16 / 51
第2章 正義のヒーロー!ベテラン盾騎士の約束
3. 正義のヒーロー
しおりを挟む
3. 正義のヒーロー
そして翌日。オレはギルドの管理機関に提出した依頼書を回収しに外に出ている。これはオレの仕事だ。管理機関の人が依頼書をチェックして問題がなければクエストボードに貼り出す依頼書を貰うのだが、まだまだ軌道に乗ったとはいえ、許可が降りる依頼書の枚数は多くないけどな。
「さて、そろそろ戻るか。今日も忙しくなるぞ」
そんな独り言を言いながら歩いていると、ふとギルドの近くの広場に視線を向ける。そこにはエドガーさんとルシーナさんが共にベンチに座っているのが見えた。
「あれは……エドガーさんとルシーナさん?」
なんだろう?そう言えばあの二人ってどういう関係なんだ?家族?恋人?よく分からないけど楽しげに話しているようだ。しばらく見ているとエドガーさんが立ち上がり、そのままギルド『フェアリーテイル』がある方向に向かって歩いて行く。
やっぱり今日も来るのか。でもチャンスだ。ここはルシーナさんに話を聞いてみよう!と、そう思いオレはルシーナさんの元へ向かう。
「こんにちは。少しお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「あら、こんにちは。なんでしょうか?」
ルシーナさんは笑顔で答えてくれる。よかった。いきなり話しかけたので警戒されると思ったが、どうやら大丈夫なようだ。
「すみません突然。オレはギルド『フェアリーテイル』のギルドマスターのエミルと言います。エドガーさんのお知り合いですか?」
「あっはい」
「失礼ですがどういうご関係で?」
「エドガーさんとは元冒険者パーティーです。私は今は辞めて孤児院を経営しています」
元冒険者パーティー……。なら話しは早いな。オレはそのまま本題を話すことにする。
「実はエドガーさんはこのところ毎日のようにギルド『フェアリーテイル』に来られては依頼を受けないでそのまま帰って行くんです。何か心当たりはありますか?余計な詮索かもしれませんが気になってしまって……」
「……そうですね。きっとエドガーさんはパーティーを探しているんです。彼は盾騎士ですから」
ルシーナさんの話によると、エドガーさんはギルドを転々と移動しながら今まで20年間も冒険者を続け、その稼いだ資金を孤児院に毎月、援助している。
ベテラン盾騎士。しかしランクがCという状況から周りからバカにされ続けていた。それもあってか、最近では仲間を見つけることが出来ず、ソロでの活動が主になっているらしい。
「エドガーさんは盾騎士というジョブに誇りを持っているんです。それはギルド冒険者になったばかりの時に、ある依頼でその時の孤児院の子どもたちを魔物から守ったそうです。そしてその子どもたちに『正義のヒーロー』と言われたことで盾騎士というジョブに自信を持ったと聞いています。いつも困っている冒険者や仲間を助けたいって口癖のように言ってますから。もちろん私の孤児院の子たちにも」
そう微笑みながら話してくれるルシーナさん。どれだけ周りからバカにされても盾騎士からジョブを変えない。それはエドガーさんの信念なのだろう。
「なるほど……。ありがとうございます。お時間取らせてしまい申し訳ありませんでした」
「いえ。もし良ければエドガーさんの力になってあげてください。本当に優しくて……私にとっても正義のヒーローですから」
そう言ってルシーナさんは軽く会釈をして立ち去っていく。オレはすぐにエドガーさんを追いかけることにした。このままではいけない気がするんだ。オレは足早にエドガーさんを追い掛ける。するとちょうどギルドに到着しようとしていたエドガーさんに追いつくことが出来た。
「エドガーさん!」
「ん?君は確かギルドの……何か用か?」
「その……オレはギルド『フェアリーテイル』のギルドマスターのエミルです。少しだけいいですか?」
オレには考えがあった。それはもちろんギルド『フェアリーテイル』の為であり、他とは違うギルドにする為でもある。そのままオレはエドガーさんを連れてギルドに入る。
「ただいまリリスさん」
「お帰りなさいエミルくん。あれ?盾騎士のエドガーさんじゃないですか。どうされたんですか?」
「……ギルド『フェアリーテイル』は正義のヒーローを雇うことにしたんだ」
オレがそう言うとリリスさんとエドガーさんはキョトンとした顔になっている。まぁ無理もないか、いきなり正義のヒーローを雇うとか言われても何のことか分からないだろうな。でもオレはこれがこの先、ギルド『フェアリーテイル』が目指すギルドになるための方法になるのだと確信していたのだった。
そして翌日。オレはギルドの管理機関に提出した依頼書を回収しに外に出ている。これはオレの仕事だ。管理機関の人が依頼書をチェックして問題がなければクエストボードに貼り出す依頼書を貰うのだが、まだまだ軌道に乗ったとはいえ、許可が降りる依頼書の枚数は多くないけどな。
「さて、そろそろ戻るか。今日も忙しくなるぞ」
そんな独り言を言いながら歩いていると、ふとギルドの近くの広場に視線を向ける。そこにはエドガーさんとルシーナさんが共にベンチに座っているのが見えた。
「あれは……エドガーさんとルシーナさん?」
なんだろう?そう言えばあの二人ってどういう関係なんだ?家族?恋人?よく分からないけど楽しげに話しているようだ。しばらく見ているとエドガーさんが立ち上がり、そのままギルド『フェアリーテイル』がある方向に向かって歩いて行く。
やっぱり今日も来るのか。でもチャンスだ。ここはルシーナさんに話を聞いてみよう!と、そう思いオレはルシーナさんの元へ向かう。
「こんにちは。少しお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「あら、こんにちは。なんでしょうか?」
ルシーナさんは笑顔で答えてくれる。よかった。いきなり話しかけたので警戒されると思ったが、どうやら大丈夫なようだ。
「すみません突然。オレはギルド『フェアリーテイル』のギルドマスターのエミルと言います。エドガーさんのお知り合いですか?」
「あっはい」
「失礼ですがどういうご関係で?」
「エドガーさんとは元冒険者パーティーです。私は今は辞めて孤児院を経営しています」
元冒険者パーティー……。なら話しは早いな。オレはそのまま本題を話すことにする。
「実はエドガーさんはこのところ毎日のようにギルド『フェアリーテイル』に来られては依頼を受けないでそのまま帰って行くんです。何か心当たりはありますか?余計な詮索かもしれませんが気になってしまって……」
「……そうですね。きっとエドガーさんはパーティーを探しているんです。彼は盾騎士ですから」
ルシーナさんの話によると、エドガーさんはギルドを転々と移動しながら今まで20年間も冒険者を続け、その稼いだ資金を孤児院に毎月、援助している。
ベテラン盾騎士。しかしランクがCという状況から周りからバカにされ続けていた。それもあってか、最近では仲間を見つけることが出来ず、ソロでの活動が主になっているらしい。
「エドガーさんは盾騎士というジョブに誇りを持っているんです。それはギルド冒険者になったばかりの時に、ある依頼でその時の孤児院の子どもたちを魔物から守ったそうです。そしてその子どもたちに『正義のヒーロー』と言われたことで盾騎士というジョブに自信を持ったと聞いています。いつも困っている冒険者や仲間を助けたいって口癖のように言ってますから。もちろん私の孤児院の子たちにも」
そう微笑みながら話してくれるルシーナさん。どれだけ周りからバカにされても盾騎士からジョブを変えない。それはエドガーさんの信念なのだろう。
「なるほど……。ありがとうございます。お時間取らせてしまい申し訳ありませんでした」
「いえ。もし良ければエドガーさんの力になってあげてください。本当に優しくて……私にとっても正義のヒーローですから」
そう言ってルシーナさんは軽く会釈をして立ち去っていく。オレはすぐにエドガーさんを追いかけることにした。このままではいけない気がするんだ。オレは足早にエドガーさんを追い掛ける。するとちょうどギルドに到着しようとしていたエドガーさんに追いつくことが出来た。
「エドガーさん!」
「ん?君は確かギルドの……何か用か?」
「その……オレはギルド『フェアリーテイル』のギルドマスターのエミルです。少しだけいいですか?」
オレには考えがあった。それはもちろんギルド『フェアリーテイル』の為であり、他とは違うギルドにする為でもある。そのままオレはエドガーさんを連れてギルドに入る。
「ただいまリリスさん」
「お帰りなさいエミルくん。あれ?盾騎士のエドガーさんじゃないですか。どうされたんですか?」
「……ギルド『フェアリーテイル』は正義のヒーローを雇うことにしたんだ」
オレがそう言うとリリスさんとエドガーさんはキョトンとした顔になっている。まぁ無理もないか、いきなり正義のヒーローを雇うとか言われても何のことか分からないだろうな。でもオレはこれがこの先、ギルド『フェアリーテイル』が目指すギルドになるための方法になるのだと確信していたのだった。
10
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
パーティーに裏切られた暗黒騎士はレベル1から錬金術師でやり直し!
