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第3章 最強の天才魔法少女現る???

1. 天才魔法少女???

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1. 天才魔法少女???



 天気は快晴。オレはギルド『フェアリーテイル』の入り口の掃き掃除をしながらオープン準備をしていた。

「よし。」

 ギルド『フェアリーテイル』の室内はリリスさんとジェシカさん、エドガーさんにお願いして、綺麗にしてもらっている。壁や床もピカピカだ。冒険者ギルドのクエストボードには新しい依頼書も貼ってある。これでいつでも依頼開始できる。これがいつも通りの日課だ。

 すると、少し遠くの方から真っ赤な髪をおさげにし、少し長めの黒を基調としたローブを着た少女がこちらにやってくる。右手には樫の杖を持っている。

 冒険者かな?魔法使い?見た目は12~13歳くらいだろうか?それにしてもあの真っ赤な髪ここからでも目立つなぁ……。そしてオレの目の前まで来るといきなり話しかけられる。

「ねぇ。ギルド『フェアリーテイル』ってここ?」

「はいその通りですよ。ようこそ冒険者ギルド『フェアリーテイル』へ。でも開店まで少しだけ待ってください。もうすぐ開けますから」

 オレは丁寧に頭を下げる。そして、ゆっくりと顔を上げると目の前の少女が不機嫌そうな顔をしていることに気づく。

「えっ?」

「あんたがこのギルドのマスター?」

「まあ一応はそうですけど……」

「じゃあさっさと中にいれなさいよ。このアタシがわざわざ来てあげたんだから感謝しなさいよね!」

「はっはい?」

 なんだこいつ。いきなり態度でかいぞ。初対面なのに失礼すぎるだろ。オレが呆気に取られていると、赤い髪の少女はオレの返事を待たずにズカズカと中に入っていく。

「ちょ……ちょっと!勝手に入らないで下さい!まだ開店前ですって!」

 オレは慌ててを赤い髪の少女を止めようとすると、たまたま入り口近くにいたエドガーさんがその赤い髪の少女のローブの襟を掴んで軽く持ち上げる。

「待て。お前もギルド冒険者ならルールを守れ。まだ開店前だぞ」

「痛いわね離しなさいよ!私は『フェアリーテイル』に用があるの!」

 必死にバタバタと抵抗する赤い髪の少女だが、エドガーさんはビクともしない。というより片手で持ち上げるなんてエドガーさんはすごい力持ち?いや、その少女より重そうな盾を毎日持ってるもんな。そりゃそうか。そんな様子を見てリリスさんとジェシカさんもやってくる。

「どうしたんですか?」

「いやこの子が勝手に……」

「はぁ……あのマスター。そんな子どもも止められないの?」

「もしかしてそのプチトマトみたいな女の子がエミルくんの趣味なんですか?こんな近くに銀髪美女の私がいるのにロリコンに目覚めちゃったんですか?」

「違いますよ!?」

 2人ともとんでもない勘違いをしているな……。まあ確かに見た目は可愛いらしいかもしれないけどさ。

「とりあえず落ち着いて下さい皆さん。その子はお客様ですよ。」

「そうなんですか?てっきりエミルくんの趣味の女の子かと思いました。エミルくんは腕っぷしも弱いですし、小さい子にしか強く言えなそうですし、男として良いところが皆無ですし、こういうワガママ放題のガキのほうが好みっぽいですもんね」

 オレはいつものようにリリスさんに毒を吐かれる。というかだいぶ偏見なんだが……とりあえずエドガーさんに掴まれてバタついているその赤い髪の少女を解放する。

「ふんっ!やっと解放されたわ」

「それであなた名前は?冒険証持ってるの?」

「はぁ?ないわよ。今から登録するんじゃない!空気読めない受付嬢ね!アタシは最強の天才魔法少女アンナよ!」

 そのアンナがそう言うと、なぜか静寂が流れる。……相手は子どもだよ?みんなもっと優しくしようよ。

「……叩いていい?」

「ダメですよジェシカさん!」

「天才ってたかが初級の炎属性魔法のファイアボールとかしか使えないですよね?どうせ周りから『この歳で魔法使えるのは凄い!天才!』とか言われて意気がってるだけですよ。それか、たまたまそこら辺にいたスライムとかゴブリンとかを倒して『私ってば最強!天才!』とか勘違いしているだけじゃないんですか?ダメですよその歳で自分を見失っちゃ。」

 容赦ないリリスさんの毒舌。何も子ども相手にここまで言わなくても……それを聞いたアンナは顔を真っ赤にして怒りだす。

「むぅ~!なによこの銀髪のおばさん!ギルド受付嬢のくせに偉そうにしゃしゃりでてきて!アタシは本当に天才なんだから!」

「……殺していいですか?」

「それは絶対にダメですよリリスさん!落ち着いて!」

 こうして、自分を最強の天才魔法少女と呼ぶアンナによって嵐のような1日が始まるのだった。
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