112 / 158
追憶の章 魔女と聖女の始まり
19. ギル坊。終わる
しおりを挟む
19. ギル坊。終わる
この街にきてもう1ヶ月がたつ。次の街への資金もたまってきているし、そろそろ移動しようかしらね。そんなことを考えながら部屋にいるとギル坊の大きなため息が聞こえてくる。
「はぁ……」
「どうしたのギル坊?というか今日はルナと一緒に依頼やらないのかしら?」
「……はい」
なんか元気ないわね……いつもならうるさいくらい張り切って依頼を受けに行くんだけどなぁ……
「何かあったの?相談に乗るわよ?」
「本当ですかロゼッタ様……?」
「ええもちろん。私を誰だと思っているの?困っている人を放っておけない優しい魔女さんよ?」
そう言って私は胸を張る。実際その通りだから間違ってはいないわよね。
「ありがとうございます。実はルナさんが最近、ボクじゃなくて違う人と依頼を受けているんですよ……」
「あら振られたのね。ドンマイ」
「やっぱり……うわーん!」
あちゃー泣いちゃった。冗談で言ったつもりだったんだけど。まぁ可愛いからいいけどさ。
「ごめんなさいギル坊。冗談よ冗談。それならルナに言えばいいじゃない?『ボク以外の人と依頼しないでください!』って?」
「そんなこと言って器の小さい男って思われて、嫌われたらどうするんですか!?もうデリカシーがないんですからロゼッタ様は!だからモテな……」
私はいつも通りアイアンクローをかます。このクソガキ……言うようになったじゃない……
「痛いですってば!離して下さいぃ~!」
「ふんっ。それで話を戻すけど、誰と依頼をしてるのよ?」
「格好いい男性です……やっぱりボクじゃ年下だし、弱いし、もうダメだ生きていけない……」
あらヤダ。失恋確定じゃない。これは面白くなってきたわね。ふむふむ。私はとりあえずギル坊から話を聞くことにした。
とりあえずギル坊の話だとその男性の名前はカイト。最近ルナがよく依頼をしてるそうだ。仕方ない。ここは私が一肌脱いでやりますか。
「それならルナの後をついていきましょ?」
「そんなストーカーみたいなことできないですよ……もう立ち上がれない。ロゼッタ様……今までありがとうございました。ううっ」
こりゃ重症ね。でもこのまま放っておくわけにもいかないし……とりあえずここにいても仕方ないので私はディアナを連れてギルドに向かうことにする。
「あの。なぜ私も行くんですか?」
「2人の恋路を応援してるんでしょ?それに聖女は悩める人を救うんじゃないの?」
「……確かにそうですね」
なんか納得してくれたわ。よし行こう。そして私たちはギルドにやってきた。ちなみにルナはすでに依頼に出ていていないようだ。とりあえず受付嬢に聞くことにする。
「すみません。ルナが何の依頼を受けたか教えてもらえますか?」
「えっと、確か鉱石採集の依頼を受けてましたよ。報酬は銀貨2枚です」
「わかりました。ありがとうございます。」
よしこれで居場所はわかったわね。あとは後をつけるだけだけど……
「あのロゼッタさん」
「なに?」
「そう言えばルナさんは昨日すごく楽しみにしてましたよ?今日は少し遅くなるかもと言っていました」
「え……マジ?」
まぁルナも16だし、それにギル坊のほうが年下だしね……うん。とりあえずルナの後を追うか。私とディアナはルナが依頼を受けている洞窟に向かうと、目の前に仲良く話しているルナが見えた。
横にいるのがカイトって言う冒険者か。確かにギル坊の話通りなかなかカッコイイ男だ。年齢は20歳ぐらいかな?身長は高くて180センチはあるだろう。髪の色は茶色で短めに切りそろえられている。顔はかなり整っていてイケメンという言葉が似合う感じだ。
「ロゼッタさん。あれがルナさんの好きな人なんですか?」
「好きかはわからないけど、最近一緒に依頼をしている男で間違いないわね。ありゃギル坊じゃ勝ち目ないかしら?」
「どうですかね?」
「ギル坊の初恋だったみたいだし、かわいそうな気もするけど……」
なんかディアナのほうが楽しんでない?まぁいいけどさ。私たちは見つからないようにこっそりと洞窟の中に入っていく。するとルナたちが鉱石を採っている姿が確認できた。その姿はとても楽しそうだ。
そしてしばらくすると、目的の鉱石が掘れたのか、2人は嬉しそうに笑っている。そして帰り支度を始めたのか荷物をまとめている。私たちも見つかる前に外に出ることにした。
「ディアナ。どう思う?」
「どうと言われても困りますが。それよりこれからどうするんですか?」
「んー。ギル坊にはそれとなく言っておくわよ」
「なんですかそれとなくとは?嘘を言うつもりですか?私は嘘は許しませんよ」
「そんなこと言ってないでしょ!ただ少し話をするだけよ!」
「それを聞いてるんですが私は?」
洞窟の入り口で私とディアナがやり合っていると、ルナたちが出てくる。
「あれ?なんか聞いた声だと思ったらロゼッタ様とディアナ様?こんなところで何してるの?」
「えっ!?あー……その」
「私とロゼッタさんは優雅にランチをした後、天気がいいので友情を深めようと散歩をしていたんです。ルナさん」
おい。嘘は許しませんよってなんだ。まぁいいや。とりあえず嫌だけどここはこいつの提案に乗っかろう。
「そ……そうよ!私たち仲良しだから!」
「いいなぁ!私もランチしてお散歩したい!」
「お仲間の方かいルナちゃん?」
「ああ。うん。魔女のロゼッタ様と聖女のディアナ様!」
「えっあなたが聖女ディアナ様ですか!?お会いできるなんて光栄です!」
なんかすごい好青年じゃない。てか私を無視するな。仕方ないけどさ。
「それじゃルナちゃん。ボクは戻るね。また機会があったらよろしく」
「うん!ありがとうカイトさん!」
「えっと……ルナは何してたのかしら?」
「この鉱石が欲しかったの!これを加工したいんだけど……この前私のリングを作ってくれた、ディアナ様のお知り合いの魔法鍛冶屋さんを紹介して!」
そう言うと私たちはメルティアの鍛冶屋に向かうことにしたのだった。
この街にきてもう1ヶ月がたつ。次の街への資金もたまってきているし、そろそろ移動しようかしらね。そんなことを考えながら部屋にいるとギル坊の大きなため息が聞こえてくる。
「はぁ……」
「どうしたのギル坊?というか今日はルナと一緒に依頼やらないのかしら?」
「……はい」
なんか元気ないわね……いつもならうるさいくらい張り切って依頼を受けに行くんだけどなぁ……
「何かあったの?相談に乗るわよ?」
「本当ですかロゼッタ様……?」
「ええもちろん。私を誰だと思っているの?困っている人を放っておけない優しい魔女さんよ?」
そう言って私は胸を張る。実際その通りだから間違ってはいないわよね。
「ありがとうございます。実はルナさんが最近、ボクじゃなくて違う人と依頼を受けているんですよ……」
「あら振られたのね。ドンマイ」
「やっぱり……うわーん!」
あちゃー泣いちゃった。冗談で言ったつもりだったんだけど。まぁ可愛いからいいけどさ。
「ごめんなさいギル坊。冗談よ冗談。それならルナに言えばいいじゃない?『ボク以外の人と依頼しないでください!』って?」
「そんなこと言って器の小さい男って思われて、嫌われたらどうするんですか!?もうデリカシーがないんですからロゼッタ様は!だからモテな……」
私はいつも通りアイアンクローをかます。このクソガキ……言うようになったじゃない……
「痛いですってば!離して下さいぃ~!」
「ふんっ。それで話を戻すけど、誰と依頼をしてるのよ?」
「格好いい男性です……やっぱりボクじゃ年下だし、弱いし、もうダメだ生きていけない……」
あらヤダ。失恋確定じゃない。これは面白くなってきたわね。ふむふむ。私はとりあえずギル坊から話を聞くことにした。
とりあえずギル坊の話だとその男性の名前はカイト。最近ルナがよく依頼をしてるそうだ。仕方ない。ここは私が一肌脱いでやりますか。
「それならルナの後をついていきましょ?」
