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第2章 正義のヒーロー!ベテラン盾騎士の約束

3. 正義のヒーロー

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3. 正義のヒーロー



 そして翌日。オレはギルドの管理機関に提出した依頼書を回収しに外に出ている。これはオレの仕事だ。管理機関の人が依頼書をチェックして問題がなければクエストボードに貼り出す依頼書を貰うのだが、まだまだ軌道に乗ったとはいえ、許可が降りる依頼書の枚数は多くないけどな。

「さて、そろそろ戻るか。今日も忙しくなるぞ」

 そんな独り言を言いながら歩いていると、ふとギルドの近くの広場に視線を向ける。そこにはエドガーさんとルシーナさんが共にベンチに座っているのが見えた。

「あれは……エドガーさんとルシーナさん?」

 なんだろう?そう言えばあの二人ってどういう関係なんだ?家族?恋人?よく分からないけど楽しげに話しているようだ。しばらく見ているとエドガーさんが立ち上がり、そのままギルド『フェアリーテイル』がある方向に向かって歩いて行く。

 やっぱり今日も来るのか。でもチャンスだ。ここはルシーナさんに話を聞いてみよう!と、そう思いオレはルシーナさんの元へ向かう。

「こんにちは。少しお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

「あら、こんにちは。なんでしょうか?」

 ルシーナさんは笑顔で答えてくれる。よかった。いきなり話しかけたので警戒されると思ったが、どうやら大丈夫なようだ。

「すみません突然。オレはギルド『フェアリーテイル』のギルドマスターのエミルと言います。エドガーさんのお知り合いですか?」

「あっはい」

「失礼ですがどういうご関係で?」

「エドガーさんとは元冒険者パーティーです。私は今は辞めて孤児院を経営しています」

 元冒険者パーティー……。なら話しは早いな。オレはそのまま本題を話すことにする。

「実はエドガーさんはこのところ毎日のようにギルド『フェアリーテイル』に来られては依頼を受けないでそのまま帰って行くんです。何か心当たりはありますか?余計な詮索かもしれませんが気になってしまって……」

「……そうですね。きっとエドガーさんはパーティーを探しているんです。彼は盾騎士ですから」

 ルシーナさんの話によると、エドガーさんはギルドを転々と移動しながら今まで20年間も冒険者を続け、その稼いだ資金を孤児院に毎月、援助している。

 ベテラン盾騎士。しかしランクがCという状況から周りからバカにされ続けていた。それもあってか、最近では仲間を見つけることが出来ず、ソロでの活動が主になっているらしい。

「エドガーさんは盾騎士というジョブに誇りを持っているんです。それはギルド冒険者になったばかりの時に、ある依頼でその時の孤児院の子どもたちを魔物から守ったそうです。そしてその子どもたちに『正義のヒーロー』と言われたことで盾騎士というジョブに自信を持ったと聞いています。いつも困っている冒険者や仲間を助けたいって口癖のように言ってますから。もちろん私の孤児院の子たちにも」

 そう微笑みながら話してくれるルシーナさん。どれだけ周りからバカにされても盾騎士からジョブを変えない。それはエドガーさんの信念なのだろう。

「なるほど……。ありがとうございます。お時間取らせてしまい申し訳ありませんでした」

「いえ。もし良ければエドガーさんの力になってあげてください。本当に優しくて……私にとっても正義のヒーローですから」

 そう言ってルシーナさんは軽く会釈をして立ち去っていく。オレはすぐにエドガーさんを追いかけることにした。このままではいけない気がするんだ。オレは足早にエドガーさんを追い掛ける。するとちょうどギルドに到着しようとしていたエドガーさんに追いつくことが出来た。

「エドガーさん!」

「ん?君は確かギルドの……何か用か?」

「その……オレはギルド『フェアリーテイル』のギルドマスターのエミルです。少しだけいいですか?」

 オレには考えがあった。それはもちろんギルド『フェアリーテイル』の為であり、他とは違うギルドにする為でもある。そのままオレはエドガーさんを連れてギルドに入る。

「ただいまリリスさん」

「お帰りなさいエミルくん。あれ?盾騎士のエドガーさんじゃないですか。どうされたんですか?」

「……ギルド『フェアリーテイル』は正義のヒーローを雇うことにしたんだ」

 オレがそう言うとリリスさんとエドガーさんはキョトンとした顔になっている。まぁ無理もないか、いきなり正義のヒーローを雇うとか言われても何のことか分からないだろうな。でもオレはこれがこの先、ギルド『フェアリーテイル』が目指すギルドになるための方法になるのだと確信していたのだった。
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