上 下
14 / 40

14. 好きが何なのか分からない

しおりを挟む
14. 好きが何なのか分からない



 そして週末。ボクは駅前の映画館の前でそわそわしていた。約束は11時なのにまた今日も早く来てしまった。

 凄く緊張する……葵ちゃんと2回目のデート……そう思うとドキドキするし、葵ちゃんの今日の私服姿も楽しみで仕方ない。

 ボクは葵ちゃんが『好き』。

 でも……その『好き』が何なのかは正直分からない。真凛に言われたようにボクが葵ちゃんに恋をしているかもしれないことは自覚した。でもそれが本当に恋愛として好きなのか?それとも推しに対する憧れなのか?正直分からない。

 自分に自信がなくて、週末女装をしているような、男としてダメなボクだから……きっと葵ちゃんのことを恋愛対象として好きではないはず!そう自分に言い聞かせる。

 そうしないと……恥ずかしくて葵ちゃんとまともに話が出来なそうだし。でも……本当に葵ちゃんに恋をしていたら?そう考えるとボクの心臓は痛いくらいに締め付けられる。

 そんなことを考えていると急にスマホが鳴る。慌てて確認するとそれは葵ちゃんからだった。ボクは緊張しながらメッセージを開くと、そこにはボクの写真。

「え?」

「ふふ。おはよ雪姫ちゃん」

「わっ!?あっ……おはよう葵ちゃん」

「なんか1人でソワソワしてたから写真撮っちゃったw」

「も~!葵ちゃん!」

「あはは。ごめんね?でも……雪姫ちゃんが可愛いかったから写真撮っちゃったんだよ?」

 そうボクに言う葵ちゃん。その笑顔が眩しい。そんなことを言われて心臓のドキドキは止まらないし、すごく緊張してしまっている。でも……やっぱり葵ちゃんのこと可愛いと思うし、こんな笑顔が見たいとも思う。

 ボクのこの気持ちって本当に恋なんだろうか?推しとして好きなだけなんじゃ?いや……そうに決まっている!だってボクは何の取り柄もないし男としてダメなんだから女の子を好きになるなんてあり得ないし!そんなことを考えていると急に手を握られる。

「じゃあ……映画館デートしようか?」

 その仕草も可愛くてドキドキしてしまう……こんな顔されたら意識しないわけがないよ!

 でも……これは友達同士のお出掛けだ!だから緊張する方がおかしい!それにボクと葵ちゃんは友達だから、こんな反応をするのもおかしいはずだ! ボクは自分にそう言い聞かせながら葵ちゃんの手をしっかりと握って映画館の中に入っていく。

 そして上映時間を確認してからポップコーンや飲み物を買って席に着く。暗がりの中、隣同士の席。いつもの教室と同じだけど、距離が違う。すごく緊張するけど……それを悟られないように必死だ。

 そんなことを考えていると葵ちゃんがボクの耳元で囁く。それはまるで恋人に囁き掛けるような甘い言葉。その言葉はボクの心臓を鷲掴みにするには充分だった。

「ねぇ雪姫ちゃん」

「なっ何?」

「……雪姫ちゃんの手……温かいね?なんか安心する」

 その一言にボクの心臓は爆発しそうになる。葵ちゃんは……ボクのことをどう思っているんだろう?友達?それとも恋人?ボクは……葵ちゃんのことが『好き』なのか?分からない……でもドキドキしている自分がいるのも確かだ。

 そして映画が始まるが、正直内容は全く入ってこない。ただ隣に座る葵ちゃんが気になって仕方がなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染をわからせたい ~実は両想いだと気が付かない二人は、今日も相手を告らせるために勝負(誘惑)して空回る~

