上 下
120 / 152

119. 秋と冬の友

しおりを挟む
119. 秋と冬の友



 今日から夏帆は実家に帰っている。だから久しぶりに1人だ。さすがにオレはあいつみたいに人の実家にまで押し掛けるようなことはしない。

 特にやることもないので、ボーッとテレビを見たり、ゲームをしたりしていたがすぐに飽きる。正直、夏帆がいないと何も面白くなくなってきている。というより夏帆がいないとダメになってしまっているのかもしれない。

「……まさか本当はオレのほうが夏帆に依存しているのか?」

 自分で言った言葉が意外にも心に刺さった。そんなことはないと思いたいが、確かにそうかもしれない。いつも一緒にいるからこそ気づかないだけで、本当は夏帆に依存してしまっているのだろうか?

「……とりあえず出かけるか」

 このまま家にいたらもっと変なことを考えてしまいそうだ。それならいっそ外に出たほうがいいだろう。

 ということでオレは財布だけを持って、近くのスーパーへと買い物に出かけた。買い物を終えて家に帰る途中、見知った顔を見つける。あれは…………。

「おーい、黒崎!」

 声をかけると黒崎はこちらを振り返って笑顔で手を振る。

「あら。こんにちは神原君。お買い物かしら?」

「ああ。黒崎もか?」

「ちょっと本屋にね。そういえば夏帆ちゃん今ご実家に帰ってるのよね?浮気しちゃダメよ?」

 なんでこいつにまで言われなきゃならないんだか。まぁ冗談だとわかってはいるが。

「するわけないだろ」

「ねぇ今からカフェにでも行かない?」

「は?」

「どうせ暇してるんでしょ?だったら私とお話しましょう?私たち親友でしょ?」

「親友?まぁ別にいいけど……」

「じゃあ決まり!早速行きましょうか」

 半ば強引に連れて来られたが、まぁ仕方がない。それに誰かと話したいと思ってたしちょうど良かったのかもしれない。しばらく黒崎と色々話した。意外に黒崎はおしゃべりだったのが印象的だった。

「今日は楽しかったわ。ありがとう神原君」

「いや、それは構わないんだけど……。何でいきなりあんなこと言い出したんだよ?」

「え?だって神原君が寂しいと思って」

「……別に寂しくなんてねぇし」

「ふふっ。そういうことにしておくわね」

「どういう意味だよ」

「ううん。なんでもないわ。夏帆ちゃんによろしくね?」

「おう。またな」

 こうしてオレたちは別れた。本当によくわからない女である。でも友達か……。そういえば友達と呼べるやつもオレにはいないもんな。一緒に時間を潰してくれた黒崎に少しだけ感謝をするのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺にはロシア人ハーフの許嫁がいるらしい。

夜兎ましろ
青春
 高校入学から約半年が経ったある日。  俺たちのクラスに転入生がやってきたのだが、その転入生は俺――雪村翔(ゆきむら しょう)が幼い頃に結婚を誓い合ったロシア人ハーフの美少女だった……!?

優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由

棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。 (2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。 女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。 彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。 高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。 「一人で走るのは寂しいな」 「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」 孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。 そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。 陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。 待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。 彼女達にもまた『駆ける理由』がある。 想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。 陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。 それなのに何故! どうして! 陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか! というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。 嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。 ということで、書き始めました。 陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。 表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。

【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!

夕姫
ライト文芸
Vtuber事務所『Fmすたーらいぶ』の1期生として活動する、清楚担当Vtuber『姫宮ましろ』。そんな彼女にはある秘密がある。それは中の人が男ということ……。 そんな『姫宮ましろ』の中の人こと、主人公の神崎颯太は『Fmすたーらいぶ』のマネージャーである姉の神崎桃を助けるためにVtuberとして活動していた。 同じ事務所のライバーとはほとんど絡まない、連絡も必要最低限。そんな生活を2年続けていたある日。事務所の不手際で半年前にデビューした3期生のVtuber『双葉かのん』こと鈴町彩芽に正体が知られて…… この物語は正体を隠しながら『姫宮ましろ』として活動する主人公とガチで陰キャでコミュ障な後輩ちゃんのVtuberお仕事ラブコメディ ※2人の恋愛模様は中学生並みにゆっくりです。温かく見守ってください ※配信パートは在籍ライバーが織り成す感動あり、涙あり、笑いありw箱推しリスナーの気分で読んでください AIイラストで作ったFA(ファンアート) ⬇️ https://www.alphapolis.co.jp/novel/187178688/738771100 も不定期更新中。こちらも応援よろしくです

Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

green
青春
一ノ瀬財閥の令嬢、一ノ瀬綾乃は小学校一年生からサッカーを始め、プロサッカー選手になることを夢見ている。 しかし、父である浩平にその夢を反対される。 夢を諦めきれない綾乃は浩平に言う。 「その夢に挑戦するためのお時間をいただけないでしょうか?」 一人のお嬢様の挑戦が始まる。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

黄昏は悲しき堕天使達のシュプール

Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・  黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に  儚くも露と消えていく』 ある朝、 目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。 小学校六年生に戻った俺を取り巻く 懐かしい顔ぶれ。 優しい先生。 いじめっ子のグループ。 クラスで一番美しい少女。 そして。 密かに想い続けていた初恋の少女。 この世界は嘘と欺瞞に満ちている。 愛を語るには幼過ぎる少女達と 愛を語るには汚れ過ぎた大人。 少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、 大人は平然と他人を騙す。 ある時、 俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。 そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。 夕日に少女の涙が落ちる時、 俺は彼女達の笑顔と 失われた真実を 取り戻すことができるのだろうか。

処理中です...