8 / 8
旅立
脱出戦
しおりを挟む
(よし、この丘を登りきればもう教会はすぐそこの筈だ……!)
場所を移動してから10分が経過した頃、ロクサは目的地であり回収地点のイノリー教会へ目前に迫っていた。しかし夜更けにも関わらずだんだんと人の声が大きくなり賑やかさが増してきて、丘を登りきりロクサの面食らったような顔をする。
なんとこの時間帯にも関わらず大勢の人間が教会の外で会食パーティーをしていたのだ。しかし直ぐに状況を判断し、腕時計を見ると回収時間も残り僅か。早急に教会の屋根の上に昇りオーサカに回収してもらわねばならない。
教会を囲っている垣根を利用して身を潜めながら裏手に回り、裏口の扉を見つけるとシスター服を着た中年女性がゴミ袋を持ちながら出てきて産廃のコンテナに放り投げ捨てるとそのまま裏口に戻っていく、距離が離れているものの鍵を掛けた音はしなかった。
しゃがみながら音を立てずに裏口に移動するとドアノブをゆっくりと回し、無事に中に潜入する事に成功するとか目指すは屋根に繋がる階段を探さねばいけない。
外に大勢の人間が居るならばこの教会に残っている人数は限られる、神父、シスター、そして調理人ぐらいだろう。教会の大きさから見て一軒家を一回り大きくしたぐらいの面積、従業員も多くは無いはずだ。
空軍施設に潜入した事と比べたら造作もない、仮に見つかっても此処は神聖なる場所、そんな場所で銃火器を所持している可能性もほぼ考えられぬだろう。
木製の床がミシミシと軋むのが気になるが、時間も押してきているため悠長などはしていられなかった、教会と言えば階段は何処にあるのか。大体の設置位置は予測出来る。
案の定、協会内には人が殆ど居らずに難なく階段を見つけたロクサは気を緩めることなく警戒を続けゆっくりと階段を上り始める、時間は5分を切ろうとしていた。階段を上り終えて屋根裏部屋へ到着すると後は窓を開けて屋根の上に移動すればいい。ここまで来れば然程音を立てても気付かれぬことはないだろう。
両開きの窓を両手で押し開け、身軽に屋根の上に移動すると平らな場所と言えば鐘を鳴らす部分だけ、ロクサは一旦そのへとレオンを下ろす事にした。久々に我が子を背負ったのが逃亡劇とは中々聞かぬ話だろう。
兎に角、あとは此処へオーサカが来るのを待つのみとなった。
「おやァ?なんだかお急ぎのようだなァ……ロクサ•R•ディゼル」
不意に聞こえた聞き覚えのある声、ロクサはゆっくりと振り返ると自分達が登ってきた窓から一人の男、桐生宗介が登ってきていたのだ。
「……2年、大戦が終わって2年ぶりの再会だな。大量殺人の次は誘拐とは……罪を重ねるのが好きだなお前は」
「前者はあの時のルールに沿ってやった事、後者は別に誘拐じゃない……ここに来たのは子供を迎えに来ただけだ、親が子供を迎えに来るのは当然だろう? 桐生君」
ロクサからの説明を受けると桐生は首を傾げた、何かが違う。自分の知っていたロクサと言う人物と一致しない気がしたのだ。荒々しい口調は影も形もなく、達観としている今の口調は不気味とも思えた。
……気に食わない、実に気に食わない。何よりも気に食わないことと言えば……
「お前、いつ結婚していやがったんだ!?」
そこを追求してくる辺りこの男も2年前からあまり変わっていないのだろう。出会った当初から自分の事が気に入らず突っかかってきていたあの時から。
「君と出会う前からさ、他の仲間達は皆知っていたぞ?まぁ……君だから話さなかったと言う部分も少なからずあるのだが、ね」
話せばますます自分に対する嫌がらせがヒートアップするのは目に見えて分かっていた、きっと彼は運命的出会いもせずにあれからずっと過ごしていたのだろう。しかし、桐生の身に纏っている制服には見覚えがあった。
「その制服……特別警察隊の物だろう。警察官よりも更に精鋭が集められた第6まである組織、まさかの君がその制服に袖を通しているとは思わなんだ。その役職に就くには……条件は体力テストに筆記試験、数年の警察業務の経験、それ以外に……」
ロクサは特別警察隊になる為の条件を確認しようと次々と必要な課題を口に出している最中桐生は腰に装備していた刀の柄に手を伸ばしていた。すると青白い白い気が刀の鍔に現れゆっくりと鞘から刀を抜き出すと刀身の周りに青白く光沢する氷が纏わり付いていた。
「【適格者】、つまりは人間でありながらも魔法とは異なる能力を得ることが絶対条件。……しかし氷とは……冷たい君にピッタリな属性じゃないか、桐生君」
「雑談もここまでにしようや、ロクサ•R•ディゼル……お前を倒して、俺はもっと上にのし上がる!」
氷の能力を持つ警察官、そして得物すら所持せず戦闘する手段が限られているロクサの戦いが今幕を開けようとしていた。
オーサカが到着するまで残り約1分30秒。
場所を移動してから10分が経過した頃、ロクサは目的地であり回収地点のイノリー教会へ目前に迫っていた。しかし夜更けにも関わらずだんだんと人の声が大きくなり賑やかさが増してきて、丘を登りきりロクサの面食らったような顔をする。
なんとこの時間帯にも関わらず大勢の人間が教会の外で会食パーティーをしていたのだ。しかし直ぐに状況を判断し、腕時計を見ると回収時間も残り僅か。早急に教会の屋根の上に昇りオーサカに回収してもらわねばならない。
教会を囲っている垣根を利用して身を潜めながら裏手に回り、裏口の扉を見つけるとシスター服を着た中年女性がゴミ袋を持ちながら出てきて産廃のコンテナに放り投げ捨てるとそのまま裏口に戻っていく、距離が離れているものの鍵を掛けた音はしなかった。
しゃがみながら音を立てずに裏口に移動するとドアノブをゆっくりと回し、無事に中に潜入する事に成功するとか目指すは屋根に繋がる階段を探さねばいけない。
外に大勢の人間が居るならばこの教会に残っている人数は限られる、神父、シスター、そして調理人ぐらいだろう。教会の大きさから見て一軒家を一回り大きくしたぐらいの面積、従業員も多くは無いはずだ。
