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<第五章 第3話>

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  <第五章 第3話>
 ルビー・クールとハンスは、死体を踏まないように気をつけながら、楽屋がくやのドアに向かった。
 ドアの両脇に、立った。背中を壁につけて。
 左右のリボルバーの銃口を、上に向けながら。
 待った。警備役のチンピラが、来るのを。
 発砲音が聞こえたため、来るはずだ。非常事態だと認識して。
 ハンスの残弾数は、左右のリボルバーで合計十発。
 ルビー・クールの残弾数は、左右で計八発。
 ブルーヒルの警備役のチンピラは、十名。
 だが、そのうち四名は、劇場の外側にいる。玄関の外側に二名、裏口ドアの外側に二名だ。
 よって、駆けつけるのは、玄関ホールの四名と、裏口内側の二名、計六名だ。
 足音が聞こえた。
 ドアの外で、足音が止まった。
 絶叫した。駆けつけたチンピラが。
 「ハイエナ様!」
 そう叫んで、室内に飛び込んだ。
 四名の警備役が。
 発砲した。ルビー・クールとハンスが。同時に、左右の手のリボルバーで。
 一秒で、四名を射殺した。後頭部を撃ち抜いて。
 待った。裏口内側の警備役のチンピラが来るのを。
 ドア脇の壁に、背中をつけて。銃口を上に向けながら。
 十数秒後、声が聞こえた。
 ドアの外側から。
 「なんだ、これは!」
 「死体だらけだ!」
 次の瞬間だった。
 ルビー・クールが、躍り出た。姿勢を低くし、しゃがみ込みながら。
 左右のリボルバーを、同時に発砲した。
 二名のひたいを撃ち抜き、射殺した。
 「お見事です。ルビー様」
 手早く、失神中のハイエナの両手首を縛った。荷造り用のひもで。加えて、両足首も縛った。
 縛り終えると、ハンスに視線を向けた。
 「次は、正面玄関外側の二名よ」
 ルビー・クールとハンスは、玄関ホールに移動した。
 呼吸を整えた。
 「右と左、どちらがいい?」
 ルビー・クールが、尋ねた。ハンスに。
 「右手のほうが命中率が高いので、左のドアのほうが……」
 「わかったわ。あたしは右側のドアでいいわ」
 そう言いながら、右手で、ドアノブをつかんだ。
 「いくわよ」
 「はい」
 次の瞬間、玄関ドアを開けた。内側に。
 その直後、発砲した。ルビー・クールは、左手のリボルバーで。
 ハンスは、右手のリボルバーで。左手で、玄関ドアを内側に開けながら。
 射殺した。玄関の警備役二名を。
 彼らは、拳銃をホルスターから抜く間も、なかった。
 ルビー・クールは、玄関に立った。右手を挙げて、合図をした。
 近くに停車していた馬車から、男が五名、降りた。
 三十歳代前半の男が、声をかけてきた。ヘンドリックだ。彼も、ローランド邸の執事だ。
 「ルビー・ザ・サード様、ご無事で、なによりです」
 「ええ。ありがとう。わるいけど、死体を、移動させてくれないかしら」
 そう言いながら、左手を振って、合図した。
 馬車が一台、走り出した。ブルーヒルの裏口の駐車場に向かって。
 サファイア・ゴールドたちが乗車した馬車だ。
 彼女たちが、裏口外側の警備役二名を、殺す手はずだ。
 これで、ブルーヒルを根城にするチンピラは、全員死ぬことになる。
 マイヤー邸で拘束したチンピラ三名は、ハイエナの親衛隊だ。彼らのもとには、二十歳代の娼婦三名が向かった。
 すでにもう、彼らは殺されているはずだ。彼女たちの手によって。
 夕方から夜にかけて、つまり、もうそろそろ、マイヤー氏は、自宅に戻ってくるはずだ。監視役のチンピラたちと共に。
 監視役のチンピラたちは、五名だ。彼らは、高利貸し部門のチンピラで、拳銃は所持していない。
 そのチンピラ五名も、娼婦三名が、殺害する予定だ。
 彼女たちは、この手の作戦に慣れた武闘派だ。問題なく、今回の作戦をこなすだろう。
 マイヤー氏がき集めた資金は、エメラルド・グリーンへの慰謝料として、没収する予定だ。それで、マイヤー氏を放免ほうめんする。厳重に、口止めした上で。
 これで、あとはハイエナだけだ。
 ルビー・クールが、ハンスに声をかけた。
 「次は、顧客名簿の確保よ」

   第六章「悪党死すべし」に続く
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