下城米雪
青春
「よわよわ」「泣いちゃう?」「情けない」「ざーこ」と幼馴染に言われ続けた尾崎太一は、いつか彼女を泣かすという一心で己を鍛えていた。しかし中学生になった日、可愛くなった彼女を見て気持ちが変化する。その後の彼は、自分を認めさせて告白するために勝負を続けるのだった。  一方、彼の幼馴染である穂村芽依は、三歳の時に交わした結婚の約束が生きていると思っていた。しかし友人から「尾崎くんに対して酷過ぎない?」と言われ太一に恨まれていると錯覚する。だが勝負に勝ち続ける限りは彼と一緒に遊べることに気が付いた。そして思った。いつか負けてしまう前に、彼をメロメロにして告らせれば良いのだ。  かくして、実は両想いだと気が付かない二人は、互いの魅力をわからせるための勝負を続けているのだった。  芽衣は少しだけ他人よりも性欲が強いせいで空回りをして、太一は「愛してるゲーム」「脱衣チェス」「乳首当てゲーム」などの意味不明な勝負に惨敗して自信を喪失してしまう。  乳首当てゲームの後、泣きながら廊下を歩いていた太一は、アニメが大好きな先輩、白柳楓と出会った。彼女は太一の話を聞いて「両想い」に気が付き、アドバイスをする。また二人は会話の波長が合うことから、気が付けば毎日会話するようになっていた。  その関係を芽依が知った時、幼馴染の関係が大きく変わり始めるのだった。

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

【完結】碧よりも蒼く

多田莉都
青春
中学二年のときに、陸上競技の男子100m走で全国制覇を成し遂げたことのある深田碧斗は、高校になってからは何の実績もなかった。実績どころか、陸上部にすら所属していなかった。碧斗が走ることを辞めてしまったのにはある理由があった。 それは中学三年の大会で出会ったある才能の前に、碧斗は走ることを諦めてしまったからだった。中学を卒業し、祖父母の住む他県の高校を受験し、故郷の富山を離れた碧斗は無気力な日々を過ごす。 ある日、地元で深田碧斗が陸上の大会に出ていたということを知り、「何のことだ」と陸上雑誌を調べたところ、ある高校の深田碧斗が富山の大会に出場していた記録をみつけだした。 これは一体、どういうことなんだ? 碧斗は一路、富山へと帰り、事実を確かめることにした。

不審者が俺の姉を自称してきたと思ったら絶賛売れ出し中のアイドルらしい

春野 安芸
青春
【雨の日に出会った金髪アイドルとの、ノンストレスラブコメディ――――】  主人公――――慎也は無事高校にも入学することができ可もなく不可もなくな日常を送っていた。  取り立てて悪いこともなく良いこともないそんな当たり障りのない人生を―――――  しかしとある台風の日、豪雨から逃れるために雨宿りした地で歯車は動き出す。  そこに居たのは存在を悟られないようにコートやサングラスで身を隠した不審者……もとい小さな少女だった。  不審者は浮浪者に進化する所を慎也の手によって、出会って早々自宅デートすることに!?  そんな不審者ムーブしていた彼女もそれは仮の姿……彼女の本当の姿は現在大ブレイク中の3人組アイドル、『ストロベリーリキッド』のメンバーだった!!  そんな彼女から何故か弟認定されたり、他のメンバーに言い寄られたり――――慎也とアイドルを中心とした甘々・イチャイチャ・ノンストレス・ラブコメディ!!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

おっぱい揉む?と聞かれたので揉んでみたらよくわからない関係になりました

星宮 嶺
青春
週間、24hジャンル別ランキング最高1位! ボカロカップ9位ありがとうございました! 高校2年生の太郎の青春が、突然加速する! 片想いの美咲、仲の良い女友達の花子、そして謎めいた生徒会長・東雲。 3人の魅力的な女の子たちに囲まれ、太郎の心は翻弄される! 「おっぱい揉む?」という衝撃的な誘いから始まる、 ドキドキの学園生活。 果たして太郎は、運命の相手を見つけ出せるのか? 笑いあり?涙あり?胸キュン必至?の青春ラブコメ、開幕!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...