追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

文字の大きさ
上 下
149 / 158
第5章 二人の聖女 

4. 前奏曲(プレリュード) ~アリーゼside~

しおりを挟む
4. 前奏曲(プレリュード) ~アリーゼside~



 馬車は目的のユトナ聖橋に進んでいく。次第に私の緊張感も高まっていくのです。正直不安しかないのです。それでも一緒に来てくれたミルディがいるので心強いのです。私の力でランバートの軍勢を止めなければセントリン王国もカトリーナ教会も終わってしまうのです。

 私たちは大きな川に差し掛かりました。この川がユトナ聖橋の名前の由来になっているようです。橋はもう見えているようなのですが、まだ遠いみたいですね。でもこのまま進めば到着するはずなのです。その時ミルディが私の手を握る。

「ミルディ……」

「大丈夫。あたしもついてるから」

「はいなのです。必ずランバートの軍勢を止めて見せるのです!」

 その握られた手はとても温かく、気持ちが落ち着いたのです。そして橋が見えてきました。あと少しなのです!私には迷いはないのです。今でも残る手の温もりがあの時と同じだったのだから……




 ~過去~
 今日はマルセナと共に聖女祭を楽しむために街に出かけているのです!街の人たちはとても忙しそうなのです。それは何故かというと、この街の一大イベントだからでなのです。屋台なんかもいっぱいでるので特に子供にとっては楽しみで仕方がないようなのですよ。

 私たちが主役のお祭り。凄く楽しいのです!私はマルセナを見る。いつも通りなのです。最近は忙しくてなかなか街に来れなかったのです。でも久しぶりに来た街はとても賑やかで、活気があるのです。私とマルセナはある場所に向かっているのです。

「ふぅ~さすがに人が多いわね~」

「そういえばマルセナはこういった祭りは初めてなのです?」

「えぇ、こんな大規模なものはなかったわね。でもこういう雰囲気は好きよ?なんだかワクワクしてくるじゃない」

「わかるのです。私もすごく楽しくなってくるのです」

 そんな話をしているうちに、いつの間にか目的地に到着したのです。ここは古びた礼拝堂。今は誰も使っていない場所なのです。相変わらずここだけは別世界のような感じでとても静寂に包まれています。私がここにくるたびに思うことだけど、本当にここは不思議だと思うのです。まるでここだけ隔離された場所のように感じるのです。

 私はいつもの場所に座って祈りを捧げます。こうやって目を閉じて集中すると、周りの声とか雑音が全て消えていく感覚になるのです。これが結構好きなのです。しばらくそうしてると、マルセナの声が聞こえてきたのです。

「アリーゼ。そろそろいいかしら?」

「あ、ごめんなさいなのです。つい夢中になってしまったのです」

 私は目を開ける。そこには笑顔を浮かべているマルセナがいたのです。

「いいのよ。それにしても……よくこんな場所を知っているわね?」

「ここは私が小さい時からこの場所の雰囲気が好きでよく来ていたのです。今もたまに来ることがあるのですよ。」

「確かにこの空気感は他のところじゃ味わえないかもね。なんと言うか神聖って言葉が一番合うかしら?」

「はい、まさにそれなのです!」

 私たちは自然とお互いの顔を見合わせて笑いあったのです。やっぱりこの場所は特別なのです。それから私たちは色々なお店を回ったり、食べ物を買ったりしたのです。こうして二人で出かけるのは久々だったので凄く楽しかったのです!でも一番嬉しかったのは……

「楽しかったのです!マルセナと一緒にいるのは幸せなのですね!」

「大袈裟ねアリーゼは。でもありがとう。私もあなたと一緒だと楽しいわ。これからも2人で頑張りましょう」

 そう言いながら私の手を握る。この時間がいつまでも続いて欲しいと思うのは私のワガママなのですかね……




 ~現在~
 馬車は目的のユトナ聖橋にたどり着く。私とミルディは馬車を降り、セントリン王国側まで歩いて行く。それはランバート王国の軍勢をユトナ聖橋の上で止めるためなのです。まぁそんなところで止められたら派手な動きは出来ないと思うのです。

「ミルディ。しばらくするとランバートの軍勢がこの聖橋に来るのです。そしたら私がその軍勢を止めるのです」

「あのさ。止めるってどうするつもりなの?」

「説得するのです。さすがに1人じゃ戦っても勝ち目はないのです」

「説得って……本気なの!?相手はランバートの軍勢だよ!?」

 ミルディは焦った様子で聞いてきました。まぁ普通ならあり得ない話なのでしょうけど、私は聖女なのです。だからきっと出来ると信じてるのです。

『聖女』それは困っている人々を救い、導く存在。そして私は戦うことを決めたのです。ミルディは少し考え込むと大きく息を吐いた。そして何かを決意した表情で顔を上げると真剣な眼差しでこちらを見て口を開く。その瞳には強い意志が宿っていた。

 そしてそれは、私が今まで見たことのないほど真っ直ぐで力強いものだったのです。

「それならあたしも一緒に説得する。アリーゼと一緒なら怖いものなんてないもんね。あたしもう覚悟決めたから!」

「ミルディ……」

 正直驚いたです。まさかミルディがここまで言うとは思わなかったのです。でも、それだけ信用してくれているという事なのです。私は改めて決意を固めるのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~

夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】 「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」 アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。 理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。 もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。 自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。 王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると 「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」 オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが…… アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。 そして今日も大きなあの声が聞こえる。 「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」 と

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

処理中です...