追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

文字の大きさ
上 下
20 / 158
第1章 聖魔法?そんなの知らないのです!

19. 港町クレスタ

しおりを挟む
19. 港町クレスタ



 常闇の森で伝説の魔女ロゼッタ=ロズウェル様を仲間にした私とミルディは当初の計画通り海鮮料理のために北の港町クレスタへ向かうことにするのです。

 あの後、結局ロゼッタ様分の馬車代が足りなかったのでギルドでゴブリン退治の依頼を受けることになったのは内緒の話なのです。でもロゼッタ様の魔法で簡単にゴブリン退治が出来たので良かったのです。さすがは魔女様なのですね。

 そして私たちは無事に今はクレスタ行きの馬車の中にいます。

「あっ。ロゼッタ様こぼれてるよ?拭いてあげるからじっとして?」

「!?子供扱いするなミルディ!自分で拭けるのじゃ!」

「いや。こぼすのがもう子供だよ?」

 ミルディとロゼッタ様はもうあんなに打ち解けてます。凄い仲良しさんです。羨ましいですね。

 窓の外から潮風の匂いがしてくる。私は窓の外を見ると視界の先には港町が見える。もうすぐクレスタに着きそうなのですね。港町クレスタは海に突き出た半島にある街で、この街には大きな港があるのです。そして海の幸も豊富なのです。

 しばらく馬車を走らせ目的地の港町クレスタに着きました。私たちの目的である海鮮料理屋さんもこの近くにあるそうなので早速向かうことにします。街の大通りに面したところにそのお店がありました。

 私はついに念願の海鮮料理が食べれるとワクワクしながらそのお店に入ろうとしたその時、ロゼッタ様が話しかけてくるのです。

「おい。ワシはお腹がすいておらんぞ?まずは観光じゃ!長い間森の中におったのでな!楽しみじゃ!」

「ええ!?私ずっと海鮮を楽しみにしていたのです!言ってたのです!ロゼッタ様聞いてなかったのです!?」

「知らん。さっき馬車でパンを食べてしまったのじゃ。それなら言っておくのじゃ!ワシのせいにするでない!」

「ぐすっ……海鮮食べれないのです……」

 そんな私とロゼッタ様のやり取りを呆れながらミルディが見ている。ヒドイのです。やっぱりロゼッタ様は頑固でワガママなのです!

 その後私たちは街中を見て回りました。やはり港町だけあって所々に魚類などをたくさん売ったりしているお店もありますね。しばらくすると美味しそうな串焼きを売っている露店が目に止まる。肉汁たっぷりのジューシーなお肉が食欲を刺激する。これは食べるしかないのです!

 私が屋台のお兄さんに声をかけようとすると、ロゼッタ様に腕を引っ張られる。

「おいアリーゼ。海鮮はどうしたのじゃ?食べれなくなるぞ?」

「うぅ……お肉……海鮮……」

 もうお腹がすいてるのです。我慢できないのです。でもここで食べたらダメな気がするのです。私の本能が警鐘を鳴らしているのです。

 そんな私を見て意地悪な顔をしているロゼッタ様。ああ大聖女ディアナ様、私はどうしたら……そんな私の様子を見てミルディが救いの手を差し伸べてくれるのです。

「それならあたしと半分こしよう。そうすれば目的の海鮮も食べれるでしょ?あたし買ってくるから。お兄さん!その串焼き1つください!」

「ミルディ様~……神様~……」

「ちっつまらんのお……」

 こらこら。舌打ちしないのです。この人は本当に困った人なのです。ミルディが戻って来るまで少し時間がかかるようなので私は近くのベンチに座って待つことにしたのです。

「ロゼッタ様。どうですか久しぶりの外の世界は?」

「まだそんなに時間たっておらんじゃろうに……まぁ悪くはない」

「もう素直じゃないのです」

 そうロゼッタ様は私に返答するが、その顔は微笑んでいるように見えます。ロゼッタ様を常闇の森から連れ出して良かったのです。

 しばらくしてミルディが戻ってくる。両手には串焼きを持ってるのです。片方はタレがかかったお肉、もう片方は何だろう?何か白いものがかかっています。あれはエビですかね?いい匂いです。

 私は思わず唾を飲み込む。早く食べたいのです。

「美味しそうだから買っちゃった。アリーゼどうする?こっちも半分こにする?」

「するのです!エビも海鮮なのです!」

 そうして私たちはそれぞれ半分こをして串焼きを食べることにするのです。私はまずはタレの方を一口かじる。ジュワッとした旨味が広がる。

 続いてエビのほうの串焼きを一噛みする。プリッとして噛む度に魚介特有の風味が広がりとても美味しいのです。さらにそこに特製塩ダレの濃厚さが絡み合ってシンプルですけどそれが素材の良さを引き立てており美味しさ倍増なのです。

「美味しいのです。最高なのです!」

「ほんとだね。凄くおいしいよ。」

「……ワシも買うのじゃ!ずるいのじゃ!」

 ロゼッタ様は顔を膨らませて串焼きを買いに行く。その後ろ姿は伝説の魔女とは程遠く可愛らしい少女の姿をしていました。その時ミルディが私に言います。

「……たまにはこうして外でご飯もいいかもしれないね?」

「そうなのです!次はどこの街に行って何を食べようかなのです!」

「今食べたばかりで次の食べ物の話なの?アリーゼは」

 ミルディが呆れながらも笑顔で答えてくれる。そんな他愛もない会話をしながら、港町クレスタでの一日を終えるのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

処理中です...