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48. 理由
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48. 理由
そして翌日。私とフレデリカ姫様はローゼリア王国に戻るための馬車を宿屋の入口で待っている。
「ふわあああぁ。」
「……あなた。女性と言うこと忘れていません?こんなところでよく平気で大口を開けてあくびなんてできますわね?みっともないわよ?」
「すみません。昨日は少し寝るのが遅くなりまして……」
「はい?あなたの方が先に寝てましたわよね?姫騎士が姫より先に寝るのはどうかと思いますわよ?」
本当は魔王軍の幹部のグラドを倒したんだよ。とは言えないので黙っておく。もちろんリアンさんの件もだ。
私は苦笑いを浮かべると馬に乗った兵士がこちらに向かってくる。そこにはなぜかジギル王子と側近騎士のリアンさんもいた。まさか話しちゃったとかじゃないわよね?私は慌てて身だしなみを整えていると、血相を変えたジギル王子が話し始める。
「フレデリカ姫様!大変です!今朝方、ローゼリア王国に魔物の大群が押し寄せたとの知らせがあった。すでに鎮火しているようだけど、被害は大きいらしい。至急、ローゼリア王国に戻ったほうがいい」
「そ、そんな……ローゼリアが!?イデア急いで戻りますわよ!」
その時、私の心臓が大きく脈をうつ。そして記憶が蘇り、それは走馬灯のように私の頭の中に流れ込む。
待って……ローゼリアが魔物の大群に襲われた?前世では、そんなことなかったじゃない。じゃあ前世の私は何をしていた?その魔物の大群が発生する前にギルドの依頼で調査をしてたんじゃなかった?未然に防いでいた?
「イデア!?何してますの!?早く!」
「あ。はい!」
馬車に乗り込むとそのまま馬車は走り出す。ダメ……足に力が入らない。どうしよう……行かなきゃいけないけど……でも……私は……
「イデア?」
「……」
頭が混乱する。私はどうすれば……わからない。私が転生してここにいる意味が……あれ?私はなんで2度目をやり直してるんだっけ?その時フレデリカ姫様の叱責が私に向けられる。
「しっかりなさい!あなたらしくありませんわよ!」
「……え?」
「あなたはいつも堂々としていて、どんな困難があっても諦めずに立ち向かう強さを持っている。私はそんなあなたを尊敬しているのですわ!そんなあなたがそんなことでどうしますの!」
「フレデリカ姫……さま」
するとフレデリカ姫様は自分の隣に来るように手招きをする。私がそこに座ると彼女は優しく抱きしめてくれる。
「今はローゼリアの民のためにも、私たちができることをやりましょう。大丈夫。きっとみんな無事ですわ」
その言葉を聞くと不思議と落ち着いてきた。そうだ。私は何を弱気になっちゃっているの?私は誓ったはずじゃない。もう二度と大切な人を死なせないと。
「……ありがとうございますフレデリカ姫様。おかげで落ち着きました。」
「そう?ならよかったわ。さっきまで泣きそうな顔をしていたもの。でも、あなたは笑顔のほうが似合っていますわよ?」
「はい。頑張ります。でも……」
「でも?」
「今はちょっとだけ……甘えてもいいですか?」
そう言って彼女の胸に顔を埋める。すると頭を撫でられる感触がある。あぁ。この温もりだ。この匂いだ。この優しさだ。私がフレデリカ姫様のために戦う理由。この人が幸せになって欲しいから。だから私は守りたい。この人の未来を。
私は馬車の中で目を瞑り、心の中で決意を新たにした。
そして翌日。私とフレデリカ姫様はローゼリア王国に戻るための馬車を宿屋の入口で待っている。
「ふわあああぁ。」
「……あなた。女性と言うこと忘れていません?こんなところでよく平気で大口を開けてあくびなんてできますわね?みっともないわよ?」
「すみません。昨日は少し寝るのが遅くなりまして……」
「はい?あなたの方が先に寝てましたわよね?姫騎士が姫より先に寝るのはどうかと思いますわよ?」
本当は魔王軍の幹部のグラドを倒したんだよ。とは言えないので黙っておく。もちろんリアンさんの件もだ。
私は苦笑いを浮かべると馬に乗った兵士がこちらに向かってくる。そこにはなぜかジギル王子と側近騎士のリアンさんもいた。まさか話しちゃったとかじゃないわよね?私は慌てて身だしなみを整えていると、血相を変えたジギル王子が話し始める。
「フレデリカ姫様!大変です!今朝方、ローゼリア王国に魔物の大群が押し寄せたとの知らせがあった。すでに鎮火しているようだけど、被害は大きいらしい。至急、ローゼリア王国に戻ったほうがいい」
「そ、そんな……ローゼリアが!?イデア急いで戻りますわよ!」
その時、私の心臓が大きく脈をうつ。そして記憶が蘇り、それは走馬灯のように私の頭の中に流れ込む。
待って……ローゼリアが魔物の大群に襲われた?前世では、そんなことなかったじゃない。じゃあ前世の私は何をしていた?その魔物の大群が発生する前にギルドの依頼で調査をしてたんじゃなかった?未然に防いでいた?
「イデア!?何してますの!?早く!」
「あ。はい!」
馬車に乗り込むとそのまま馬車は走り出す。ダメ……足に力が入らない。どうしよう……行かなきゃいけないけど……でも……私は……
「イデア?」
「……」
頭が混乱する。私はどうすれば……わからない。私が転生してここにいる意味が……あれ?私はなんで2度目をやり直してるんだっけ?その時フレデリカ姫様の叱責が私に向けられる。
「しっかりなさい!あなたらしくありませんわよ!」
「……え?」
「あなたはいつも堂々としていて、どんな困難があっても諦めずに立ち向かう強さを持っている。私はそんなあなたを尊敬しているのですわ!そんなあなたがそんなことでどうしますの!」
「フレデリカ姫……さま」
するとフレデリカ姫様は自分の隣に来るように手招きをする。私がそこに座ると彼女は優しく抱きしめてくれる。
「今はローゼリアの民のためにも、私たちができることをやりましょう。大丈夫。きっとみんな無事ですわ」
その言葉を聞くと不思議と落ち着いてきた。そうだ。私は何を弱気になっちゃっているの?私は誓ったはずじゃない。もう二度と大切な人を死なせないと。
「……ありがとうございますフレデリカ姫様。おかげで落ち着きました。」
「そう?ならよかったわ。さっきまで泣きそうな顔をしていたもの。でも、あなたは笑顔のほうが似合っていますわよ?」
「はい。頑張ります。でも……」
「でも?」
「今はちょっとだけ……甘えてもいいですか?」
そう言って彼女の胸に顔を埋める。すると頭を撫でられる感触がある。あぁ。この温もりだ。この匂いだ。この優しさだ。私がフレデリカ姫様のために戦う理由。この人が幸せになって欲しいから。だから私は守りたい。この人の未来を。
私は馬車の中で目を瞑り、心の中で決意を新たにした。
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