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旅立
戦闘開始
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「久しぶりだな……親愛なる友よ」
「……ロ、……ロクサなのか?」
レオンに話を聞いてお冷を持ちながらも自分に用があると告げていた男の席に戸惑いながら座るダグラスは困惑していた。容姿的に確かに彼だ、6年の年月を過ぎたとしても面影は残っている。ただ確実に異なっている部分が口調と雰囲気だ。自分が知りうる彼は誰かに呼んでもらうよりも直接会いに出向き抱擁してくれるとても明るく五月蝿い奴だった。
しかし、目の前にいる彼は以前の彼とはまるで別人のようだった。そう思っているとロクサが口を開く。
「正真正銘、私自身さ。口調とかが変わって驚いているだろう。……これから話す、6年間の出来事を聞けば嫌でもこんな話し方になるさ」
平穏に暮らしていたわけなどあるまい、恐らく彼は別れたあの日から壮絶な日々を送っていたのだろう。ダグラスは複雑な気持ちを抱きながらも語り始めたロクサの話に耳を傾けた。
その様子を厨房からこっそりとイデリアとレオンが様子伺っていた。
「ダグラスの……お友達なんでしょうか」
「……」
レオンの問いかけにイザリアは何を言わずに両肩に手を置く、自分の口から言うべきなのか、彼の口から直接言われるべきなのか。頭の良い子に育てたレオンでも、まだ子供だ。事実を知れば混乱してしまうかもしれない、彼女はそう思っていた。
酒場全体の明るい雰囲気が何故か少し重たくなると、新たな来客がドアを蹴破りゾロゾロと店内へと侵入してきた。入ってきたのは皆若い男性ばかり、手には粗末ではあるものの得物が握られていた。
「おおぃ!聞いたぜぇ?ここの酒場かなり儲かってるらしいじゃねぇか、荒らされたくなけりゃ売上金全部差し出せやコラァッ!」
この祭りに便乗し稼いでいる売上を強奪するゴロツキの一人が背負っていた大剣を振り下ろすと木製のテーブルを真っ二つにし料理や皿が床に落ちると次々と店の中を荒らし始める。
「な、なんて事を……!ロ、ロクサ……少し待っててくれ、今あいつらに渡す金を「渡さなくていい」
その非道な行為をなんとか収めようとダグラスは席から立ち上がり、今日の売り上げを全て差しだそうと行動しようとするが途中でロクサの言葉が自分の言葉を遮る。
「見ろ、……戦士が立ち上がったぞ」
「せ、戦士って……あぁっ…!」
ロクサの見つめる視線をダグラスは追い、その姿に驚愕する。ゴロツキ集団に立ち向かわんとしているのは偶然この酒場に居合わせた凄腕の傭兵でも戦闘経験豊富な国の兵士でもなかった。
「や、やめろぉ! こ、これ以上お店を荒らすならよ、容赦しないぞぉ!」
全てが震え声、両目からはポロポロと涙を流しながらも怒りに燃えるまだ幼きレオンの姿がそこにあった。しかしその気持ちは素人でも分かる恐怖に怯えているのが手に取るように分かる。
「なんだぁ?このガキは……おい、少し痛めつけてやれ!」
そう言うと足の筋肉が発達した男が恐怖で動けぬレオンをサッカーボールに見立て強烈な蹴りを行おうとする。レオンを口を開けて身体を震わせながらも逃げなければと脳から信号を送るも身体はその信号を上手くキャッチ出来ずにいた。
「レオン!!」
「待て、ダグラス。彼が私と彼女の息子ならば、大丈夫だ」
レオンを守りに全力で駆け出すダグラスだったが、ロクサに腕一本肩を掴まれただけで止められてしまう。その通り、レオンはロクサと、あの彼女の息子だ。
ゴロツキの強烈な蹴りをガードも出来ずに腹部にクリーンヒットすると、レオンは木製の壁を突き抜けて倉庫の部屋まで吹っ飛ばされてしまった。
「……えっ、流石に弱くないか?」
