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第4章 令嬢と大賢者。ドラゴンの住まう霊峰

11. 保険

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11. 保険



 そして翌日。私たちは北にある霊峰に向かって歩きだす。道中の魔物はサーシャとリズが問題なく倒してくれているし、私も魔法で援護しているから、かなり楽よね。

「そう言えばサーシャの剣術は独学ですの?それとも誰かに教わったんですの?」

「はい。セントレアのギルドにいるヴェインのおじ様から教わりました。昔は有名なギルドパーティーにいた方なんですよ?」

「そうなんですのね。……それにしても、サーシャが一人で六魔将のマモンを倒した時は驚きましたわ」

「あ、あれはその……本当に覚えてなくて」

「でも、サーシャがいなかったら今頃どうなっていたか分かりませんわよ?あの剣技は間違いなく一級品ですもの!」

 リズの言う通りよね。でもサーシャには記憶がない。でもあの時の剣術はクロードを思い出させるような強さ。サーシャはもしかしてクロードの子孫……?

 なわけないか。そんな都合の良いことなんてありえないし、そもそもサーシャは剣の腕はなかったわけだしね。

 そんなこんな話しながら歩いていると、目的の霊峰にたどり着いた。カドリーから見えていたけど、近くで見るとすごい山ねぇ……。

「うわぁ大きいですね……」

「ここに魔物の巣があるのですわね」

 ラオの話だとこの霊峰は昔から聖域と言われていて、神聖な場所として崇められていたらしい。今ではドラゴンが生息する霊峰になったらしいけど。

「さぁ!魔物の巣まで行きますわよ!」

「ちょっと待ちなさいリズ。騎士団の報告によると邪気が充満しているって言ってたじゃない。邪気にあてられたらまずいわ。少し時間をちょうだい」

 そう言って私は地面に魔方陣を展開していく。まぁ昔はこの魔法に世話になったからね。

「サーシャ。アイアンソードをお願い」

「あっはい」

 サーシャは腰に差さったアイアンソードを握り締める。私はそれを見て神聖魔法を詠唱する。

「我護る。その光は悪しき闇を払う聖なる盾とならん『ホーリーシールド』」

 私が展開した魔方陣から光が溢れ出し、辺り一面を包んでいく。これである程度の邪気は問題ないでしょ。

「凄いです。アイリス様」

「これなら安心していけますわね!」

「えぇ。でも油断しないで頂戴。相手は六魔将クラスがいる可能性だがあるんだから。あとこれも飲んでおいて。村に売ってたから買っておいたわ」

 私はサーシャとリズに聖水が入った小瓶を取り出して渡す。まぁ私の魔法があれば問題はないけど、一応保険ね。

「ありがとうございます。なんかアイリス様って……お母様みたい」

「お母様!?」

「はい。何でも知っていますし、優しくしてくれますし。マーリン様とはまた違った安心感があります」

 こらこら。見た目の年齢的にせめてお姉さんとかにしてほしいんだけどさ。まぁ確かにサーシャのお母さんみたいなところはあるかもだけど。

「確かにマーリン様はお母様って感じじゃありませんわよね?なんかこう……手のかかる妹みたいな?」

「少し分かるかもしれません。でもマーリン様が聞いたら怒りますよね?絶対に」

「それは間違いありませんわね」

 そう言って笑うサーシャとリズ。……マーリンあなた手のかかる妹だと思われてるわよ?だからツインテールは攻めすぎって言ったのに……。

「こほん。とりあえず霊峰の中に行きましょうか。サーシャ、リズ準備はいいかしら?」

「はい。大丈夫です!」

「もちろんですわ!」

「それじゃ行くわよ。結界の範囲は広くないから、戦闘以外は私から離れないでよ?」

 こうして私たちは霊峰の中に入っていく。そして目的の魔物の巣まで歩き始めるのだった。
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