追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

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第1章 聖魔法?そんなの知らないのです!

33. 選ぶのです。

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33. 選ぶのです。



 魔法船を乗っ取っていた海賊たちを倒して私たちは船長室にいた乗務員さんたちを助けたのです。一度、魔法船はクレスタに戻り改めて出航は明日になったのです。そして街の憲兵さんたちが海賊を確保し事情聴取をしている中、私たちはと言うと……

「アリーゼこんなことして大丈夫なの!?」

「し~っ!なのです。一応話を聞いてから判断するのです」

「はぁ……好きにするがよい。ワシは関わらんからの」

「……。」

 そうなのです。魔法船を動かしていた海賊の仲間を路地裏で私たちが捕まえているのです。一応、魔法船を動かしたので憲兵につきだせば話は終わりなのですが……捕まえた時のこの子の顔はどこか寂しそうだったので気になったのです。

「さて、なんであんなことしたんですか?彼らは海賊ってわかってましたよね?」

「……。」

「黙ってちゃ分からないのです」

 私が話しかけてもこの子は黙ったままです。何を言っても無駄だと諦めているのですかね……そんな時ミルディがその子のブレスレットを見て私に話しかける。

「あれ?そのブレスレット貴族紋が入ってるじゃん。確かその紋章は……」

「!?」

 その子は慌ててそれを隠す。どうやらこの子は貴族の家系のようです。なら尚更謎ですよね……そんな子がなんで海賊なんかに……

 するとそこへ先程の憲兵さんとは別の憲兵さんが来たのです。その人は私たちの前に来て敬礼をして挨拶をする。どうやらこの街の兵士のトップの方みたいなのです。

 彼は敬礼を解き、自己紹介を始める。名前はカシウスと言い階級は中尉だと教えてくれたのです。

 事件のことで私たちにも話が聞きたいようなので呼びにきたようなのです。すると私はなぜか残されミルディとロゼッタ様が話に行ってくれたのです。私だって話せるのです!

 でも私は思ったのです。それはその子が震えていたから。憲兵には捕まりたくないと言うことに他ならないのです。なら理由を教えて欲しいのですが……するとその子は観念したのか泣きながら私に話す。

「うぅ……ぐすん……ボク……認められたかったの……」

「認められる?」

「うん……魔法船を動かせる。ボクの魔法は全然ダメじゃないって……ずっと出来損ないって言われてたから……家を追い出されちゃったし……海賊だったとしてもボクを認めてくれて嬉しかったの……だから……ごめんなさい」

 おそらく自分の家で何かあったようでした。でも今の言葉で確信しました。この子の魔法はきっとすごいものなのだと。だから認められたいと思ったのです。しかし認められなかったのです。それであの行動に出たのでしょう。

 それはまるで……境遇は違えど追放された私と同じ。そこに話が終わったミルディとロゼッタ様が戻ってくる。

「アリーゼ、思い出した!その紋章マクスウェル家のだよ。代々有能な魔法士の家系の」

「マクスウェル家ですか……」

 マクスウェル家はミルディの言う通り王族にも仕える程有能な魔法士の家系なのです。昔カトリーナ教会で何人かに会ったことがあるのです。ミルディは話を続ける。

「そう言えば、この辺りのマクスウェル家の家系には有能な一人娘がいるって聞いたことあるけど……は?一人娘!?」

「えぇ、つまりこの子は……」

「あのボク。女の子だよ。フィオナ=マクスウェル。今年15歳になったばかりなの」

 ボクと言ってたので男の子かと思いましたが、よく見たら胸の膨らみはありますし声も高いのです。そしてミルディが私に話す。

「アリーゼ結局どうするの?ただでさえ未成年である上に貴族のご令嬢を牢屋に入れるわけにはいかないんじゃない?」

「ミルディ。それは関係ないのです。罪は罪なのです」

 私は座っているフィオナの前に屈んで真っ直ぐ目を見て話すことにするのです。これは説教なのです。

「フィオナ。あなたは海賊に加担して魔法船を動かした。そして乗務員さんたちを拘束し、乗客を不安にさせたのです。これは立派な罪。国外追放なのです」

「……。」

「でも、その事実を知っているのは私たちだけなのです。そしてフィオナはもうマクスウェル家から追放されているのです。あなたが捕まっても誰も助けてはくれないし、でも、なかったことには出来ないのです」

 幼いとはいえ過ちをなかったことには出来ないのです。だから道を示してあげる。それも聖女の役目なのです。

「フィオナ。選ぶのです。今ここで憲兵に突き出されてマクスウェル家の人間として国外追放されるか、全てを捨てて自分の意志で国外に行くのか。それがあなたが選べる道なのです」

 私の言葉を聞いたフィオナは目に涙を浮かべて私を見る。幼い彼女にとって少し厳しいことを言いましたが、これは私なりの優しさなのです。自分で選んだ道を進む。これがどんな結果になろうとも後悔しない選択だと思うからです。

 しばらく沈黙が続くがやがてフィオナが口を開く。

「ボクは……自分の力で生きていきたい!自分の力だけで認められてみたいの!」

「そうですか」

「ボクは……ボクは……うわぁあああん!!」」

 泣き出すフィオナを抱き締めると私の服を掴みながら大声で泣く。フィオナはしばらく泣いていたが落ち着きを取り戻す。そして私は今度は優しく微笑みながらフィオナに伝える。

「あなたはもう貴族令嬢のフィオナ=マクスウェルじゃない。ただのフィオナになったのです。だから私と一緒に来るのです。あなたを弟子にしてあげるのです!そして強くしてあげるのです!」

「え。アリーゼ様……ボク……」

「諦めなフィオナ。こうなったアリーゼは頑固だからさ。もちろん私は大歓迎だけど」

「ワシは別に構わんがアリーゼお主が面倒をみるのじゃぞ?」

「うん。ありがと……」

 ミルディとロゼッタ様は笑顔で答える。それにつられてフィオナは初めて優しい笑顔を見せてくれたのです。本当にいい仲間を持ったのです。私はフィオナに手を差し伸べる。するとフィオナはその手を取り立ち上がる。

「よろしくなのです!フィオナ!」

「うん!」

 こうして私は初めて可愛い弟子を取ることになったのです。
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