に絡める。オレの身体に聖菜さんの胸の膨らみが押し付けられる。聖菜さんの顔を見るといつものように可愛い笑顔を見せながら嬉しそうにしている。
「恋人同士に見えるかな」
「恋人同士でしょ」
「夫婦じゃないの?」
「そだね」
オレは素っ気なく答えるが内心では心臓がバクバク言っている。浴衣姿の聖菜さんが綺麗で、つい見惚れてしまう。普段とは違う雰囲気にオレの心は落ち着かない。その空気に耐えられなくなり話題を振る。
「関原。上手くいくといいけど」
「そうだね」
「実際どうなの聖菜さんは?」
「……上手くいかないと困るかな」
「まぁ協力はしたしな。それが一番いいけどな」
「うん。そうだね」
そんなことを話していると花火が上がる時間になる。空を見上げると、大きな音と共に夜空には色鮮やかな花火が打ち上がる。そしてそれはまるで聖菜さんのようだった。ただのぼっちだったオレに彩りをくれた人……。聖菜さんがいたからオレはこんなにも幸せだと思える。
そして夜空を彩る花火の色に照らされる聖菜さんの表情はとても美しく見える。この人がオレの彼女で未来の奥様なんだもんな。本当にオレは幸せ者だな。オレが無意識に見ているとそれに気づいたのか聖菜さんは微笑みながら言った。
「キレイだね」
「ああ」
「こういう時は、聖菜さんは花火に負けないくらい綺麗だよとか言うべきだけどなぁ」
「花火のほうが完全に負けてるでしょ。オレにとってだけどさ」
「うーん。まぁ合格でいいでしょう。私は優斗君には甘いからね」
「助かるよ先生」
「ふふ。特別だからね特別」
オレと聖菜さんはそんなやり取りをして、寄り添いながら花火を見ていた。体温がどんどん伝わってくる。そして聖菜さんはオレに聞いてくる。
「ねぇ優斗君」
「ん?」
「キスしたいかな」
そう言って聖菜さんは自分の唇を指差す。花火の音だけが響く中、オレたちの視線が交差する。
「みんないるけど」
「花火見てるよ」
「今じゃないとダメ?」
「今じゃなきゃダメ」
その聖菜さんの顔はいつもとは違い真剣そのもの。周りをキョロキョロと確認すると、誰もこちらを気にしている様子はない。そしてオレは覚悟を決め聖菜さんの肩を掴む。そして聖菜さんの方に顔を近づけると聖菜さんは目を閉じる。そしてオレと聖菜さんの距離は0になった。
その時の聖菜さんとのキスはとても甘くて優しい味がした。まるで儚い夢のような感覚だった。
「優斗君」
「ん?」
「ありがとう」
「え?うん。」
そう言って微笑む聖菜さん。そのあとはお互いに花火を見る。『ありがとう』聖菜さんはオレにそう言った。なぜ感謝されたのか、このときのオレは分からなかった。
花火大会が始まる10分前になり、オレは聖菜さんを連れて会場である河川敷に向かう。既にそこには多くの人が集まっていた。
「すごい人混みだね」
「毎年これくらいはいるからな」
オレと聖菜さんははぐれないように手を繋ぐ。しかし、聖菜さんの手は小さくて細い。強く握ったら折れてしまいそうなほどに。
「そんなに強く握りしめなくても大丈夫だよ。ほら」
そう言って聖菜さんはオレの手を離すと、自分の腕をオレの右腕に絡める。オレの身体に聖菜さんの胸の膨らみが押し付けられる。聖菜さんの顔を見るといつものように可愛い笑顔を見せながら嬉しそうにしている。
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「恋人同士でしょ」
「夫婦じゃないの?」
「そだね」
オレは素っ気なく答えるが内心では心臓がバクバク言っている。浴衣姿の聖菜さんが綺麗で、つい見惚れてしまう。普段とは違う雰囲気にオレの心は落ち着かない。その空気に耐えられなくなり話題を振る。
「関原。上手くいくといいけど」
「そうだね」
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「……上手くいかないと困るかな」
「まぁ協力はしたしな。それが一番いいけどな」
「うん。そうだね」
そんなことを話していると花火が上がる時間になる。空を見上げると、大きな音と共に夜空には色鮮やかな花火が打ち上がる。そしてそれはまるで聖菜さんのようだった。ただのぼっちだったオレに彩りをくれた人……。聖菜さんがいたからオレはこんなにも幸せだと思える。
そして夜空を彩る花火の色に照らされる聖菜さんの表情はとても美しく見える。この人がオレの彼女で未来の奥様なんだもんな。本当にオレは幸せ者だな。オレが無意識に見ているとそれに気づいたのか聖菜さんは微笑みながら言った。
「キレイだね」
「ああ」
「こういう時は、聖菜さんは花火に負けないくらい綺麗だよとか言うべきだけどなぁ」
「花火のほうが完全に負けてるでしょ。オレにとってだけどさ」
「うーん。まぁ合格でいいでしょう。私は優斗君には甘いからね」
「助かるよ先生」
「ふふ。特別だからね特別」
オレと聖菜さんはそんなやり取りをして、寄り添いながら花火を見ていた。体温がどんどん伝わってくる。そして聖菜さんはオレに聞いてくる。
「ねぇ優斗君」
「ん?」
「キスしたいかな」
そう言って聖菜さんは自分の唇を指差す。花火の音だけが響く中、オレたちの視線が交差する。
「みんないるけど」
「花火見てるよ」
「今じゃないとダメ?」
「今じゃなきゃダメ」
その聖菜さんの顔はいつもとは違い真剣そのもの。周りをキョロキョロと確認すると、誰もこちらを気にしている様子はない。そしてオレは覚悟を決め聖菜さんの肩を掴む。そして聖菜さんの方に顔を近づけると聖菜さんは目を閉じる。そしてオレと聖菜さんの距離は0になった。
その時の聖菜さんとのキスはとても甘くて優しい味がした。まるで儚い夢のような感覚だった。
「優斗君」
「ん?」
「ありがとう」
「え?うん。」
そう言って微笑む聖菜さん。そのあとはお互いに花火を見る。『ありがとう』聖菜さんはオレにそう言った。なぜ感謝されたのか、このときのオレは分からなかった。
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