秋風 司
ファンタジー
主人公のアクセルは、レベル999のカンストパーティーのメンバーであった。ステータスの総合値が世界で一番のアクセルは、パーティーの中でもエースで一際目立っていた。だがある日、パーティーの三人から言われる。
「お前のステータス俺たちによこせよ!」
言い放たれた言葉に戸惑うアクセルは、どういうことかと聞こうとするが三人とも聞く耳を持たずに戦うつもりのようだ。長年連れ添った仲間の裏切りに整理が出来ず、テレポーテーションをしてその場を離れる。
移動先を考えていなかったアクセルは見知らぬ森に飛んでしまう。そこで出会ったのは一人の少女フィアナ。職業(ジョブ)は錬金術師、聞いたこともない職業である。アクセルはこの機会にフィアナに手伝ってもらい錬金術師になりたいと提案した。するとフィアナは快く受け入れ、錬金術師へと職業変更(ジョブチェンジ)する。
レベル999暗黒騎士からレベル1錬金術師へと職業変更(ジョブチェンジ)したアクセルのやり直しの物語が始まる。
※この話にはステータス表示があります。一話辺りの文字数が1000〜2000字なので気軽に読めると思います。
小説家になろう様にも掲載しています。
何者でもない僕は異世界で冒険者をはじめる
月風レイ
ファンタジー
あらゆることを人より器用にこなす事ができても、何の長所にもなくただ日々を過ごす自分。
周りの友人は世界を羽ばたくスターになるのにも関わらず、自分はただのサラリーマン。
そんな平凡で退屈な日々に、革命が起こる。
それは突如現れた一枚の手紙だった。
その手紙の内容には、『異世界に行きますか?』と書かれていた。
どうせ、誰かの悪ふざけだろうと思い、適当に異世界にでもいけたら良いもんだよと、考えたところ。
突如、異世界の大草原に召喚される。
元の世界にも戻れ、無限の魔力と絶対不死身な体を手に入れた冒険が今始まる。
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。
アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。
だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。
それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。
しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いていますが、こちらにも載せます。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
【完結】あやかし蔵の酒造り
三ツ矢
ライト文芸
大学四年生の一月、主人公の徳明和(とくめい かず)は就職活動が上手く行かず、やけ酒を飲んでいた。そんな時、人の良さそうな男につい自分の境遇を愚痴ってしまう。それを聞いた男は寮完備、三食昼寝つきの仕事に就く気はないかと問いかける。就職活動に疲れていた和はついその甘い言葉に乗ってしまう。
目が覚めると和は雪深い山奥の一室にいた。和は蔵人(くらびと)の稲里(いなさと)に出会い、何が何だかわからないうちにいきなり酒造りに参加させられる。
酒造りの奥深さとやりがいを持って仕事に取り組む蔵人たちの姿を見て、和は迷いながらも蔵に入ることを決意した。そしてある晩、蔵の中で不思議な体験をする。
ヘタレな主人公のちょっと不思議な大人の青春酒造騒動記。衝撃のラストに貴方はきっと涙する。
※本編完結しました。サイドストーリーも完結しました。
※ACイラストのぴぴふぉとさんから画像をお借りしています。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
婚約破棄で終わらない! 策謀家王子と腕力家公爵令嬢 チートな二人のそれからはじまる物語り
此寺 美津己
ファンタジー
北の王国グランダの王太子ハルトは、舞踏会の会場で許嫁の公爵令嬢フィオリナに婚約破棄をやらかした!
テンプレ通りにことが運ぶと思いきや。
クローディア公爵家令嬢フィオリナ
「なるほど、王室の真の目的は、ハルトの廃嫡ですか。ならば、クローディア公爵家も武力をもってたつしかありませんね。」
魔道院の妖怪じじい
「ハルトよ、すべてを捨てて我の元に来るが良い。ともに魔道の極みを目指そうぞ。」
???
「迷宮の最奥に潜むもの。その力を我が手にするために、ハルト王子の命は頂戴します。」
迷宮の最奥に潜むもの
「何ものだ? 千年の眠りから我を目覚めさせようとするものは。」
勇者
「なら、ぼくの出番だよね。」
みんなやめてええええええっ!!
婚約破棄からはじまったグランダの後継者争いは、冒険者ギルドに、魔道院、剣聖、神獣、英雄、勇者までも巻き込んで。
ざまあの少ない婚約破棄の物語。
カクヨムにも投稿しています。
登場人物たちの視点で、婚約破棄騒動の裏側を描く
『水晶鏡の破片たち ある婚約破棄の裏側で』
というのも始めてみました。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる