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追憶の章 魔女と聖女の始まり
16. 初めての感情
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16. 初めての感情
魔法鍛冶屋……ふーん……ルナより小さいわね。こんな子がこの店を切り盛りしているなんて……というか店なのここ?
私はそんな事を考えながら、興味ありげに彼女を見つめる。そんな私に気づいたのか、少女はこちらに目を向けると、慌てたように頭を下げてきた。
「あっあの!はじめまして!もしかしてその魔力は魔女様ですか!?」
「ええ。そうだけど?」
「すごいです!本物に会えるなんて!あの私はメルティアです!」
その場でピョンピョン跳ねている。なんだこいつ……
「ディアナ……なんなのよこの子?」
「素晴らしい腕利きの魔法鍛冶屋さんです。あのメルティアさん。お願いしたいものがあります。素材は買ってきたので」
「どれどれ?見させてもらってもいいかな?」
「ええ。もちろんです」
ディアナはそう言うと、持っていた荷物を床に置いた。そして袋の中から素材を次々取り出す。
「ふむふむ。なるほど補助系の防具を作ってほしいんだね?どんなのがいい?」
「1人は男の子なので腕輪型で、もう1人は女の子なのでリングがいいですね。お願いします」
「え?それってギル坊とルナのために……?でもどうして?」
「仲間ですから。2人の力になりたかったんです。いけませんか?」
意外だ。本当にこいつは私たちのことを信頼してくれているのかもしれないわね。
「ロゼッタさん。細かい注文は任せます。あなたのほうがお二人のことは詳しいですよね?」
「はいはい。ギル坊は風の魔法詠唱が速くなるものがいいわね。それとルナは攻撃の感知能力が上がるものがいいわ」
「はいは~い。今作りますから待ってて下さいね!」
メルティアは工房に下がり、私が言った通りのものを作り始めた。私はその様子を見ながらディアナに話しかける。
「ねぇディアナ。あんたってさ、いつもそうなの?」
「どういう意味ですか?」
「だからその……何で私に言わないのよ?ギル坊やルナの為なら言ってくれればいいじゃない?」
「言ったほうがよろしかったですか?」
無表情のまま首をかしげるディアナ。私はそんな彼女に少しイラっとしながら言葉を続ける。
「だから……それは……まぁ……ちょっとくらい教えてくれてもよかったんじゃないかなって思っただけよ……」
「そうですか。では、これからはそうすることにします」
こいつの言い方ムカつくわね……私はそんなことを思いながら、チラッと彼女の顔を見る。するとディアナはそんな私の視線に気づいているのかいないのか、こちらをジッと見つめていた。
「な、なによ?」
「いえ、別に何もありません」
なんなのよ……私がモヤモヤとした気持ちを抱えていると、突然メルティアが大きな声を上げた。
「出来たよ!はい!」
「ありがとうございます。メルティアさん。助かりました」
「うん!じゃあまた来てね!今度はゆっくりお話ししようね!」
「はい。ぜひ」
「ばいばーい!また来てねー!!」
元気よく手を振るメルティアに手を振り返すディアナ。私たちは魔法鍛冶屋を出ると、そのまま宿屋に戻ることにする。こいつが2人のことを考えていたなんて驚きだけど、結果的に良い買い物ができたわね。まぁ……全部私の自腹なんだけどね
「さて、宿に戻りましょうか。ロゼッタさん」
「そうね。そろそろ戻らないと心配するだろうしね」
私はディアナの言葉に同意し、そのまま歩き始める。相変わらず無表情ね……でも、出来上がった魔法具を抱えてる姿は少しだけ嬉しそうに見えるし、やっぱり感情はあるのかしら?
「ロゼッタさん」
「なっなに?」
「今、『こいつ感情あるのかしら』とか思ってましたね。あなたはすぐに顔に出るから分かります。失礼な人です」
「な、なな!違うわよ!そんなこと全然考えてないし!」
私は慌てて否定するが、彼女はそんな私を無視して淡々と言葉をつづけた。
「感情があるのかと聞かれればあります。喜怒哀楽だって普通に感じますし、嬉しい時は喜びもします。でも、それが表に出ないだけです。それだけです」
「……そう」
「ロゼッタさん。私はあなたのそう言うところが嫌いです」
「悪かったわね!」
いきなり何を言ってんのよこいつ!?私は思わず大きな声でそう叫ぶ。するとディアナはそんな私を見て、初めて声を出してクスリと笑った。
「ふふっ」
「な、なに笑ってるのよ!」
「いえ。ただロゼッタさんは面白いなと思いまして」
「な、なによそれ!馬鹿にしてるの!?」
ディアナは少し早歩きになり前に行き振り向き私に話す。
「いいえ。褒めているんですよ」
「嘘つけ!絶対バカにしているでしょ!」
「いいえ。してませんよ。本当です」
そう言いながら笑うディアナ。本当にこいつって分からないわ……私はそんな事を考えながらため息をつきながら宿屋に戻るのだった。
魔法鍛冶屋……ふーん……ルナより小さいわね。こんな子がこの店を切り盛りしているなんて……というか店なのここ?
私はそんな事を考えながら、興味ありげに彼女を見つめる。そんな私に気づいたのか、少女はこちらに目を向けると、慌てたように頭を下げてきた。
「あっあの!はじめまして!もしかしてその魔力は魔女様ですか!?」
「ええ。そうだけど?」
「すごいです!本物に会えるなんて!あの私はメルティアです!」
その場でピョンピョン跳ねている。なんだこいつ……
「ディアナ……なんなのよこの子?」
「素晴らしい腕利きの魔法鍛冶屋さんです。あのメルティアさん。お願いしたいものがあります。素材は買ってきたので」
「どれどれ?見させてもらってもいいかな?」
「ええ。もちろんです」
ディアナはそう言うと、持っていた荷物を床に置いた。そして袋の中から素材を次々取り出す。
「ふむふむ。なるほど補助系の防具を作ってほしいんだね?どんなのがいい?」
「1人は男の子なので腕輪型で、もう1人は女の子なのでリングがいいですね。お願いします」
「え?それってギル坊とルナのために……?でもどうして?」
「仲間ですから。2人の力になりたかったんです。いけませんか?」
意外だ。本当にこいつは私たちのことを信頼してくれているのかもしれないわね。
「ロゼッタさん。細かい注文は任せます。あなたのほうがお二人のことは詳しいですよね?」
「はいはい。ギル坊は風の魔法詠唱が速くなるものがいいわね。それとルナは攻撃の感知能力が上がるものがいいわ」
「はいは~い。今作りますから待ってて下さいね!」
メルティアは工房に下がり、私が言った通りのものを作り始めた。私はその様子を見ながらディアナに話しかける。
「ねぇディアナ。あんたってさ、いつもそうなの?」
「どういう意味ですか?」
「だからその……何で私に言わないのよ?ギル坊やルナの為なら言ってくれればいいじゃない?」
「言ったほうがよろしかったですか?」
無表情のまま首をかしげるディアナ。私はそんな彼女に少しイラっとしながら言葉を続ける。
「だから……それは……まぁ……ちょっとくらい教えてくれてもよかったんじゃないかなって思っただけよ……」
「そうですか。では、これからはそうすることにします」
こいつの言い方ムカつくわね……私はそんなことを思いながら、チラッと彼女の顔を見る。するとディアナはそんな私の視線に気づいているのかいないのか、こちらをジッと見つめていた。
「な、なによ?」
「いえ、別に何もありません」
なんなのよ……私がモヤモヤとした気持ちを抱えていると、突然メルティアが大きな声を上げた。
「出来たよ!はい!」
「ありがとうございます。メルティアさん。助かりました」
「うん!じゃあまた来てね!今度はゆっくりお話ししようね!」
「はい。ぜひ」
「ばいばーい!また来てねー!!」
元気よく手を振るメルティアに手を振り返すディアナ。私たちは魔法鍛冶屋を出ると、そのまま宿屋に戻ることにする。こいつが2人のことを考えていたなんて驚きだけど、結果的に良い買い物ができたわね。まぁ……全部私の自腹なんだけどね
「さて、宿に戻りましょうか。ロゼッタさん」
「そうね。そろそろ戻らないと心配するだろうしね」
私はディアナの言葉に同意し、そのまま歩き始める。相変わらず無表情ね……でも、出来上がった魔法具を抱えてる姿は少しだけ嬉しそうに見えるし、やっぱり感情はあるのかしら?
「ロゼッタさん」
「なっなに?」
「今、『こいつ感情あるのかしら』とか思ってましたね。あなたはすぐに顔に出るから分かります。失礼な人です」
「な、なな!違うわよ!そんなこと全然考えてないし!」
私は慌てて否定するが、彼女はそんな私を無視して淡々と言葉をつづけた。
「感情があるのかと聞かれればあります。喜怒哀楽だって普通に感じますし、嬉しい時は喜びもします。でも、それが表に出ないだけです。それだけです」
「……そう」
「ロゼッタさん。私はあなたのそう言うところが嫌いです」
「悪かったわね!」
いきなり何を言ってんのよこいつ!?私は思わず大きな声でそう叫ぶ。するとディアナはそんな私を見て、初めて声を出してクスリと笑った。
「ふふっ」
「な、なに笑ってるのよ!」
「いえ。ただロゼッタさんは面白いなと思いまして」
「な、なによそれ!馬鹿にしてるの!?」
ディアナは少し早歩きになり前に行き振り向き私に話す。
「いいえ。褒めているんですよ」
「嘘つけ!絶対バカにしているでしょ!」
「いいえ。してませんよ。本当です」
そう言いながら笑うディアナ。本当にこいつって分からないわ……私はそんな事を考えながらため息をつきながら宿屋に戻るのだった。
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