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第2章 聖女。灼熱の王国を駆け巡るのです!
9. 舞踏会 ~マルセナside~
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9. 舞踏会 ~マルセナside~
聖女マルセナは隣国のランバート王国の第二王子ライアン=ランバートの元で住み込みで働くことになった。それは遠回しに自分の失態のせいでカトリーナ教会の経営が傾いたから自分で何とかしろ。ということに他ならない。アリーゼならばうまくやっていたという事実と比較されていた。
新しい仕事場の王宮に着いた時には、広すぎて自分の部屋にたどり着くのに一苦労で慣れるまで時間がかかりそうだったが、意外にもすぐに慣れた。
肝心の仕事は王国が経営をしている孤児院の孤児の世話が主だったが、王宮内の来賓のお茶だしや話相手などの仕事もあった。
特に貴族のご婦人方は噂話が大好きなので退屈しないしむしろ楽しかったくらいだ。しかし忙しい毎日を過ごすうちに気が付けば半月もたっていた……
(今日は王城での舞踏会があったわね。私は一応ライアン王子のお付きの聖女として参加する予定だったわね)
聖女マルセナは今日の予定を頭の中で思い浮かべながら身支度を整えるために部屋へと向かった。
そして舞踏会の時間がくる。聖女マルセナは一応聖女という立場もあるので派手には着飾ることはなかった。白いドレスに身を包み化粧はあまりせずにいつもの長い金髪を更に綺麗に軽く髪を巻いただけの髪型だった。
本当ならもう少し派手な格好をしたいのだが今は違う目的でこの場に来ていたから。そして会場に入りライアン王子を探す。
そして聖女マルセナの視線の先に人だかりができている。第一王子レオンハルトだ。
(さすがシュタイン帝国との戦争に勝利したお方だけあって素敵な男性でカッコいいですわね。人気があるのもわかりますわ。ライアン王子とは大違い)
そんなことを思ってみていると一瞬目が合う。その瞬間ゾクリとした感覚に陥る。何故かわからないがその瞳からは冷徹な感じを受けたのだ。まるで獲物を見つけたようなそんな目付きのように思えた。
(あの方に近づかないほうが良さそうなことだけはわかるわ)
ただでさえ今は自分の身分では普通に話などできない存在なのだ。それに周りの取り巻きに変な誤解をされても迷惑なだけだ。それよりも今は目当てのライアン王子がいないことに焦りを感じ始める。しばらく会場を探したがどこにも見当たらない。
(もう!私は何のために舞踏会にきたんですの!?早く見つけないと)
それから更に探し回り疲れてきた時やっとその姿を発見することができた。どう見ても酔っぱらっているようだ。周りの貴族達に絡まれて困っているようにみえたので急いで駆け寄った。
「すみません私が代わりに謝らせていただきます」
「おお~これは可愛らしいレディじゃのう」
「ずいぶん美人さんだなぁ」
よしこれでなんとか解放してもらえると思ったその時急に手を引っ張られたと思いきや……
「きゃあ!」
そのまま酔っ払った1人の貴族に床に押し倒されてしまう。掴まれた手を離さないどころかさらに力をいれられてしまったようで抜け出すことは困難になった。
悲鳴をあげ助けを求めたが誰も聞いてくれなかったようだったので仕方なく聖魔法で実力行使に出ようとしたその時、酔っぱらっていたライアン王子が自分の上に乗っかかっている男の手首を掴み捻じり上げたことで解放された。
「ギャア~ッ」
男の腕から抜け出すことに成功した。ただ勢いがありすぎたのか男が転げまわる結果になってしまったことは申し訳なかったと思っている。だがこちらも無事では済まなかったので文句のひとつぐらい言わせて欲しいものだと思っていたところ再び強い力で引き寄せられた。
「大丈夫か?聖女マルセナ様?」
はっ?えぇ~~っと待って……なんなんですのこの状況!?……何故抱き締められているんですの私……
混乱しながらも必死に「落ち着け落ち着くのよ自分」と自分に言い聞かせ冷静になる努力をすることにする。だってこのままだとまずいですわよね、いくらなんでも相手が王子様なんて……
「助けていただいてありがとうございます。でも少し放していただけると助かるのですけれども……」
聖女マルセナの鼓動が速くなる。とりあえず離れてほしい旨を伝えることにした。するとライアン王子はこう言う。
「どうしてだい?私は君が気にいってるのだが?この状況で放すという選択肢はないな?」
「!?酔ったふりをしてたんですの!?最低ですわ!」
「いや……酔っているよ?」
こんな場所で騒動を起こした日には命がないかもしれないと考えてパニックになりそうなところにまた引き寄せられる力が強くなる。このままじゃ……唇が……
「ちょっ……ライアン=ランバート!放しなさい!いい加減にしないと聖魔法でその腕を折りますわよ!」
そうライアン王子に言い放つ。するとライアン王子が笑いながら聖女マルセナに伝える。
「聖魔法で腕を折るか。それは困るな。ふっ……やっと素の君が見れたかな?」
すると身体をはなす。そして聖女マルセナは顔と身体が一気に熱くなる。
「かっからかったんですの!?」
「からかう?言っただろう。私は君が気にいっていると。それとやっぱりそのままの君のほうが凄い魅力的だよ?聖女マルセナ様。それに聖女アリーゼ様ならこんな事くらい余裕で対応できる。まぁ少しは君も成長しているってことかな。はっはっは」
そう告げるとライアン王子は舞踏会に戻っていく。なんですの……私をからかって……その後暫くその場に立ち尽くしてしまった。
しばらくして正気に戻ると舞踏会に戻り、慌てて他の招待客にも謝罪しながら歩き出す。そして聖女マルセナは先程のことを思い返してみるが思考能力が低下していく。
もしかしたらアリーゼならうまくかわせたのか?逆に余裕綽々で対応したのかも。やはり聖女マルセナはアリーゼとの違いに負い目を感じるのだった。
聖女マルセナは隣国のランバート王国の第二王子ライアン=ランバートの元で住み込みで働くことになった。それは遠回しに自分の失態のせいでカトリーナ教会の経営が傾いたから自分で何とかしろ。ということに他ならない。アリーゼならばうまくやっていたという事実と比較されていた。
新しい仕事場の王宮に着いた時には、広すぎて自分の部屋にたどり着くのに一苦労で慣れるまで時間がかかりそうだったが、意外にもすぐに慣れた。
肝心の仕事は王国が経営をしている孤児院の孤児の世話が主だったが、王宮内の来賓のお茶だしや話相手などの仕事もあった。
特に貴族のご婦人方は噂話が大好きなので退屈しないしむしろ楽しかったくらいだ。しかし忙しい毎日を過ごすうちに気が付けば半月もたっていた……
(今日は王城での舞踏会があったわね。私は一応ライアン王子のお付きの聖女として参加する予定だったわね)
聖女マルセナは今日の予定を頭の中で思い浮かべながら身支度を整えるために部屋へと向かった。
そして舞踏会の時間がくる。聖女マルセナは一応聖女という立場もあるので派手には着飾ることはなかった。白いドレスに身を包み化粧はあまりせずにいつもの長い金髪を更に綺麗に軽く髪を巻いただけの髪型だった。
本当ならもう少し派手な格好をしたいのだが今は違う目的でこの場に来ていたから。そして会場に入りライアン王子を探す。
そして聖女マルセナの視線の先に人だかりができている。第一王子レオンハルトだ。
(さすがシュタイン帝国との戦争に勝利したお方だけあって素敵な男性でカッコいいですわね。人気があるのもわかりますわ。ライアン王子とは大違い)
そんなことを思ってみていると一瞬目が合う。その瞬間ゾクリとした感覚に陥る。何故かわからないがその瞳からは冷徹な感じを受けたのだ。まるで獲物を見つけたようなそんな目付きのように思えた。
(あの方に近づかないほうが良さそうなことだけはわかるわ)
ただでさえ今は自分の身分では普通に話などできない存在なのだ。それに周りの取り巻きに変な誤解をされても迷惑なだけだ。それよりも今は目当てのライアン王子がいないことに焦りを感じ始める。しばらく会場を探したがどこにも見当たらない。
(もう!私は何のために舞踏会にきたんですの!?早く見つけないと)
それから更に探し回り疲れてきた時やっとその姿を発見することができた。どう見ても酔っぱらっているようだ。周りの貴族達に絡まれて困っているようにみえたので急いで駆け寄った。
「すみません私が代わりに謝らせていただきます」
「おお~これは可愛らしいレディじゃのう」
「ずいぶん美人さんだなぁ」
よしこれでなんとか解放してもらえると思ったその時急に手を引っ張られたと思いきや……
「きゃあ!」
そのまま酔っ払った1人の貴族に床に押し倒されてしまう。掴まれた手を離さないどころかさらに力をいれられてしまったようで抜け出すことは困難になった。
悲鳴をあげ助けを求めたが誰も聞いてくれなかったようだったので仕方なく聖魔法で実力行使に出ようとしたその時、酔っぱらっていたライアン王子が自分の上に乗っかかっている男の手首を掴み捻じり上げたことで解放された。
「ギャア~ッ」
男の腕から抜け出すことに成功した。ただ勢いがありすぎたのか男が転げまわる結果になってしまったことは申し訳なかったと思っている。だがこちらも無事では済まなかったので文句のひとつぐらい言わせて欲しいものだと思っていたところ再び強い力で引き寄せられた。
「大丈夫か?聖女マルセナ様?」
はっ?えぇ~~っと待って……なんなんですのこの状況!?……何故抱き締められているんですの私……
混乱しながらも必死に「落ち着け落ち着くのよ自分」と自分に言い聞かせ冷静になる努力をすることにする。だってこのままだとまずいですわよね、いくらなんでも相手が王子様なんて……
「助けていただいてありがとうございます。でも少し放していただけると助かるのですけれども……」
聖女マルセナの鼓動が速くなる。とりあえず離れてほしい旨を伝えることにした。するとライアン王子はこう言う。
「どうしてだい?私は君が気にいってるのだが?この状況で放すという選択肢はないな?」
「!?酔ったふりをしてたんですの!?最低ですわ!」
「いや……酔っているよ?」
こんな場所で騒動を起こした日には命がないかもしれないと考えてパニックになりそうなところにまた引き寄せられる力が強くなる。このままじゃ……唇が……
「ちょっ……ライアン=ランバート!放しなさい!いい加減にしないと聖魔法でその腕を折りますわよ!」
そうライアン王子に言い放つ。するとライアン王子が笑いながら聖女マルセナに伝える。
「聖魔法で腕を折るか。それは困るな。ふっ……やっと素の君が見れたかな?」
すると身体をはなす。そして聖女マルセナは顔と身体が一気に熱くなる。
「かっからかったんですの!?」
「からかう?言っただろう。私は君が気にいっていると。それとやっぱりそのままの君のほうが凄い魅力的だよ?聖女マルセナ様。それに聖女アリーゼ様ならこんな事くらい余裕で対応できる。まぁ少しは君も成長しているってことかな。はっはっは」
そう告げるとライアン王子は舞踏会に戻っていく。なんですの……私をからかって……その後暫くその場に立ち尽くしてしまった。
しばらくして正気に戻ると舞踏会に戻り、慌てて他の招待客にも謝罪しながら歩き出す。そして聖女マルセナは先程のことを思い返してみるが思考能力が低下していく。
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