「そんなストーカーみたいなことできないですよ……もう立ち上がれない。ロゼッタ様……今までありがとうございました。ううっ」
こりゃ重症ね。でもこのまま放っておくわけにもいかないし……とりあえずここにいても仕方ないので私はディアナを連れてギルドに向かうことにする。
「あの。なぜ私も行くんですか?」
「2人の恋路を応援してるんでしょ?それに聖女は悩める人を救うんじゃないの?」
「……確かにそうですね」
なんか納得してくれたわ。よし行こう。そして私たちはギルドにやってきた。ちなみにルナはすでに依頼に出ていていないようだ。とりあえず受付嬢に聞くことにする。
「すみません。ルナが何の依頼を受けたか教えてもらえますか?」
「えっと、確か鉱石採集の依頼を受けてましたよ。報酬は銀貨2枚です」
「わかりました。ありがとうございます。」
よしこれで居場所はわかったわね。あとは後をつけるだけだけど……
「あのロゼッタさん」
「なに?」
「そう言えばルナさんは昨日すごく楽しみにしてましたよ?今日は少し遅くなるかもと言っていました」
「え……マジ?」
まぁルナも16だし、それにギル坊のほうが年下だしね……うん。とりあえずルナの後を追うか。私とディアナはルナが依頼を受けている洞窟に向かうと、目の前に仲良く話しているルナが見えた。
横にいるのがカイトって言う冒険者か。確かにギル坊の話通りなかなかカッコイイ男だ。年齢は20歳ぐらいかな?身長は高くて180センチはあるだろう。髪の色は茶色で短めに切りそろえられている。顔はかなり整っていてイケメンという言葉が似合う感じだ。
「ロゼッタさん。あれがルナさんの好きな人なんですか?」
「好きかはわからないけど、最近一緒に依頼をしている男で間違いないわね。ありゃギル坊じゃ勝ち目ないかしら?」
「どうですかね?」
「ギル坊の初恋だったみたいだし、かわいそうな気もするけど……」
なんかディアナのほうが楽しんでない?まぁいいけどさ。私たちは見つからないようにこっそりと洞窟の中に入っていく。するとルナたちが鉱石を採っている姿が確認できた。その姿はとても楽しそうだ。
そしてしばらくすると、目的の鉱石が掘れたのか、2人は嬉しそうに笑っている。そして帰り支度を始めたのか荷物をまとめている。私たちも見つかる前に外に出ることにした。
「ディアナ。どう思う?」
「どうと言われても困りますが。それよりこれからどうするんですか?」
「んー。ギル坊にはそれとなく言っておくわよ」
「なんですかそれとなくとは?嘘を言うつもりですか?私は嘘は許しませんよ」
「そんなこと言ってないでしょ!ただ少し話をするだけよ!」
「それを聞いてるんですが私は?」
洞窟の入り口で私とディアナがやり合っていると、ルナたちが出てくる。
「あれ?なんか聞いた声だと思ったらロゼッタ様とディアナ様?こんなところで何してるの?」
「えっ!?あー……その」
「私とロゼッタさんは優雅にランチをした後、天気がいいので友情を深めようと散歩をしていたんです。ルナさん」
おい。嘘は許しませんよってなんだ。まぁいいや。とりあえず嫌だけどここはこいつの提案に乗っかろう。
「そ……そうよ!私たち仲良しだから!」
「いいなぁ!私もランチしてお散歩したい!」
「お仲間の方かいルナちゃん?」
「ああ。うん。魔女のロゼッタ様と聖女のディアナ様!」
「えっあなたが聖女ディアナ様ですか!?お会いできるなんて光栄です!」
なんかすごい好青年じゃない。てか私を無視するな。仕方ないけどさ。
「それじゃルナちゃん。ボクは戻るね。また機会があったらよろしく」
「うん!ありがとうカイトさん!」
「えっと……ルナは何してたのかしら?」
「この鉱石が欲しかったの!これを加工したいんだけど……この前私のリングを作ってくれた、ディアナ様のお知り合いの魔法鍛冶屋さんを紹介して!」
そう言うと私たちはメルティアの鍛冶屋に向かうことにしたのだった。
21
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる