155 / 158
第5章 二人の聖女
10. 交響曲(シンフォニー) ~アリーゼside~
しおりを挟む10. 交響曲(シンフォニー) ~アリーゼside~
ユトナ聖橋の真ん中でランバート王国の軍勢と対峙することになった私たちはレオンハルト=ランバートに賭けを持ち込むことにしたのです。それはマルセナが処刑を止めるか止めないか。私たちの命を賭けたものなのです。
緊張感に包まれているのです。ミルディはさっきから私のローブを握りしめているのです。でも私が一番気になるのはレオンハルトも強く拳を握りしめていることなのです。
「一つ聞いてもいいのです?」
「なんだ?」
「ライアン様はあなたの弟なのです。処刑されてもいいのですか?」
「いいわけなかろう。しかしランバート王国が発展していくにはセントリン王国の侵略が必要だ。あんな国王でも私の父なのだ。私はランバート王国のためなら実の弟の命だろうと捨てる覚悟はある。」
正義感が強いのです。だからこそ私たちの提案に乗ってきたのでしょうね。本当は止めてほしいのかも知れないのですね。そんな時ミルディが私に話しかけてくる。
「あのさアリーゼ。なんでこんなこと思いついたの?レオンハルト様に賭けをしてみるなんて、普通思いつかないよ?」
「それは私が間違いなく勝つ可能性があるからなのですよ」
「えっ?それって…」
ミルディは驚いているようです。そう、私は勝てる見込みがあるから提案したのです。まあ確実ではないのですけどね。
どのくらい時間がたっただろうかまだ公開処刑の結果はわからない。レオンハルトは焦りを募らせていた。相変わらずその拳を強く握りしめている。
「レオンハルト王子」
「なんだ?」
「きっとあなたにもいい知らせがくるのですよ。大聖女ディアナ様は信じるものの味方なのです!」
この一言を聞いたレオンハルトは少し微笑んだように見えた。そしてその時だった。ついにその瞬間が訪れる。ランバート王国の兵士がレオンハルトの元に走ってくるのです。緊張感が辺りを包む。
「伝令ー!!伝令ー!!」
「どうなった!?」
私はその兵士の結果を聞くまでもなく微笑んだ。
「アリーゼなんでこんな時に笑ってるの!?」
「それはですね。見てなのです。ミルディ。通信魔法具が光っているのですよ?」
そういうとミルディは通信魔法具を取り出し若干回復した魔力で通信をつなぐ。
《聞こえますか!?》
「ソフィア!?あっ……うん。聞こえてる!!」
そしてミルディも微笑む。その通信魔法具の向こうから私とミルディにランバート王国の住民の歓声が聞こえる。その声が全てを答えてくれていた。
《マルセナ様が処刑を止めたんです!みんな無事です!》
「本当!?良かった!」
そのソフィアの言葉を聞いてミルディが後ろを向き手でみんなにOKの合図をする。するとこちらも通信魔法具から聞こえる歓声に負けないくらい大きな歓声が上がるのです。
「そうか……処刑は止められたのだな。私の負けか……」
レオンハルトは小さくそう呟き空を見上げる。その顔は安堵の顔だったのです。そして通信魔法具から怒ったロゼッタ様が叫んでいるのが聞こえるのです。
《おいアリーゼ!!お主がリスティ=ローレンを呼んだのじゃろ!!一言言っておくのじゃ!!勝手なことしおって!!》
《落ち着いて師匠!?》
「どういう事アリーゼ?」
「ミルディ。通信を切っていいのです。」
そういうとミルディは通信を切る。そして私はレオンハルト王子に話す。
「私の勝ちなのです。」
「そのようだな。」
「素直じゃないのです。本当は止めてほしかったのですよね?」
「ふっ。どうかな。もうセントリン王国へは関わらん。皆の者帰るぞ!後処理が必要だろうからな。」
そういってレオンハルトは軍勢を率いて王都へ戻っていく。良かったのです。これで平和なのです。
「まったくアリーゼは。リスティ様に頼んでるならそう言ってよ。ずる賢いんだから。」
「せめて用意周到と言ってほしいのです。それにもしかしたら来ない可能性もあったのです。」
「そうだけどさ…」
ミルディは納得していないようなのです。まあ確かにちょっとずるかったかもなのです。でも仕方ないのです。これが最善だったのです。
「ミルディ。そんなことより。早くみんなのところに行くのです!私たちが戦争を止めたのです!」
「うん!そうだあたしたちが止めたんだ!」
私は聖女として、ミルディは魔法鍛冶師としてこの戦争を止めることに成功したのです。これは歴史に残る快挙なのですよ?私たちは二人手を取り合ってみんなのところに走って行く。
「みんな戦争は起きないのです!安心するといいのです!」
私たちの歓喜の叫び声は、どこまでも響き渡る。
「アリーゼ。あのさ……」
「なんですか?」
「やっぱりあたし、アリーゼと出会えて良かったよ。これからの旅もよろしく!」
「私もなのです。ミルディ。」
こうして、二人の聖女の活躍によりセントリン王国とランバート王国の戦争は終わりを告げることになる。
アリーゼ=ホーリーロックは今日という日を忘れない。自分が信じたみんなと共に平和に導いたことを。
「聖痕」が消えた。
聖魔法が使えない。
それでも間違いなくそこには人を救い、人を動かす「聖女」がいたのだ。
そう彼女は「あなたは何者?」と聞かれれば、きっとこう言うだろう。
『ただの聖女なのです。』と。
ユトナ聖橋の真ん中でランバート王国の軍勢と対峙することになった私たちはレオンハルト=ランバートに賭けを持ち込むことにしたのです。それはマルセナが処刑を止めるか止めないか。私たちの命を賭けたものなのです。
緊張感に包まれているのです。ミルディはさっきから私のローブを握りしめているのです。でも私が一番気になるのはレオンハルトも強く拳を握りしめていることなのです。
「一つ聞いてもいいのです?」
「なんだ?」
「ライアン様はあなたの弟なのです。処刑されてもいいのですか?」
「いいわけなかろう。しかしランバート王国が発展していくにはセントリン王国の侵略が必要だ。あんな国王でも私の父なのだ。私はランバート王国のためなら実の弟の命だろうと捨てる覚悟はある。」
正義感が強いのです。だからこそ私たちの提案に乗ってきたのでしょうね。本当は止めてほしいのかも知れないのですね。そんな時ミルディが私に話しかけてくる。
「あのさアリーゼ。なんでこんなこと思いついたの?レオンハルト様に賭けをしてみるなんて、普通思いつかないよ?」
