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第1章 聖魔法?そんなの知らないのです!
29. 証明しますわ ~マルセナside~
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29. 証明しますわ ~マルセナside~
カトリーナ教会はライアン=ランバートの援助のおかげで経営難から何とか持ち直した。もちろんこれは聖女マルセナのおもてなしがあってのこと。となっている。
が、聖女マルセナは納得は出来てなかった。あれは間違いなくお情けの援助であるからである。しかしその事実はライアンとマルセナ本人しか知りえないことでもあった。そしていつものように昼のお祈りの時間が終わり自分の部屋に戻る。
「やはり納得できませんわ!私がアリーゼより劣っているなんて認めないのですわ!」
自慢の金色の長い髪を右手でいじりながらマルセナは誰もいない部屋で1人そう叫ぶ。
その言葉に答えてくれる者はおらず、ただ虚しく響くだけである。しかしマルセナは自分の考えを改めるつもりはなかった。それは彼女がプライドが高いこともあるが、それだけではない。
彼女は誰よりも「聖女」としての努力をしてきたのだ。特にアリーゼを追い出してから常に自分を高めるため、毎日欠かさず行っている礼拝や布教活動はもちろんのこと、他の教会との合同行事では積極的に参加し、教会内の掃除も率先して行い、孤児たちの世話も積極的に行ってきた。
またそれだけではなく、マルセナ自身勉強家でもあり、最近では様々な知識を身につけるため日々読書をしているほどである。
そんな彼女にとって今まで努力してきて得た結果がアリーゼより劣っているというもの。それが許せなかった。
「私はアリーゼと何が違いますの……」
そうは言っても生まれてから今まで誰かと比べられてあそこまで言われた経験はマルセナ自身ない。ライアン=ランバート……あの男だけは許せないですわ……!と心の中でマルセナは呟く。
しかし今は考えても仕方がないと思い、気分転換のためテラスに出ることにした。ここは日当たりもよく風通しもいい。
そしていつも通りお茶を用意しようとした時だった。ふいに後ろから声をかけられた。
振り向くとそこには白髪の老人がいた。この教会の責任者であり、アリーゼやマルセナにとってはよくしてくれている祖父のような存在でもある。名はルスターという。
「おお、マルセナよここにいたのか?」
「あら、ルスター様?どうかなさいましたか?」
「うむ、少し話があるのだが今いいかね?」
そういうと2人は向かい合うように座った。
「それで、なんですの?」
「ああ、実はな。お前さんに新しい仕事を任せようと思ってのう」
正直、今の自分には新しい仕事などしている暇はないのだけど……。
「はい、一体どんな仕事をすればよろしいのですの?」
するとルスターはその問いに対し真面目な顔をする。その表情を見た瞬間マルセナも姿勢をただす。なぜなら目の前にいる老人はこういう顔をする時は決まって教会の為の最善を考えていることが多いからだ。
これは断るわけにもいかない。もし断れば自分はアリーゼよりも下だと認めることになるし聖女としての責任もある。それに、自分をここまで育ててくれた恩もある。
「それで、私に任せたい仕事とはなんなのですか?」
意を決して聞くマルセナに対してルスターは相変わらず真面目な顔をしてこう言った。
「お前には今日からこの教会を出てもらい、とある方の元で働いてもらうことにする」
「えっ?」
一瞬何を言われたかわからず思わず聞き返してしまった。しかしいくら聞いても内容は変わらない。
「どうした?聞こえなかったのか?だから、お前はこの教会から出て行き、これからある人の所で住み込みで働くことになったんじゃよ」
「そ、そんな!お待ちくださいルスター様!!どうして急にそのようなことを!」
あまりの内容にマルセナは慌ててしまう。だがそんな彼女を気にせずルスターはさらに続ける。
「それはだな。お前も知っての通り、最近ここの教会の評判が落ちてきている。このままではいずれ潰れてしまうじゃろう。聖女であるお前にしか救えんのじゃ。」
「そんな!それにあの人って一体……」
「お前も知っておるだろう。ライアン=ランバート様じゃ」
はぁ!?と言いそうになるのを必死に抑える。なぜ、こんな時に……?まさか嫌がらせ?とも思うが目の前にいる老人の顔を見る限りとてもじゃないが冗談を言っているとは思えない。
むしろ、本当に申し訳なさそうな顔さえ浮かべているように見えるではないか。
(これは本気ということですか……)
この前の一件で私はあの男に気に入られたのか……あれは冗談じゃなかったのか。と頭を抱えそうになったがすぐに思い直す。
面白いですわ。いいでしょう。そこまでして私を……ライアン=ランバート!待ってなさい私がアリーゼより優れていることを証明してあげますわ!
