【たいむりーぷ？】『私。未来であなたの奥様やらせてもらってます！』～隣の席の美少女はオレの奥様らしい。きっと新手の詐欺だと思う……たぶん。～

1. 奥様やらせてもらってます

1.　奥様やらせてもらってます



　桜が咲き誇る4月の初め、オレこと神坂優斗は今日から高校生になる。中学までは普通のどこにでもいるような奴だったけど、高校からは変わる！そう決めていた。

　だってそうだろ？もう中二病的な痛い考えをするような年じゃないしな。それにオレには1つ大きな目標がある。それは彼女が欲しいってことだ。高校では絶対に彼女を作るぞ！

「行ってきまーす！」

　気合を入れて玄関を出ると、そこには幼馴染である天川春人がいた。

　こいつは幼稚園からの付き合いだ。いわゆる腐れ縁というやつである。容姿端麗、成績優秀でスポーツ万能と非の打ち所がない完璧超人なのだが、なぜかいつもやる気のない表情をしている。そして今もダルそうな顔をしながら話しかけてきた。

「よっ、優斗。相変わらずテンション低いなぁ～。もっと元気出せよ～」

「お前には言われたくねぇ。てか、なんでここにいるんだよ！？」

「ん？一緒に学校行こうと思って待ってたんだよ。ほら行くぞ～」

　相変わらずマイペースなやつ。だがオレにとって好都合であることに変わりはない。こいつの友達なら女の子と話す機会も増えそうだしな！……まぁ中学の時はそんなことなかったけど。

　そして無事に入学式も終わり、クラスに集まって自己紹介が始まった。みんな順番に名前とか趣味などを話していくのだが、なかなか面白い子がいるものだ。これなら高校生活も充実しそうだ。

　放課後になり、駅までの桜並木の帰り道を歩いていると、目の前に1人の女子生徒がいた。身長はかなり低く、150cmくらいだろうか？髪は黒髪で長く腰まで伸びている。肌はとても白く透き通っているように見える。あれ？あの子は確か……同じクラスで自己紹介の時もクラスの男子の視線を釘付けにしてた美少女。そしてオレの隣の席の……

「あの。」

「あ、はい！えっと……君は……確か隣の席の？」

「うん。私の名前は高宮聖菜。神坂優斗君だよね？少し話したいことがあって」

　めっちゃ可愛い～！これが世に言う美少女というものなのか。なんかいい匂いするし。でもこんな子がなんでオレみたいな冴えない男子に声をかけたんだろう？もしかしてオレにもついに春がきたのか！？すると彼女はニコッと微笑む。

　その笑顔を見た瞬間、心臓が大きく跳ね上がるのを感じた。今まで恋なんてしたことないからよくわからないけど一目惚れしてしまったかもしれない……。

「ねぇ。驚かないで聞いてくれる？」

「なに？」

「実は私ね……『タイムリープ』してるの。将来は君の奥様やらしてもらってます！」

「……美人局？オレ金ないけど？」

　……は？今この子は何を言ったんだろう？『タイムリープ』してる？オレの奥さんになってる？新手の詐欺か？どういうことだ？頭の中で様々な疑問が飛び交う。しかし彼女は言葉を続ける。

　オレが困惑していることを察したのか説明を始めてくれた。

「私は本当は38歳で、高校を卒業したら神坂君とは25歳の時に再会して28歳で結婚するの。今は葵と愛梨って名前の双子の子供がいるよ。この名前は神坂君が好きなゲームのキャラクターの名前から取ったんだぁ。分かるよね？」

　なんだか話がぶっ飛んでいて理解できない。確かに最近好きなゲームの美少女双子のキャラクターの名前だけど。この高宮さんってヤバい電波系女子なのか？いやこれは夢なんじゃないかと思い自分の頬っぺたを思いっきりつねる。

「痛っ！」

　普通に痛かった。どうやら現実のようだ。つまり彼女の言っていることは本当だということか？いやそんなのは非科学的すぎるだろ。ただ頭ごなしに否定するのも悪いし、一応話は聞いてみよう。

「あのさ。仮に高宮さんの言うことが本当ならなんで『タイムリープ』してきたんだ？理由教えてくれないかな？」

「うん。後悔してるから。」

「後悔？それはオレと将来結婚することがってこと？」

「ううん。逆。もっと一緒にいたいと思ったから。とても幸せに毎日を過ごしてた。でも、ふと思っちゃったの。初めて出会ったこの高校生から再会するまでの時間……一緒にいたかったなぁって。そしたら朝起きたらこの時代に『タイムリープ』してたの！神様のおかげかもね」

　まぁ利にはかなっている。しかし、そもそも『タイムリープ』を信じられないのだ。まだ完全に信用することはできない。というよりする訳がない。

「あー。つまり一緒にいるってオレと付き合うってこと？」

「ううん。違うよ。」

「あれ？オレも『タイムリープ』した？」

「神坂君はしてないね」

　ならどういうこと？ますますわかんなくなってきたぞ。

「というか神坂君は私の話信用してるの？だとしたら将来不安だなぁ？少しは疑わないと」

「はぁ！？嘘かよ！」

「嘘？何が？」

「『タイムリープ』をしてきたとか！将来オレと結婚して子供がいるとか！」

「してるよ。子供もいるよ？私は嘘ついてないし」

　マジかよ。もうわけわからんぞ。頭がパンク寸前だ。

「じゃあ『タイムリープ』してきたんだな？」

「どうかな？」

「……何がしたいの高宮さんは？」

「だから言ってるじゃん。神坂君と一緒にいたいの。」

「それが意味不明なんだよ。しかもその割には付き合わないとか言うし」

「私と付き合いたいのかな？」

「そう言うわけじゃなくてだな。行動や言動が矛盾してるだろ？」

「そっか。ごめんね。でもお付き合いしなくても一緒にはいれるよね？」

　素直に謝られると調子狂う。しかも屁理屈だし。でもこれ以上問い詰めても無駄な気がする。とりあえず話を切り替えるか。

「それでこれからどうすんの？」

「別に私は何もしないよ。ただ神坂君と一緒にいたいと思ってるだけ。神坂君は私の話を信用してないと思うし。だから私からは何もしないよ？今はね」

「そりゃ信用するほうがおかしいだろ？」

「未来の奥様に失礼だなぁ？」

「オレの未来の奥様っていきなり『タイムリープ』してきたとか初対面の男に言う変な女なんだな」

「変？それは否定しないかな」

　彼女はクスッと笑う。そして小さく呟くように言った。

「ちなみになんだけどさ。私は今年のクリスマスに神坂君の幼馴染みの天川春人君に告白されるんだ。嘘じゃないよ？」

「……どういうこと？」

「そのままの意味だよ。私にも色々あるから。もしその時までに私のことを信用してくれるなら……先に告白してね？それじゃあまた明日ね」

　そう言い残して高宮さんは帰ってしまった。なんか不思議な子だったな……。もう深く関わらないでおこう。

　……そう思ったけど、オレは彼女のことを気になってしまった。これは恋なのか？それとも別の感情なのか？今のオレはまだわからないでいた。