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54. 鉄壁の理性

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54. 鉄壁の理性



「くそっ。ベッド狭いだろうが……もう少しそっちいけよ」

「え?これ以上いったら落ちちゃいますよ~」

「お前絶対変なことすんなよ?」

「変なことってなんですか~?」

 ダメだこいつに関わるとペースを持っていかれる。オレは明かりを消してから布団を被りに目を瞑る。落ち着け……相手は白石だ。あんなウザいやつは無視に限る。大丈夫、眠いからこのまま眠れるはずだ。

「あぁ……このベッド先輩の匂いがしますね?」

「黙れ」

「なんか……先輩に抱かれてるみたい……な?」

「黙れって」

「ねぇ……せ~んぱい……」

 耳元で吐息が混じった甘い声が聞こえる。それに……なんか背中に当たってるような感触もある。

「こっち向いてくれませんかぁ……」

「うるさい。黙れ。もう寝ろ」

「だって……せっかく先輩と一緒にいるんですよ?しかも同じベッドの中に……本当に何もしなくていいんですか?ほらほら……柔らかいですよね……私の胸?」

「暑いから離れろ」

「あぁ……なんか……変な気分になって来ちゃったかも……」

 オレはそのまま電気をつけ、起き上がる。……こいつ。何煽ってきてんだよ。わざと変な声出して来やがって

「お前……寝る気ないなら帰れ」

「寝ますよ~。寝ますって」

「あと電気を消したら喋るな。その声……ムカつく」

「え?あ。ちょっとエッチでした?メス出ちゃいました?やだなぁ先輩。先輩も限界ならさっきの私のエッチな声オカズにしていいですよ?」

「うるさい。黙れ。守れなかったら帰れよ!」

「分かりましたよ……おやすみなさい」

 オレは白石に背を向けた状態で横になった。しばらくすると背後からスースーと寝息が聞こえてきた。寝付き良すぎるだろコイツ。逆にオレは目が覚めてしまった。

「はぁ……寝れねぇ……」

 それからしばらく眠れずにいると、後ろからはスースーと寝息が聞こえてくる。寝てるよな?オレは寝返りをうち白石の方を向いた。するとそこには、スヤスヤと気持ち良さそうに眠っている白石の顔が……

「黙ってれば可愛いのにな……」

 オレは無意識に頭を撫でてしまった。柔らかくサラサラとした髪に触れているとそのまま白石が抱きついてくる。いやいや……柔らかいのが当たってるって……しかもピンポイントにオレの右手があるんだよそこに!

「ん……ぁ……あ……」

 右手をどけようと試みるが、その動きにピクッとなる白石。ダメだ右手は動かせん。耐えろオレの鉄壁の理性の鎧!それにこんなところでこいつが目覚めたら何を言われるかわからん……

「先輩。大好きです……」

 え?嘘だろ?今のって寝言だよな?なんで今言うんだよ!あぁもうなんなんだよこいつは!

 ……うぜぇ。こいつ寝てもオレに絡んでくるのかよ……

 結局、オレはその日は眠ることが出来なかった。
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