空軍施設に潜入した事と比べたら造作もない、仮に見つかっても此処は神聖なる場所、そんな場所で銃火器を所持している可能性もほぼ考えられぬだろう。
木製の床がミシミシと軋むのが気になるが、時間も押してきているため悠長などはしていられなかった、教会と言えば階段は何処にあるのか。大体の設置位置は予測出来る。
案の定、協会内には人が殆ど居らずに難なく階段を見つけたロクサは気を緩めることなく警戒を続けゆっくりと階段を上り始める、時間は5分を切ろうとしていた。階段を上り終えて屋根裏部屋へ到着すると後は窓を開けて屋根の上に移動すればいい。ここまで来れば然程音を立てても気付かれぬことはないだろう。
両開きの窓を両手で押し開け、身軽に屋根の上に移動すると平らな場所と言えば鐘を鳴らす部分だけ、ロクサは一旦そのへとレオンを下ろす事にした。久々に我が子を背負ったのが逃亡劇とは中々聞かぬ話だろう。
兎に角、あとは此処へオーサカが来るのを待つのみとなった。
「おやァ?なんだかお急ぎのようだなァ……ロクサ•R•ディゼル」
不意に聞こえた聞き覚えのある声、ロクサはゆっくりと振り返ると自分達が登ってきた窓から一人の男、桐生宗介が登ってきていたのだ。
「……2年、大戦が終わって2年ぶりの再会だな。大量殺人の次は誘拐とは……罪を重ねるのが好きだなお前は」
「前者はあの時のルールに沿ってやった事、後者は別に誘拐じゃない……ここに来たのは子供を迎えに来ただけだ、親が子供を迎えに来るのは当然だろう? 桐生君」
ロクサからの説明を受けると桐生は首を傾げた、何かが違う。自分の知っていたロクサと言う人物と一致しない気がしたのだ。荒々しい口調は影も形もなく、達観としている今の口調は不気味とも思えた。
……気に食わない、実に気に食わない。何よりも気に食わないことと言えば……
「お前、いつ結婚していやがったんだ!?」
そこを追求してくる辺りこの男も2年前からあまり変わっていないのだろう。出会った当初から自分の事が気に入らず突っかかってきていたあの時から。
「君と出会う前からさ、他の仲間達は皆知っていたぞ?まぁ……君だから話さなかったと言う部分も少なからずあるのだが、ね」
話せばますます自分に対する嫌がらせがヒートアップするのは目に見えて分かっていた、きっと彼は運命的出会いもせずにあれからずっと過ごしていたのだろう。しかし、桐生の身に纏っている制服には見覚えがあった。
「その制服……特別警察隊の物だろう。警察官よりも更に精鋭が集められた第6まである組織、まさかの君がその制服に袖を通しているとは思わなんだ。その役職に就くには……条件は体力テストに筆記試験、数年の警察業務の経験、それ以外に……」
ロクサは特別警察隊になる為の条件を確認しようと次々と必要な課題を口に出している最中桐生は腰に装備していた刀の柄に手を伸ばしていた。すると青白い白い気が刀の鍔に現れゆっくりと鞘から刀を抜き出すと刀身の周りに青白く光沢する氷が纏わり付いていた。
「【適格者】、つまりは人間でありながらも魔法とは異なる能力を得ることが絶対条件。……しかし氷とは……冷たい君にピッタリな属性じゃないか、桐生君」
「雑談もここまでにしようや、ロクサ•R•ディゼル……お前を倒して、俺はもっと上にのし上がる!」
氷の能力を持つ警察官、そして得物すら所持せず戦闘する手段が限られているロクサの戦いが今幕を開けようとしていた。
オーサカが到着するまで残り約1分30秒。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~
荒井竜馬
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。
=========================
<<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>>
参加時325位 → 現在5位!
応援よろしくお願いします!(´▽`)
=========================
S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。
ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。
崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。
そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。
今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。
そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。
それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。
ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。
他サイトでも掲載しています。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界帰りの勇者は現代社会に戦いを挑む
大沢 雅紀
ファンタジー
ブラック企業に勤めている山田太郎は、自らの境遇に腐ることなく働いて金をためていた。しかし、やっと挙げた結婚式で裏切られてしまう。失意の太郎だったが、異世界に勇者として召喚されてしまった。
一年後、魔王を倒した太郎は、異世界で身に着けた力とアイテムをもって帰還する。そして自らを嵌めたクラスメイトと、彼らを育んた日本に対して戦いを挑むのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる