上 下
53 / 73
第3章 令嬢と大賢者。熱砂舞う王国の闇

10. 嗜む程度

しおりを挟む
10. 嗜む程度



 サーシャとマーリンはリズことリーゼロッテ様と協力して現国王アルガスを討つことになった。あれから秘密の抜け道を抜け、また灼熱の砂漠を歩いている。

 しかし、今は遠くにフランガラン帝国の王都が見えている。目的地が見えているだけでもやはり気分的に違うものね。そして何より、リズの表情が先程よりも明るい。

 それにしても一国の王族を説得するんだから本当にサーシャは不思議な子よね。なんかこう……言葉では上手く言えないんだけど、やっぱりサーシャには特別な何かがあるんじゃないかなって思ってしまう。

「少しよろしいかしらマーリン様?」

「なんじゃ?」

「その魔法具を身に付ければ『紅蓮の仔』の力の暴走を抑えれるんですわよね?そしたら私は魔法が使えないのかしら?」

「安心せい。あくまで暴走を抑えるだけじゃ。お主の本来の魔力量や魔法技術などには影響は出ん。じゃが、2度と外すことは出来んぞ。そういうものじゃ」

 2度と外せない……オシャレなリングとか腕輪とかならまぁ……って感じかしら。もし変なデザインだったりするとちょっと嫌だけど。

「早く王都に行ってまずはその魔法具の素材を見つけましょう!あとついでに『ミスリル』も」

 ……ついにサーシャの中で『ミスリル』がついでになってしまった……。私悲しいわよサーシャ。ぴえん。

「さっきの話だとリズさんは魔法が使えるんですか?」

「ええ。炎の精霊魔法が使えますわ。まぁマーリン様には及ばないと思いますが……」

「なるほど。では、リズさんはとりあえず後方支援ということでよろしいですか?」

「なんでも構わないわ。あっちなみに武器は一番細剣……レイピアの扱いが得意ですわね。あとは剣……大剣……双剣、槍、弓、斧……とまぁ大抵のものは扱えますわ」

 リズは指を折りながら自慢気に話す。……どんなお姫様なのよこの子。ウェポンマスターじゃない。そんな人見たことないけど……ほらサーシャとマーリンが少し引いてるじゃない。冗談かしら?プリンセスジョークでしょこれ?

「すごいですね……」

「ふふっ。私も王家の血を引いていますから。多少は嗜んでおりますわ」

 多少なの?十分すぎるくらい凄いわよ!サーシャが若干苦笑いしてたけど、リズは気にせずに続けた。

 それからしばらく歩いていくうちにフランガラン帝国の王都に到着した。ここからは慎重に行かないとね。まずは中に潜入する方法を探さないと。

「ふむ。門番がおるの……どうしたものかのぅ」

「サーシャ、マーリン様こっちですわ」

 リズはそう言うと外壁の周りを歩き始める。サーシャとマーリンもその後について行くと、そこには大きな木があった。こんな砂漠地帯に大木?その根元までくるとリズはしゃがみこんで地面の砂を払いながら触っている。

「確かこのあたりに……ありましたわ!」

 そこには地下に潜るための隠し扉のようなものが隠されていた。……なんなの?このフランガラン帝国の人は地下が好きなのかしら?

「これは?」

「……私が幼い頃、王国から抜け出した緊急避難用の抜け道ですわ」

「なるほどの。確かにここなら見つからずに王都に入れそうじゃな」

「ええ。急ぎますわよ」

 私たちはすぐに地下へと降りて行き、そのまま王都の中に入ることにした。しばらく歩き、地上に出るとどこかの廃屋の中に出たようだ。

 廃屋の中は、壁がボロボロで天井も穴だらけだ。人が住んでいる形跡もなく、長い間使われていないような場所だった。

「ここは……?」

「王都の外れの方にある廃屋ですわ。近くには誰もいないはずなので、ここで準備を整えてからアルガスを討つための作戦を考えましょう」

「うむ。ならばサーシャ。お主には魔法具の材料と『ミスリル』を探してきてもらおうかの。あとは今の王都の状況も知っておきたい。ワシは魔法具を作る準備をするぞい」

「分かりました」

 確かに今動けるのはサーシャだけ。リズはさすがにバレるのはまずいしね。

「サーシャ1人じゃ危険ですわよ?もし何かあったら……」

「リズさん。私にはアイリス様がいますから大丈夫です!」

 サーシャは嬉しそうに私を握りしめながら話す。とりあえずまずは魔法具の材料を探しましょうかね。もちろん『ミスリル』も忘れないでよサーシャ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...