「それは私が間違いなく勝つ可能性があるからなのですよ」
「えっ?それって…」
ミルディは驚いているようです。そう、私は勝てる見込みがあるから提案したのです。まあ確実ではないのですけどね。
どのくらい時間がたっただろうかまだ公開処刑の結果はわからない。レオンハルトは焦りを募らせていた。相変わらずその拳を強く握りしめている。
「レオンハルト王子」
「なんだ?」
「きっとあなたにもいい知らせがくるのですよ。大聖女ディアナ様は信じるものの味方なのです!」
この一言を聞いたレオンハルトは少し微笑んだように見えた。そしてその時だった。ついにその瞬間が訪れる。ランバート王国の兵士がレオンハルトの元に走ってくるのです。緊張感が辺りを包む。
「伝令ー!!伝令ー!!」
「どうなった!?」
私はその兵士の結果を聞くまでもなく微笑んだ。
「アリーゼなんでこんな時に笑ってるの!?」
「それはですね。見てなのです。ミルディ。通信魔法具が光っているのですよ?」
そういうとミルディは通信魔法具を取り出し若干回復した魔力で通信をつなぐ。
《聞こえますか!?》
「ソフィア!?あっ……うん。聞こえてる!!」
そしてミルディも微笑む。その通信魔法具の向こうから私とミルディにランバート王国の住民の歓声が聞こえる。その声が全てを答えてくれていた。
《マルセナ様が処刑を止めたんです!みんな無事です!》
「本当!?良かった!」
そのソフィアの言葉を聞いてミルディが後ろを向き手でみんなにOKの合図をする。するとこちらも通信魔法具から聞こえる歓声に負けないくらい大きな歓声が上がるのです。
「そうか……処刑は止められたのだな。私の負けか……」
レオンハルトは小さくそう呟き空を見上げる。その顔は安堵の顔だったのです。そして通信魔法具から怒ったロゼッタ様が叫んでいるのが聞こえるのです。
《おいアリーゼ!!お主がリスティ=ローレンを呼んだのじゃろ!!一言言っておくのじゃ!!勝手なことしおって!!》
《落ち着いて師匠!?》
「どういう事アリーゼ?」
「ミルディ。通信を切っていいのです。」
そういうとミルディは通信を切る。そして私はレオンハルト王子に話す。
「私の勝ちなのです。」
「そのようだな。」
「素直じゃないのです。本当は止めてほしかったのですよね?」
「ふっ。どうかな。もうセントリン王国へは関わらん。皆の者帰るぞ!後処理が必要だろうからな。」
そういってレオンハルトは軍勢を率いて王都へ戻っていく。良かったのです。これで平和なのです。
「まったくアリーゼは。リスティ様に頼んでるならそう言ってよ。ずる賢いんだから。」
「せめて用意周到と言ってほしいのです。それにもしかしたら来ない可能性もあったのです。」
「そうだけどさ…」
ミルディは納得していないようなのです。まあ確かにちょっとずるかったかもなのです。でも仕方ないのです。これが最善だったのです。
「ミルディ。そんなことより。早くみんなのところに行くのです!私たちが戦争を止めたのです!」
「うん!そうだあたしたちが止めたんだ!」
私は聖女として、ミルディは魔法鍛冶師としてこの戦争を止めることに成功したのです。これは歴史に残る快挙なのですよ?私たちは二人手を取り合ってみんなのところに走って行く。
「みんな戦争は起きないのです!安心するといいのです!」
私たちの歓喜の叫び声は、どこまでも響き渡る。
「アリーゼ。あのさ……」
「なんですか?」
「やっぱりあたし、アリーゼと出会えて良かったよ。これからの旅もよろしく!」
「私もなのです。ミルディ。」
こうして、二人の聖女の活躍によりセントリン王国とランバート王国の戦争は終わりを告げることになる。
アリーゼ=ホーリーロックは今日という日を忘れない。自分が信じたみんなと共に平和に導いたことを。
「聖痕」が消えた。
聖魔法が使えない。
それでも間違いなくそこには人を救い、人を動かす「聖女」がいたのだ。
そう彼女は「あなたは何者?」と聞かれれば、きっとこう言うだろう。
『ただの聖女なのです。』と。
2
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説
【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~
夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】
「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」
アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。
理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。
もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。
自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。
王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると
「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」
オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが……
アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。
そして今日も大きなあの声が聞こえる。
「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」
と
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
「次点の聖女」
手嶋ゆき
恋愛
何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。
私は「次点の聖女」と呼ばれていた。
約一万文字強で完結します。
小説家になろう様にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる