追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

文字の大きさ
上 下
108 / 158
追憶の章 魔女と聖女の始まり

15. 買い物に付き合って

しおりを挟む
15. 買い物に付き合って



 私は今日は宿屋の部屋でゆっくり休ませてもらっている。最近、強力な魔法を使いすぎているせいか、少し身体がダルいからだ。

「うぅ~ん……ベッドで昼寝するのは気持ちいいわね……」

 目を閉じてゴロゴロと転がる私の頭の中に、ふとある考えが浮かんできた。

「早くギル坊やルナが強くなってくれると助かるんだけどね……」

 そう呟きながら寝返りをうつ私だったが、その時だった……突然、部屋の扉の方からガチャリという音が聞こえたのだ。私は慌てて起き上がり、その扉の方に目を向ける。するとそこには、なぜか無表情な顔つきのディアナがいた。彼女はそのままスタスタと歩いて部屋の中へと入ってくる。

「ちょ、ちょっと!勝手に入ってこないでよ!」

 私はそう言ってベッドの上に置いてあった枕を掴み取り、それをディアナに向かって投げつける。しかし、ディアナはそれをヒョイっと避けると、相変わらずの無表情のまま私に近づいてきた。そして私の目の前まで来ると、そこでピタリと立ち止まる。

「……」

「な、何よ?そんな怖い顔をして……」

「怖い顔?そんな顔していませんが?」

「じゃあなんでそんな怒ったような顔をしているわけ!?」

 私がそう叫ぶと、ディアナはジッと私の顔を見つめてきた。そしてゆっくりと口を開く。

「怒ってなんかいないですよ。ロゼッタさんに買い物に付き合ってもらおうと思いまして。荷物持ちです」

「……はぁ?」

 私はポカンとした表情を浮かべると、そのまま首を傾げた。買い物?な、なんだって急に……?戸惑う私を見てもなお、ディアナは無言のままこちらを見続けている。どうやら本当に買い物に行こうとしているようだ。

 ま、まあいいわ……。こいつが何を考えているのか分からないけど、別に断る理由はない。荷物持ちはしないけど。私は小さくため息をつくと、仕方なしに彼女の提案に乗ることにした。

「分かったわよ。着替えるから待っていてちょうだい」

「はい。分かりました」

 私は立ち上がり着替えようとするが、ディアナが部屋を出ていかない。なんなのこいつ……

「ほら。着替えるから出ていきなさいよ?」

「なぜですか?私は女性ですが?」

「それは知ってるけどさ……その恥ずかしいでしょ?一応さ」

「私よりスタイルが良くないからですか?特に胸あたりとか?」

「はぁ!?そういうことじゃないわよ!もういいわよ!」

 私は大きな声を出すと、急いで服を脱ぎ始める。着替え終わると、ディアナと一緒に街へと向かった。こいつ、いつか燃やしてやるわ!

 街に出ると、相変わらず色々なお店があり、たくさんの人が行き交っていた。そんな街の光景を見ながら、ディアナと2人で並んで歩く。ディアナは特に何も言わず黙ったままだ。私は少し気まずく感じながらも、彼女に話しかけることにした。

「ねぇ。それでどこに行けばいいわけ?」

「その前に。ロゼッタさん。少しお金を借りてもよろしいですか?」

「はい?どういう意味よ?」

「言葉通りの意味です。今から行くところで必要なのです」

「だからそれがどこなのか聞いているんだけど?」

「魔法道具屋です。行きましょう」

 そう言うと私の腕を引っ張り、ディアナはズンズンと歩き始めた。私はそんな彼女に引きづられるように付いていく。魔法道具?聖女のこいつに何か必要なの?ディアナの行動がよく分からないまま、私は目的の場所へと向かうのであった。

 ディアナに連れられてやって来た場所は『マジック・ショップ』と書かれた看板がある建物だった。建物の外観は普通の民家にしか見えないが、中に入ると広い空間になっており、様々な種類の商品が置かれていることが分かる。

 店内には私たち以外にも何人か客がいるようで、皆それぞれ欲しいものを物色していた。私はそんな人たちの邪魔にならないよう、ディアナと共に店の隅に移動する。するとディアナは棚に置いてある商品を手に取った。

「これとこれを下さい。あとこれも」

 ディアナはそう言いながら、次々と棚にある商品を取っていった。私はその様子を見て、思わずギョッとする。

「ちょ、ちょっと!あんたどれだけ買うつもりなの!?」

「えっ?全部買いますけど?」

「はぁ!?」

 私の驚きの声に、他の客たちがこちらに視線を向けた。しかしディアナは全く気にする様子もなく、淡々と会計を進めていく。結局彼女は合計3つの袋を持って店を出ていった。

「ふぅ……やっと終わったか。あとでお金返しなさいよね?」

「はい。ただ……まだ貸してもらえますか?次のお店で使うので」

「次って……まだ買い物するつもりなの?」

「当然です。次は魔法鍛冶屋に行きますよ」

 当然ですってなんなのこいつ。私のお金なのよ!本当に何がしたいのかしら?私がそんなことを考えていると、ディアナはまた私の手を引っ張ってきた。

「早くしてください。置いていきますよ?」

「はいはい……もう好きにすればいいわ……」

 私は諦めたような表情を浮かべると、彼女の後に続いて魔法鍛冶屋に向かうのであった。そしてやってきたのは古びた一軒家である。ディアナは躊躇することなく扉を開けると、そのままズカズカと家の中に入っていった。

「ごめんください。いますか?」

 ディアナがそう言って奥に向かって声を掛けるが、返事はない。

「誰もいないみたいね。どうしようかしら……」

 私がそう呟いた時、突然後ろから小さな足音が聞こえてきた。振り返るとそこには、背の小さな女の子の姿があった。彼女はディアナの顔を見ると、驚いた顔をして近づいてくる。

「あ、あれ!?なんでディアナ様がここに!?」

「お久しぶりですね。メルティアさん。あなたがこの街にいることは知っていましたよ」

「知り合いなの?」

「はい。彼女はメルティアさん優秀な魔法鍛冶屋さんです」

 魔法鍛冶屋……ふーん。ルナより小さいわね。こんな子がこの店を切り盛りしているなんて……というか店なのここ?こうして、私はディアナに連れられて魔法鍛冶屋に来たのだった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...