威勢を張った割に簡単に倒されてしまったレオン、誰もがこの台詞は蹴ったゴロツキだと思われるだろうが……この台詞、実はロクサなのである。
「……ロ、……ロクサなのか?」
レオンに話を聞いてお冷を持ちながらも自分に用があると告げていた男の席に戸惑いながら座るダグラスは困惑していた。容姿的に確かに彼だ、6年の年月を過ぎたとしても面影は残っている。ただ確実に異なっている部分が口調と雰囲気だ。自分が知りうる彼は誰かに呼んでもらうよりも直接会いに出向き抱擁してくれるとても明るく五月蝿い奴だった。
しかし、目の前にいる彼は以前の彼とはまるで別人のようだった。そう思っているとロクサが口を開く。
「正真正銘、私自身さ。口調とかが変わって驚いているだろう。……これから話す、6年間の出来事を聞けば嫌でもこんな話し方になるさ」
平穏に暮らしていたわけなどあるまい、恐らく彼は別れたあの日から壮絶な日々を送っていたのだろう。ダグラスは複雑な気持ちを抱きながらも語り始めたロクサの話に耳を傾けた。
その様子を厨房からこっそりとイデリアとレオンが様子伺っていた。
「ダグラスの……お友達なんでしょうか」
「……」
レオンの問いかけにイザリアは何を言わずに両肩に手を置く、自分の口から言うべきなのか、彼の口から直接言われるべきなのか。頭の良い子に育てたレオンでも、まだ子供だ。事実を知れば混乱してしまうかもしれない、彼女はそう思っていた。
酒場全体の明るい雰囲気が何故か少し重たくなると、新たな来客がドアを蹴破りゾロゾロと店内へと侵入してきた。入ってきたのは皆若い男性ばかり、手には粗末ではあるものの得物が握られていた。
「おおぃ!聞いたぜぇ?ここの酒場かなり儲かってるらしいじゃねぇか、荒らされたくなけりゃ売上金全部差し出せやコラァッ!」
この祭りに便乗し稼いでいる売上を強奪するゴロツキの一人が背負っていた大剣を振り下ろすと木製のテーブルを真っ二つにし料理や皿が床に落ちると次々と店の中を荒らし始める。
「な、なんて事を……!ロ、ロクサ……少し待っててくれ、今あいつらに渡す金を「渡さなくていい」
その非道な行為をなんとか収めようとダグラスは席から立ち上がり、今日の売り上げを全て差しだそうと行動しようとするが途中でロクサの言葉が自分の言葉を遮る。
「見ろ、……戦士が立ち上がったぞ」
「せ、戦士って……あぁっ…!」
ロクサの見つめる視線をダグラスは追い、その姿に驚愕する。ゴロツキ集団に立ち向かわんとしているのは偶然この酒場に居合わせた凄腕の傭兵でも戦闘経験豊富な国の兵士でもなかった。
「や、やめろぉ! こ、これ以上お店を荒らすならよ、容赦しないぞぉ!」
全てが震え声、両目からはポロポロと涙を流しながらも怒りに燃えるまだ幼きレオンの姿がそこにあった。しかしその気持ちは素人でも分かる恐怖に怯えているのが手に取るように分かる。
「なんだぁ?このガキは……おい、少し痛めつけてやれ!」
そう言うと足の筋肉が発達した男が恐怖で動けぬレオンをサッカーボールに見立て強烈な蹴りを行おうとする。レオンを口を開けて身体を震わせながらも逃げなければと脳から信号を送るも身体はその信号を上手くキャッチ出来ずにいた。
「レオン!!」
「待て、ダグラス。彼が私と彼女の息子ならば、大丈夫だ」
レオンを守りに全力で駆け出すダグラスだったが、ロクサに腕一本肩を掴まれただけで止められてしまう。その通り、レオンはロクサと、あの彼女の息子だ。
ゴロツキの強烈な蹴りをガードも出来ずに腹部にクリーンヒットすると、レオンは木製の壁を突き抜けて倉庫の部屋まで吹っ飛ばされてしまった。
「……えっ、流石に弱くないか?」
威勢を張った割に簡単に倒されてしまったレオン、誰もがこの台詞は蹴ったゴロツキだと思われるだろうが……この台詞、実はロクサなのである。
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