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37. ラノベのような
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37. ラノベのような
そして帰り道。葵ちゃんたちとわかれてボクはそのまま家路を急ぐことにする。それにしても、意外にバレないもんだな。とりあえず何とかなって良かった。葵ちゃんもコミケ自体はすごい楽しんでいたし。
茜色に染まる空模様も、今日が終わってしまうことを感じさせる。ボクはその空を眺めながらゆっくりと歩く。
するとスマホにメッセージが届く。葵ちゃんかな?そう思って画面を開くと、そこには『YUKA猫』さんから猫のスタンプが送られてきていた
「え?YUKA猫さん?しかもスタンプだけ……?何だろう……とりあえずボクも何か返しとこう」
しばらく歩きながら『YUKA猫』さんとメッセージのやり取りをする。『にゃあ』や『にゃん』という文言しか送られて来ないけど、それでも楽しいやり取りが続く。
そういえばYUKA猫さんもコミケにいたのかな?そんなことを考えつつも、猫スタンプが可愛いのでしばらくやり取りをしていると、『追いついたにゃん』とメッセージが届く
そして茜色に染まった空で赤く染まったスマホの画面から、ふと後ろに視線を向けた時、ボクの心臓は跳ね上がり一瞬呼吸を忘れた。
「えっ……」
「追いついたにゃん」
そこには、黒髪のセミロングの女の子……まさかYUKA猫さんの正体は……
「ふふ。やっぱりそうだったんだ。葵ちゃんから写真見せてもらってたからもしかしてって思ってたけど」
「新島さん……」
「はい。新島由香里ことYUKA猫です」
そう言って楽しそうに笑う新島さん。まさかのことにボクは完全にパニック状態だ。落ち着こう……ボクが『白瀬優輝』とバレたわけじゃない。『白井雪姫』が白雪とバレただけ……そして新島さんはボクに近づいてくる。ボクは思わず本能的思考から一歩後ずさりをしてしまう。
「お。もしかして警戒してるんですか?」
「いや……その……」
「一緒にハートショットした仲じゃないですか?『シュガクロ』の。あの写真反響ありましたよ?白井さんがクロエちゃんが好きって言ってたので確信が持てたんですけどね」
ボクは今、どんな顔をしているんだろう。自分でも分かるくらい血の気が引いている。そして新島さんは満面の笑顔を浮かべてさらに近づいてくる。
何を言われるんだろうか……
気が付くとボクたちは至近距離に立っている。それはまるで境界線のようで、これ以上近付くことは許されないかのように思えた。そしてボクの心臓は跳ね上がるように高鳴っていく。
「ふふ。なんかラノベみたいじゃないですか?」
「え?」
「主人公の秘密を知った、ヒロインのお友達みたいな?」
「秘密って私は……」
ボクが言いかけると、新島さんは人差し指をボクの唇に当てる。ボクは突然のことに言葉を失い……そして何を思ったのか自分でも分からないけど、口をつぐむ。すると新島さんはますます笑みを深める。
そしてその瞳はまるで獲物を狙う肉食獣のようで、ボクの背筋は凍り付くような錯覚に陥る。
これはまずい……まさか気付かれた?いや違う……でもどうしたら?そんな思考がグルグルと頭の中を駆け巡る中、次の瞬間、新島さんはボクに抱きついてくる。
「ちょっと新島さん!?」
そしてその新島さんの右手はボクの下腹部を……
「!?」
「やっぱり……」
ボクは慌てて引き剥がそうとするけど……新島さんの細身の体からは考えられない力で押さえつけられ、逃げ出すことができない。
いや違う……ボクが力が入らないだけだ……
新島さんはボクから離れると悪戯っぽく笑う。その表情はまるで獲物を逃がさないと言っているようで、ボクの思考は完全に停止する。
そして再びボクに近づき耳元で囁くように言葉を紡ぐ。それはとても甘くて蕩けるような声で、まるで媚薬のように思考を鈍らせる。
「……私とお話することが出来ちゃったね?まだ時間あるよね?行こっか白瀬君?」
そう言って新島さんは妖艶に微笑むと、ボクの手を引き歩き出す。
ダメだ……
何も考えられない……
ボクは抵抗もできずそのまま引っ張られていくのだった。
そして帰り道。葵ちゃんたちとわかれてボクはそのまま家路を急ぐことにする。それにしても、意外にバレないもんだな。とりあえず何とかなって良かった。葵ちゃんもコミケ自体はすごい楽しんでいたし。
茜色に染まる空模様も、今日が終わってしまうことを感じさせる。ボクはその空を眺めながらゆっくりと歩く。
するとスマホにメッセージが届く。葵ちゃんかな?そう思って画面を開くと、そこには『YUKA猫』さんから猫のスタンプが送られてきていた
「え?YUKA猫さん?しかもスタンプだけ……?何だろう……とりあえずボクも何か返しとこう」
しばらく歩きながら『YUKA猫』さんとメッセージのやり取りをする。『にゃあ』や『にゃん』という文言しか送られて来ないけど、それでも楽しいやり取りが続く。
そういえばYUKA猫さんもコミケにいたのかな?そんなことを考えつつも、猫スタンプが可愛いのでしばらくやり取りをしていると、『追いついたにゃん』とメッセージが届く
そして茜色に染まった空で赤く染まったスマホの画面から、ふと後ろに視線を向けた時、ボクの心臓は跳ね上がり一瞬呼吸を忘れた。
「えっ……」
「追いついたにゃん」
そこには、黒髪のセミロングの女の子……まさかYUKA猫さんの正体は……
「ふふ。やっぱりそうだったんだ。葵ちゃんから写真見せてもらってたからもしかしてって思ってたけど」
「新島さん……」
「はい。新島由香里ことYUKA猫です」
そう言って楽しそうに笑う新島さん。まさかのことにボクは完全にパニック状態だ。落ち着こう……ボクが『白瀬優輝』とバレたわけじゃない。『白井雪姫』が白雪とバレただけ……そして新島さんはボクに近づいてくる。ボクは思わず本能的思考から一歩後ずさりをしてしまう。
「お。もしかして警戒してるんですか?」
「いや……その……」
「一緒にハートショットした仲じゃないですか?『シュガクロ』の。あの写真反響ありましたよ?白井さんがクロエちゃんが好きって言ってたので確信が持てたんですけどね」
ボクは今、どんな顔をしているんだろう。自分でも分かるくらい血の気が引いている。そして新島さんは満面の笑顔を浮かべてさらに近づいてくる。
何を言われるんだろうか……
気が付くとボクたちは至近距離に立っている。それはまるで境界線のようで、これ以上近付くことは許されないかのように思えた。そしてボクの心臓は跳ね上がるように高鳴っていく。
「ふふ。なんかラノベみたいじゃないですか?」
「え?」
「主人公の秘密を知った、ヒロインのお友達みたいな?」
「秘密って私は……」
ボクが言いかけると、新島さんは人差し指をボクの唇に当てる。ボクは突然のことに言葉を失い……そして何を思ったのか自分でも分からないけど、口をつぐむ。すると新島さんはますます笑みを深める。
そしてその瞳はまるで獲物を狙う肉食獣のようで、ボクの背筋は凍り付くような錯覚に陥る。
これはまずい……まさか気付かれた?いや違う……でもどうしたら?そんな思考がグルグルと頭の中を駆け巡る中、次の瞬間、新島さんはボクに抱きついてくる。
「ちょっと新島さん!?」
そしてその新島さんの右手はボクの下腹部を……
「!?」
「やっぱり……」
ボクは慌てて引き剥がそうとするけど……新島さんの細身の体からは考えられない力で押さえつけられ、逃げ出すことができない。
いや違う……ボクが力が入らないだけだ……
新島さんはボクから離れると悪戯っぽく笑う。その表情はまるで獲物を逃がさないと言っているようで、ボクの思考は完全に停止する。
そして再びボクに近づき耳元で囁くように言葉を紡ぐ。それはとても甘くて蕩けるような声で、まるで媚薬のように思考を鈍らせる。
「……私とお話することが出来ちゃったね?まだ時間あるよね?行こっか白瀬君?」
そう言って新島さんは妖艶に微笑むと、ボクの手を引き歩き出す。
ダメだ……
何も考えられない……
ボクは抵抗もできずそのまま引っ張られていくのだった。
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