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21. 変化する気持ち

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21. 変化する気持ち




 駅まで一緒に帰ることになったボクと葵ちゃん。隣には週末と同じように葵ちゃんがいる。緊張する……だって今は『白井雪姫』ではなく『白瀬優輝』のボクだから。

 カバンを持つ左手。いつもは普通に葵ちゃんの手を握っている。そう考えると……手を繋いだりしていることが幻なんじゃないかと錯覚してしまう。

 それより……何を話したらいいんだろう……でもせっかくこうして一緒に帰ってるんだから何か話したいけど、何を話せばいいか思いつかない。

 3年間同じクラスで、今は隣の席なのに……やっぱりボクはダメだな。そんなことを思いながら歩いていると、葵ちゃんがボクに声をかけてくる。

「ねぇ白瀬君。こうやって2人きりで話したりするの初めてだね?」

「え?うん……」

「なんか不思議な感じだね」

「うん。そうだね……」

 そう答えるものの……ボクは緊張しすぎて言葉が続かない。そんなボクに対して葵ちゃんは微笑みながら言う。

「大丈夫?緊張してる?私怖い?」

「いや!?怖くないよ……その……緊張はしてるけど」

「そうなんだ。私も緊張してるよ男の子と2人きりなんて……初めてだもん」

 そう言って葵ちゃんは笑う。その笑顔を見てボクは改めて思う。やっぱりボクなんかにはもったいない……だってこんなに可愛いし、それに優しい女の子だから。

 でも……だからこそ葵ちゃんと一緒にいたいって思うのかな?そんなことを考えながら歩いていると、ふと葵ちゃんが言う。それはボクが予想していなかった言葉だった。

「あのさ1つ聞いてもいい?白瀬君はさ……私と付き合いたいと思う?」

「え……」

 その質問にボクは一瞬戸惑う。葵ちゃんと付き合う?それは……すごく嬉しい。だってこんな美人な女の子と付き合えるなんて夢みたいだから。

 でもボクには……その勇気がない。葵ちゃんのことは『好き』だけど、今の気持ちが分からない。だからボクは正直に答えることにする。

「どうかな?」

「えっと……藤咲さんは可愛いし……色々な男の子から人気で……でも……分からない……」

「え?分からない?」

「うっうん……ボク……藤咲さんのこと、まだ良く知らないし……それに、付き合うとか……そういうのよく分からない」

 ボクがそう言うと葵ちゃんは少し考えこむような仕草を見せる。そして少しだけ笑いながら言う。

「そっか……」

「あっその……藤咲さんに魅力がないとかじゃなくて、その……なんていうか……」

「あはは。必死だね白瀬君w」

 ボクがあたふたしながら弁解しようとすると、葵ちゃんはそのまま笑顔を見せてくれる。

「白瀬君は恋に真面目なんだね……そう人……いいなって思うよ?」

「え?」

「ありがとう。ごめんねなんか変なこと聞いちゃって。でもなんか白瀬君らしいね」

 そう言って葵ちゃんは笑う。その笑顔がすごく可愛くて、ボクは思わずドキッとする。やっぱり……ボクは葵ちゃんが好きだなって思う。

 そしてそのまま駅に着く。あまり会話は出来なかったけど、その夢のような時間はあっという間だった。

「今日はありがとう」

「うっうん」

「じゃあね白瀬君」

 駅の改札に歩く葵ちゃん。その後ろ姿をボクは目で追いかける。このままお別れする……そう考えるとなぜか寂しくなる。もうこうやって話すこともないのかな……でもこれでいいんだ、だって今のボクは『白瀬優輝』なんだから。




 そう思っていたけど……




 次の瞬間ボクは無意識に声をあげていた。

「藤咲さん!」

「え?どうかした白瀬君?」

「その……えっと……また……こうやって話してもいい?藤咲さんが……迷惑じゃなければだけど……」

「なんでわざわざ許可取るのw私たちクラスメートじゃん。全然いいよ。迷惑なんて思わないよ」

「うっうん!それじゃ……また明日!」

「また明日ね。バイバイ」

 葵ちゃんはそのまま改札を抜けていく。ボクはその後ろ姿を見ながら思う。

 やっぱりボクは葵ちゃんが好きだ……




 でも1つ変わったことがある……




 そう……今は自信がないけど、いつかこの気持ちを『白瀬優輝』で葵ちゃんに伝えたいって思ったんだ。
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