【おしかの】後輩ちゃんは先輩と付き合ってます！！？

82. 一番欲しくて嬉しいもの

82.　一番欲しくて嬉しいもの



「ねぇ先輩？そろそろ誕生日ですよね？」

「ん？ああそうだな。」

「プレゼントは私でいいですよね？」

「だからお前はいらんって言ってんだろ！」

「本当にいいんですか？チャンスですよ？今ならまだ間に合いますよ？」

　こいつは面倒くさいやつだ。こうやって絡んでオレの反応を楽しんでくる。まぁそれがこいつなりの愛情表現なんだろうけど。

「あーもう！うるせぇな！もう帰れ！」

「えーそんなに邪険にしなくてもいいじゃないですか～」

　そう言って夏帆は口を尖らせた。その仕草がまたウザい。

「じゃあ何が欲しいんですか？教えてくださいよ。」

「別に……特別なものは何も要らねえよ。ただいつも通り一緒にいて、くだらない話して、たまには一緒に買い物とか行って、それだけだけで十分だよ。」

　オレの言葉を聞いた夏帆は少し驚いた顔をしていた。

「それは……熟練カップルがやることじゃないですか！やっぱり私と先輩は付き合ってるんですよね！？認めてますよね先輩！」

「だから違うっての……」

　オレは溜息をつくしかなかった。このやり取りも一体何回目だろうか。そろそろ疲れてきた。

「私の頑張りが足りないんですか？」

「そうかもな」

「うわっ適当すぎです！もっと真剣に考えて下さいよ！」

　そう言いながら夏帆は頬を膨らませた。こんな風に素直な感情を見せてくる時が一番可愛いと思う。だけどそれを口に出すと調子に乗るから言わない。これは男としての意地みたいなものだ。

「まぁとりあえず、誕生日楽しみにしてて下さいね！先輩の大好きな物たくさん作っちゃいますから！」

「はいはい分かった分かった」

　オレは適当にあしらう。でもさっき言ったことはオレの本心だ。特別何かが欲しい訳じゃない。

　ただいつも通りの日常を、ウザいこいつと過ごすことが今一番欲しくて、一番嬉しいものだとオレは思うのだった。