追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

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追憶の章 魔女と聖女の始まり

9. 自己満足です

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9. 自己満足です



 天気は快晴。出発日和!私たちは北にあるという魔法都市に向かって、魔導都市リーベル・アイルを発つことになった。

「まさか聖女ディアナ様と旅ができるなんて夢みたいです!」

「あら良かったわねギル坊?大好きな胸の大きな女性が増えて?」

「ちっ違いますよロゼッタ様!やめてくださいよ!」

 私がギル坊をからかうのを見て、ディアナが無表情で話す。

「ギルフォードさん。女性は胸の大きさじゃありませんよ?ロゼッタさんのように一生懸命生きている人もいます」

「えっ!?あっはい……すみません……」

 こら否定しろ!私は普通だ。なんかさらっとひどいこと言われたけどさ……まぁいいや。

「あのロゼッタ様。とりあえずどこに向かうの?」

「特に決めてなかったわ。私も初めて行く場所だし、適当にぶらついて良さそうな町があったらそこに泊まるって感じかしらねぇ~」

 そう話しながら私たちは歩き出す。今日は晴れているとはいえ風が強く、少し肌寒いくらいだった。しばらく歩くと、目の前に大きな湖が見えてきた。

「うわ~綺麗な湖~!」

 ルナが目を輝かせながら言った。

「少し休憩にしませんかロゼッタ様?」

「そうね。ちょうどお昼時だし。ここでご飯を食べましょうか、じゃあ食糧を確保しに行こうかしらね」

「じゃあボクとルナさんであそこの森で狩りをしてきます!いいですかルナさん?」

「うん。いいよ。行こうか!」

「ルナに変なことするんじゃないわよギル坊?」

「しませんよ!もう!」

 そんな会話をしながら二人は森の中へ消えていった。っで。私はまたこいつと一緒になってしまうわけだ。

「ロゼッタさん。私は火でも起こせばいいですか?」

「火なら私が魔法でできるわよ。あんたは2人が戻るまで適当にしてれば?」

「わかりました。そうします」

 ディアナは私の横に座ると、カバンの中から赤い本を取り出し何かを書き始めた。日記かしら?と思いながら横目で見ていると、ディアナが口を開いた。

「気になりますか?これは日記ですよ。私はいつもこれを持ち歩いてるんです。その方が生きた証を忘れずに済むので……」

「ふーん。マメね。優秀な聖女様は違うわね?」

「そんなことありません……そうだ。1つお話しましょう。昔のことです。シェルタバードという街に一人の女の子がいました。その子はとても病弱で外に出ることはほとんどありませんでした。その女の子はおそらく大人になることはないと……余命宣告を受けていました。しかしある日のことです。彼女は女神からの力が覚醒したのです。それは奇跡。それから体調も良くなり『聖女』として生きていくことになった……そして無事に20歳を迎えている」

「……なんでそれを私に言うのよ?」

「なぜでしょうか。あなたに私の事を知ってほしいのかもしれません」

 そういうディアナは相変わらず無表情だけど、どこか寂しげな雰囲気をまとっていた。

 そしてしばらくするとギル坊とルナが仲良く戻ってくる。えっと獲物は……イノシシかな?結構大きいやつを仕留めてきてくれたようだ。ルナは手際よく解体していく。血抜きして内臓を抜いて……なんか手慣れてるんだけど……

「ルナ。ずいぶん手慣れてるわね?」

「うん。修行で野営なんかも良くしていたから、慣れちゃった」

「へぇ~すごいじゃない!ギル坊には出来なそうだけど?」

「ロゼッタ様だって出来ないですよね?」

 私はギル坊にアイアンクローをくらわせる。こいつ最近私に逆らってばかりだよね?

「痛いです!ギブアップ!」

「ふんっ。次逆らったら承知しないんだからね?」

 私は手を離すと、ディアナが口を開く。

「あのロゼッタさん。もしよろしければ私が料理いたしましょうか?あなた不得意そうなので」

 こら。あんたも私のアイアンクローくらいたいのかしら?料理に得意も不得意もないでしょ。レシピ通り作れば誰でも同じように作れるわよ!私はディアナを睨むと、なぜかディアナもこちらを見つめてくる。

「何よ?」

「……本当にできないんですか?良かったら教えますが?」 

 余計なお世話だ!なんでこいつマウント取ってくるのよ気に入らないわね。

「ルナ。私が料理作ってあげるからね」

「え?いいの!?やったぁ~ありがとうロゼッタ様!」

「ふふ。任せなさい!」

「ボクはディアナ様の料理が食べたかったです……」

「仕方ないわね。ギル坊には特別に私の手料理をいっぱい食べさせてあげるから。残したら灰にするわよ?」

「はい……喜んでいただきます」

 そして私はそのまま料理を作ることにする。まぁ適当に簡単なものでいいわよね。するとディアナがまた変な口出しをしてくる。

「はぁ……あのロゼッタさん?料理というのは、その地方特有の味付けがあります。その地域の季節や気候に合わせて、味付けや火加減、それこそ切り方も変えて素材特有の最善な調理を……」

「うるさいわね!じゃああんたが作ればいいじゃない!」

「……作るといいましたが?」

 本当にムカつくわねコイツ……もう無視しよ。そのあとも私が作った料理を食べながら、ディアナはガタガタ言っていたけど、みんなで楽しく食べることができた。その日は結局その場所でギル坊やルナの特訓などをして1日過ごし、野営をすることにした。

 ギル坊とルナは疲れてしまったのかもう寝てしまっている。私は焚き火を見ながらふと目線を奥のディアナに向けると、あの赤い本に日記を書いていた。

「ねぇあんた。その日記どうするつもりなの?」

「そうですね。特に考えてはいませんが、いつか誰かがこれを見て、私の意志を継いでくれたらいいなと思っています。そのためにかなり古い言語で書いてるんですけどね。」

「は?それじゃ発見されても読めないじゃない」

「見つかっても熱心な学者かあるいは……私と同じ優秀で、本の知識が豊富な聖女様くらいですかね?そのくらいの人じゃないと、この日記は相応しくありませんから?」

「あほらし。ただの自己満足じゃない」

「はい。自己満足です」

 そう言ったディアナはいつものように無表情だったけど、どことなく微笑んでいるようにも見えたのだった。
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