と強がってはみるが、マルセナは内心穏やかではない。これはある意味『交換条件』。援助の代わりということに他ならないのだった。
カトリーナ教会はライアン=ランバートの援助のおかげで経営難から何とか持ち直した。もちろんこれは聖女マルセナのおもてなしがあってのこと。となっている。
が、聖女マルセナは納得は出来てなかった。あれは間違いなくお情けの援助であるからである。しかしその事実はライアンとマルセナ本人しか知りえないことでもあった。そしていつものように昼のお祈りの時間が終わり自分の部屋に戻る。
「やはり納得できませんわ!私がアリーゼより劣っているなんて認めないのですわ!」
自慢の金色の長い髪を右手でいじりながらマルセナは誰もいない部屋で1人そう叫ぶ。
その言葉に答えてくれる者はおらず、ただ虚しく響くだけである。しかしマルセナは自分の考えを改めるつもりはなかった。それは彼女がプライドが高いこともあるが、それだけではない。
彼女は誰よりも「聖女」としての努力をしてきたのだ。特にアリーゼを追い出してから常に自分を高めるため、毎日欠かさず行っている礼拝や布教活動はもちろんのこと、他の教会との合同行事では積極的に参加し、教会内の掃除も率先して行い、孤児たちの世話も積極的に行ってきた。
またそれだけではなく、マルセナ自身勉強家でもあり、最近では様々な知識を身につけるため日々読書をしているほどである。
そんな彼女にとって今まで努力してきて得た結果がアリーゼより劣っているというもの。それが許せなかった。
「私はアリーゼと何が違いますの……」
そうは言っても生まれてから今まで誰かと比べられてあそこまで言われた経験はマルセナ自身ない。ライアン=ランバート……あの男だけは許せないですわ……!と心の中でマルセナは呟く。
しかし今は考えても仕方がないと思い、気分転換のためテラスに出ることにした。ここは日当たりもよく風通しもいい。
そしていつも通りお茶を用意しようとした時だった。ふいに後ろから声をかけられた。
振り向くとそこには白髪の老人がいた。この教会の責任者であり、アリーゼやマルセナにとってはよくしてくれている祖父のような存在でもある。名はルスターという。
「おお、マルセナよここにいたのか?」
「あら、ルスター様?どうかなさいましたか?」
「うむ、少し話があるのだが今いいかね?」
そういうと2人は向かい合うように座った。
「それで、なんですの?」
「ああ、実はな。お前さんに新しい仕事を任せようと思ってのう」
正直、今の自分には新しい仕事などしている暇はないのだけど……。
「はい、一体どんな仕事をすればよろしいのですの?」
するとルスターはその問いに対し真面目な顔をする。その表情を見た瞬間マルセナも姿勢をただす。なぜなら目の前にいる老人はこういう顔をする時は決まって教会の為の最善を考えていることが多いからだ。
これは断るわけにもいかない。もし断れば自分はアリーゼよりも下だと認めることになるし聖女としての責任もある。それに、自分をここまで育ててくれた恩もある。
「それで、私に任せたい仕事とはなんなのですか?」
意を決して聞くマルセナに対してルスターは相変わらず真面目な顔をしてこう言った。
「お前には今日からこの教会を出てもらい、とある方の元で働いてもらうことにする」
「えっ?」
一瞬何を言われたかわからず思わず聞き返してしまった。しかしいくら聞いても内容は変わらない。
「どうした?聞こえなかったのか?だから、お前はこの教会から出て行き、これからある人の所で住み込みで働くことになったんじゃよ」
「そ、そんな!お待ちくださいルスター様!!どうして急にそのようなことを!」
あまりの内容にマルセナは慌ててしまう。だがそんな彼女を気にせずルスターはさらに続ける。
「それはだな。お前も知っての通り、最近ここの教会の評判が落ちてきている。このままではいずれ潰れてしまうじゃろう。聖女であるお前にしか救えんのじゃ。」
「そんな!それにあの人って一体……」
「お前も知っておるだろう。ライアン=ランバート様じゃ」
はぁ!?と言いそうになるのを必死に抑える。なぜ、こんな時に……?まさか嫌がらせ?とも思うが目の前にいる老人の顔を見る限りとてもじゃないが冗談を言っているとは思えない。
むしろ、本当に申し訳なさそうな顔さえ浮かべているように見えるではないか。
(これは本気ということですか……)
この前の一件で私はあの男に気に入られたのか……あれは冗談じゃなかったのか。と頭を抱えそうになったがすぐに思い直す。
面白いですわ。いいでしょう。そこまでして私を……ライアン=ランバート!待ってなさい私がアリーゼより優れていることを証明してあげますわ!
と強がってはみるが、マルセナは内心穏やかではない。これはある意味『交換条件』。援助の代わりということに他ならないのだった。
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