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第3章 聖女。魔法と鉱山に挑むのです!
13. 似ている ~マルセナside~
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13. 似ている ~マルセナside~
ライアン王子の誕生パーティー以来マルセナの頭の中はレオンハルト王子のあの言葉でいっぱいになっていた。そんな時マルセナは珍しくライアン王子に呼び出されていた。そして今ライアン王子の部屋の前にいる。
(一体なんのお話なのかしら?)
ーーコンコン 扉をノックする音が聞こえてくると部屋の主であるライアン王子は「どうぞ」と答えて部屋に入るように促す。マルセナはおそるおそる部屋の中へ入っていく。
「失礼します」
そう言ってゆっくりとした動作で部屋の中に入ってきたマルセナを見てライアン王子は微笑みを浮かべる。だがそれは……自分に負い目があったのか、まるで悪魔のような笑みをしているように見えた。
部屋に入ってきたマルセナの方へと歩み寄りながらその笑みのまま話しかけていく。
「よく来てくれたね。さぁこちらに来て座ってくれ」
そういいマルセナの手を取って自分の前に引き寄せると、そのまま腰に手を当て強引に自分の方へと近づけるように力を込める。マルセナはその力に逆らうことができずそのまま椅子に座ってしまう。
椅子に座ってもなおライアン王子から手を離してくれない為逃げることもできないままだった。しかしマルセナの心の中では先ほどの笑みのことでいっぱいになっておりそこまで頭が回っていない。むしろそれしか考えられなくなっていたと言ってもいいだろう。
「あの……ライアン王子?いったい何の話なのでしょうか?」
「ふむ……君には一度聞いてみたいことがあったんだよ」
「私に聞きたいことですか?」
そういうとようやく手を離し今度は手を握ってくるが、今のマルセナの精神状態じゃ心を正常に保てない。そんなことよりも早く話を終わらせたい一心から気に留めることはなかった。
「まあ大体予想がつくとは思うけどね……君、兄上のことが好きなんだろう?」
「え……?」
ドクンっと心臓が鳴ったかと思ったほど胸が大きく脈打った。今まで考えないようにしていた事を突きつけられたせいもあるだろう。でもそれだけじゃないことは自分自身が一番分かっていた。ただ認めることが怖かっただけなのだ。
でも……私は……本当に好きなの?
レオンハルト王子のこと……
黙り込んでしまったマルセナに構わず言葉を続けていく。
「大丈夫だよ、別に怒っているわけでもないからね。むしろ君のように可愛い子が私の兄上ことを好きになってくれているなんて光栄なことだと思うよ。だからそんな悲しそうな顔をしないでくれるかな?」
そういうと優しくマルセナを抱き寄せ頭を撫で始めた。一瞬何をされているのか理解できずボーっとする。
「あの!やめてください!」
ハッとしたマルセナはライアン王子の腕を振り払い、後ろに下がって距離を取る。その様子を見てライアン王子は再びクスリと笑う。
「恥ずかしがり屋さんだね君は。そういうところもすごく可愛らしいと思うけどね?」
また一歩近寄ってくるがマルセナはそれを遮るように口を開く。もう限界だと思ってしまったからだ。これ以上は自分を誤魔化すことも耐えられる気がしなかった。ならばハッキリさせてしまった方が楽になるのではないかと考えたのだ。
だって……私が好きなのは……
「どうして貴方がそのようなことを言うのですか?私は一度もレオンハルト王子を好きだなんて……そのような事を申しておりませんのに……」
「ああ……やっぱりそうだよね。うん知ってたよ」
「なら何故このようなことを聞くのです?まさか私をまたからかっているわけではないですよね?」
睨みつけるような視線を向けられたにも関わらず、その目を見つめ返しながら笑顔のまま返事をする。その様子にも腹立たしく感じたがそれ以上に疑問だったのは何故わざわざこんな質問をしたのかということだけだった。
「違うよ。からかってなんかいないさ。ただ私は知りたかっただけだよ。本当に君の気持ちが本物かどうかということをね?」
「どういう意味でしょうか?」
「君と私は似ている。だからこそわかることもあるということだ。君は自分の本心を押し殺してしまう傾向がある。だからこうして確かめさせてもらったんだよ。ごめんね意地悪なことをして」
「いえ、お気になさらず……ではこれでこの話は終わりですね。もう帰ってよろしいでしょうか?」
そういいながら立ち上がり帰ろうとするマルセナだったがそれを制するようにライアン王子はマルセナを止める。そしてそのままライアン王子はマルセナの手首を掴み無理やり自分の元へ引き寄せそのままベッドに押し倒す。しかしマルセナは抵抗しようとする素振りは見せなかった。
それはこれから起こる事を半ば覚悟したからでもあるだろう。もう自分には何もできないと諦めていた部分もあったかもしれない。それでもどこか心の中で期待している自分がいることにも気づいていたが、必死にそれを否定することで冷静さを保とうとする。
「やっぱり君は……素直じゃないね?」
「なら……どうするつもりですの?私は聖女ですわ」
「聖女マルセナ。もう……それが答えじゃないのかい?」
ライアン王子はそういうと聖女マルセナの吐息を感じながらその誰も触れた事のない聖女の唇を奪った。
ライアン王子の誕生パーティー以来マルセナの頭の中はレオンハルト王子のあの言葉でいっぱいになっていた。そんな時マルセナは珍しくライアン王子に呼び出されていた。そして今ライアン王子の部屋の前にいる。
(一体なんのお話なのかしら?)
ーーコンコン 扉をノックする音が聞こえてくると部屋の主であるライアン王子は「どうぞ」と答えて部屋に入るように促す。マルセナはおそるおそる部屋の中へ入っていく。
「失礼します」
そう言ってゆっくりとした動作で部屋の中に入ってきたマルセナを見てライアン王子は微笑みを浮かべる。だがそれは……自分に負い目があったのか、まるで悪魔のような笑みをしているように見えた。
部屋に入ってきたマルセナの方へと歩み寄りながらその笑みのまま話しかけていく。
「よく来てくれたね。さぁこちらに来て座ってくれ」
そういいマルセナの手を取って自分の前に引き寄せると、そのまま腰に手を当て強引に自分の方へと近づけるように力を込める。マルセナはその力に逆らうことができずそのまま椅子に座ってしまう。
椅子に座ってもなおライアン王子から手を離してくれない為逃げることもできないままだった。しかしマルセナの心の中では先ほどの笑みのことでいっぱいになっておりそこまで頭が回っていない。むしろそれしか考えられなくなっていたと言ってもいいだろう。
「あの……ライアン王子?いったい何の話なのでしょうか?」
「ふむ……君には一度聞いてみたいことがあったんだよ」
「私に聞きたいことですか?」
そういうとようやく手を離し今度は手を握ってくるが、今のマルセナの精神状態じゃ心を正常に保てない。そんなことよりも早く話を終わらせたい一心から気に留めることはなかった。
「まあ大体予想がつくとは思うけどね……君、兄上のことが好きなんだろう?」
「え……?」
ドクンっと心臓が鳴ったかと思ったほど胸が大きく脈打った。今まで考えないようにしていた事を突きつけられたせいもあるだろう。でもそれだけじゃないことは自分自身が一番分かっていた。ただ認めることが怖かっただけなのだ。
でも……私は……本当に好きなの?
レオンハルト王子のこと……
黙り込んでしまったマルセナに構わず言葉を続けていく。
「大丈夫だよ、別に怒っているわけでもないからね。むしろ君のように可愛い子が私の兄上ことを好きになってくれているなんて光栄なことだと思うよ。だからそんな悲しそうな顔をしないでくれるかな?」
そういうと優しくマルセナを抱き寄せ頭を撫で始めた。一瞬何をされているのか理解できずボーっとする。
「あの!やめてください!」
ハッとしたマルセナはライアン王子の腕を振り払い、後ろに下がって距離を取る。その様子を見てライアン王子は再びクスリと笑う。
「恥ずかしがり屋さんだね君は。そういうところもすごく可愛らしいと思うけどね?」
また一歩近寄ってくるがマルセナはそれを遮るように口を開く。もう限界だと思ってしまったからだ。これ以上は自分を誤魔化すことも耐えられる気がしなかった。ならばハッキリさせてしまった方が楽になるのではないかと考えたのだ。
だって……私が好きなのは……
「どうして貴方がそのようなことを言うのですか?私は一度もレオンハルト王子を好きだなんて……そのような事を申しておりませんのに……」
「ああ……やっぱりそうだよね。うん知ってたよ」
「なら何故このようなことを聞くのです?まさか私をまたからかっているわけではないですよね?」
睨みつけるような視線を向けられたにも関わらず、その目を見つめ返しながら笑顔のまま返事をする。その様子にも腹立たしく感じたがそれ以上に疑問だったのは何故わざわざこんな質問をしたのかということだけだった。
「違うよ。からかってなんかいないさ。ただ私は知りたかっただけだよ。本当に君の気持ちが本物かどうかということをね?」
「どういう意味でしょうか?」
「君と私は似ている。だからこそわかることもあるということだ。君は自分の本心を押し殺してしまう傾向がある。だからこうして確かめさせてもらったんだよ。ごめんね意地悪なことをして」
「いえ、お気になさらず……ではこれでこの話は終わりですね。もう帰ってよろしいでしょうか?」
そういいながら立ち上がり帰ろうとするマルセナだったがそれを制するようにライアン王子はマルセナを止める。そしてそのままライアン王子はマルセナの手首を掴み無理やり自分の元へ引き寄せそのままベッドに押し倒す。しかしマルセナは抵抗しようとする素振りは見せなかった。
それはこれから起こる事を半ば覚悟したからでもあるだろう。もう自分には何もできないと諦めていた部分もあったかもしれない。それでもどこか心の中で期待している自分がいることにも気づいていたが、必死にそれを否定することで冷静さを保とうとする。
「やっぱり君は……素直じゃないね?」
「なら……どうするつもりですの?私は聖女ですわ」
「聖女マルセナ。もう……それが答えじゃないのかい?」
ライアン王子はそういうと聖女マルセナの吐息を感じながらその誰も触れた事のない聖女の唇を奪った。
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