追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

文字の大きさ
上 下
117 / 158
追憶の章 魔女と聖女の始まり

24. 仲間として

しおりを挟む
24. 仲間として



 私たちが麓の街ガナードについて1週間。魔法都市に向かうための資金稼ぎ、山越えの準備は着々とすすんでいる。今日もいつものようにギルドの依頼を終え、ギル坊をからかいながら宿屋の部屋にいると、突然ルナが訪ねてくる。

「ロゼッタ様。あ、あのね……ちょっといいかな?」

 部屋に入るなりそう言うと、彼女はベッドの上に座る。何やら真剣な表情でこちらを見つめている。私は首を傾げながらも、とりあえず向かい側の椅子に腰かけた。

「どうしたの?そんな深刻な顔して」

「うーん……あのさぁ……ディアナ様が最近夜な夜などこかに行っているみたいなの」

「え?ディアナが?」

「うん。朝方にすごい疲れたような足取りで帰ってくるの。私心配で……でも聞けなくて……」

「心配ですね。ロゼッタ様、何か心当たりとかあるんですか?」

 正直分からない。というかあいつに興味はない。だがここで無関心を決め込むわけにもいかないだろう。

「いや、特にないけど……」

「そっか……」

 そう言って下を向くルナ。そして意を決したように顔を上げ、私に言ってくる。

「お願い!ディアナ様に気づかれないようこっそり尾行してくれない!?」

「は?」

「だからっ!ディアナ様の後をつけてほしいの!お願いロゼッタ様!」

 泣きそうな顔になるルナ。そんな顔しないでよ……この子って意外と面倒な性格しているよね……まあ仕方ないか。一応ディアナのことだしね。

「分かったわよ。今日確認してみるから」

 私がそう答えると、途端に笑顔になりありがとうと言ってくる。ほんっと現金だなルナは。まあいいか。私はため息をつくと夜まで待ち、ディアナが宿を出た後をこっそりついていくことにした。

 どこに行くつもりなのかしら?まさか男の家に上がり込んでるとかじゃないでしょうね?……んなわけないか。あいつは聖女だしね。しばらく後をつけると、ディアナはある廃墟のような建物の前で立ち止まる。

「なに?廃墟?」

 思わず呟き、私は慌てて口を抑える。そしてゆっくりと建物の中に入っていくディアナを追いかけていった。廃墟の中に入ると、そこは薄暗く不気味な雰囲気だった。ディアナは奥へと進んでいく。すると開けたところに着く。そしてディアナは部屋の中央に立ち止まり、しばらくじっとしている。瞑想かしら?

 ……いや違う!私はディアナが何をしているか気づき、慌てて止めに入りその身体を掴む。

「バカ!あんた何やってんの!?」

「ロゼッタさん!?どうしてここに……」

 私が掴んだディアナの身体はすごい汗だくでローブまで濡れていた。

「……もうやめなさい。あんたに攻撃魔法は使えない」

「私は諦めません」

「……っ!いい加減にしなさい!あんたの女神の力を外に解放すればあんたは死ぬのよ!」

 そう。前に聞いたディアナの話。ディアナは元々身体が弱かった。女神の力を覚醒させ、体内に宿るその力で普通に動けているだけだ。もちろんあの強力な防御魔法や身体能力も。

 しかしそれは彼女の寿命を削っているのだ。このまま女神の力を解放してしまえば彼女は確実に命を落とす。それをディアナ自身も分かっているはずだ。それでもなお彼女は……

「ロゼッタさんには分かりません。私の気持ちなんて」

「分かるはずないでしょ!あんたの考えなんか!」

「なら放っておいてください。あなたが心配してくれる必要ありませんから」

 そう言うとディアナは再び魔力を高めようとする。私は舌打ちをし、無理やりディアナを抑えつける。

「いい加減にして!あんたに死なれたら困るのよ!分かってんの!?」

「なぜですか?私とあなたは聖女と魔女。本来なら相容れない存在です」

「あんたは私の仲間でしょうが!」

 そう自然と言葉が出ていた。私の言葉にディアナは目を見開き、動きを止める。

「仲間?」

「あ……いや……別に深い意味はないわ。それにギル坊やルナ。そしてメルティアだって悲しむでしょ!」

「……」

「とにかく!こんなところで無駄死にする必要はないわ!大人しく帰りましょう?」

「……分かりました。少し頭を冷やします」

 そう言ってディアナは立ち上がる。そしてこちらを見るといつものように無表情のまま私に言った。

「貸しだとは思っていませんから」

「はいはい。分かったわよ。早く帰って着替えなさい。風邪ひくわよ?」

 私がそう言うとディアナは素直にうなずき、私たちは廃墟を後にし、部屋に戻る。

「はぁ……」

 私は大きくため息をつく。ディアナにあんなこと言ったけど、私に何ができるのかしら。正直よく分からない。それにこの事はみんなに話すこと出来ないし、適当に誤魔化すことにした。

 そして次の日。私が寝ていると突然誰かに起こされる。

「いつまで寝ているのですか?」

「ふぇ?ディアナ?」

「少し私に付き合ってください。ほら行きますよ」

 そう言うとディアナは私の衣服を剥ぎ取り無理矢理着替えさせようとする。

「ちょ!ちょっと!やめて!自分でできるからっ!」

「そんな格好では外に出れません。黙って着がえて下さい」

「なんであんたが仕切ってんのよ!」

「ほら、さっさと行きますよ」

 ディアナに腕を引っ張られ、私は宿屋を出る。そしてそのまま昨日の廃墟に連れて行かれたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~

夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】 「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」 アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。 理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。 もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。 自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。 王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると 「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」 オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが…… アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。 そして今日も大きなあの声が聞こえる。 「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」 と

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

処理中です...