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<第二章 第4話>
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<第二章 第4話>
チンピラたちのボディ・チェックをし、武器を全部奪った。そのあと、荷造り用の紐で、両手首を、後ろ手で縛った。それに、両足首も。
ソファー・セットのローテーブルを移動させ、広い空間を作った。
失神したままのチンピラ三名を、そこに転がした。
鋼鉄製雨傘の先端で、チンピラたちの脇腹を小突いた。
何度か小突いているうちに、意識を取り戻した。
チンピラの一人が、自分たちの置かれた状況に、気づいた。
怒鳴り散らした。
「このアマ! こんなことして、ただですむと思ってるのか!」
その言葉を無視し、ルビー・クールは、冷ややかに見下ろした。兄貴分の男を。
「あなた、名前は?」
「オレ様は、ギュンター様だ」
「それで、どこのマフィアかしら?」
普通のチンピラは、拳銃を持っていない。所持している武器は、せいぜいナイフ程度だ。
よって、拳銃を所持している以上、どこかのマフィア組織に属している。
もっとも、拳銃を所持していたのは、一人だけだったが。
残りの二名は、小型ナイフと、折りたたみ式のカミソリだ。
したがって彼らは、武闘派集団ではない。
「ハイエナ団だ」
「それって、どこの系列かしら?」
「系列?」
系列という単語の意味が、わからないようだった。
噛み砕いて、問いかけることにした。
「あなたたちのボスは、ハイエナと呼ばれているのね」
「違う。黄金のハイエナだ」
「彼は金髪なの?」
「それだけじゃねえ。いつも首に、ゴールドの太いチェーンをかけている。うちのボスは、金儲けの天才なんだ」
「それで、黄金のハイエナのボスは、誰?」
「聞いて驚け!」
突然、得意げな顔をした。ギュンターが。
「コヨーテ様だ。銀狼会三大幹部の一人の! 銀狼会は、帝都最大のマフィアだ!」
「四大幹部の一人じゃないの?」
「四大幹部だった男の一人は、すでに死んだ。だから、三大幹部だ」
「クレイジー・ドッグね。彼は、昨年十二月の帝都大乱の最中に、殺害された。だけど、彼の縄張りは、エルザという女が引き継いだでしょ。彼女が、四大幹部の一人になったんじゃないのかしら」
「クレイジー・ドッグの縄張りは、息子が引き継ぐべきだ」
「長男のクルトも、殺されたわ。クレイジー・ドッグ殺害の二日後に。そのとき、彼らの部下たち百名以上が殺傷されて、彼らの勢力は消滅したわ」
(※著者注:クレイジー・ドッグ親子との戦いは、シリーズ第五弾<救出編>に登場)
パール・スノーが、口をはさんだ。
「ずいぶんと詳しいのね。ひょっとして、現場にいたとか?」
そう言って、イヤらしい笑みを浮かべた。
冷ややかに、ルビー・クールが答えた。
「なにも話すつもりは、ないわ。帝都大乱の二週間、あたしが、どこで何をしていたのかについて」
弟分の一人が、声を絞り出した。青ざめた表情で。
「そういえば、噂で聞いたことがある。クレイジー・ドッグの縄張りを乗っ取った女、ジャッカルの娘には、女の相棒がいた、と。その女は、凄腕の拳銃使いだが、拳銃を使わなくとも、男たちをバッタバッタと倒したとか」
「それって、あんたのこと?」
パール・スノーの問いに、無表情のまま答えた。
「ノーコメントよ」
沈黙が、流れた。数秒間。
全員が、青ざめていた。ルビー・クール以外。
口を開いた。ルビー・クールが。
「それじゃあ、拷問を始めるわね。痛い思いをしたくなかったら、早く吐くことね」
「だれが、吐くか! 仲間は、絶対に裏切らねえ」
そう、ギュンターが強がった。
左手のリストバンドから、釘を一本、取り出した。魔法詠唱しながら。釘の先端は、針のように鋭く加工されている。
その釘を、見せつけた。
「これは、魔法の釘よ」
「嘘つけ! どう見ても、本物だろ!」
「一流の魔女は、魔法で本物を出すことができるのよ」
もちろん、ハッタリだ。
魔法は、すべて幻だ。
だが、幻痛による心臓麻痺で、人間を殺すことができる。一流の魔女になれば。
もっとも、ルビー・クールの魔法力では、弱すぎて、人は殺せないが。
言葉を続けた。
「おとなしく吐かなければ、あなたの目を、この魔法の釘で、潰すわよ」
チンピラたちのボディ・チェックをし、武器を全部奪った。そのあと、荷造り用の紐で、両手首を、後ろ手で縛った。それに、両足首も。
ソファー・セットのローテーブルを移動させ、広い空間を作った。
失神したままのチンピラ三名を、そこに転がした。
鋼鉄製雨傘の先端で、チンピラたちの脇腹を小突いた。
何度か小突いているうちに、意識を取り戻した。
チンピラの一人が、自分たちの置かれた状況に、気づいた。
怒鳴り散らした。
「このアマ! こんなことして、ただですむと思ってるのか!」
その言葉を無視し、ルビー・クールは、冷ややかに見下ろした。兄貴分の男を。
「あなた、名前は?」
「オレ様は、ギュンター様だ」
「それで、どこのマフィアかしら?」
普通のチンピラは、拳銃を持っていない。所持している武器は、せいぜいナイフ程度だ。
よって、拳銃を所持している以上、どこかのマフィア組織に属している。
もっとも、拳銃を所持していたのは、一人だけだったが。
残りの二名は、小型ナイフと、折りたたみ式のカミソリだ。
したがって彼らは、武闘派集団ではない。
「ハイエナ団だ」
「それって、どこの系列かしら?」
「系列?」
系列という単語の意味が、わからないようだった。
噛み砕いて、問いかけることにした。
「あなたたちのボスは、ハイエナと呼ばれているのね」
「違う。黄金のハイエナだ」
「彼は金髪なの?」
「それだけじゃねえ。いつも首に、ゴールドの太いチェーンをかけている。うちのボスは、金儲けの天才なんだ」
「それで、黄金のハイエナのボスは、誰?」
「聞いて驚け!」
突然、得意げな顔をした。ギュンターが。
「コヨーテ様だ。銀狼会三大幹部の一人の! 銀狼会は、帝都最大のマフィアだ!」
「四大幹部の一人じゃないの?」
「四大幹部だった男の一人は、すでに死んだ。だから、三大幹部だ」
「クレイジー・ドッグね。彼は、昨年十二月の帝都大乱の最中に、殺害された。だけど、彼の縄張りは、エルザという女が引き継いだでしょ。彼女が、四大幹部の一人になったんじゃないのかしら」
「クレイジー・ドッグの縄張りは、息子が引き継ぐべきだ」
「長男のクルトも、殺されたわ。クレイジー・ドッグ殺害の二日後に。そのとき、彼らの部下たち百名以上が殺傷されて、彼らの勢力は消滅したわ」
(※著者注:クレイジー・ドッグ親子との戦いは、シリーズ第五弾<救出編>に登場)
パール・スノーが、口をはさんだ。
「ずいぶんと詳しいのね。ひょっとして、現場にいたとか?」
そう言って、イヤらしい笑みを浮かべた。
冷ややかに、ルビー・クールが答えた。
「なにも話すつもりは、ないわ。帝都大乱の二週間、あたしが、どこで何をしていたのかについて」
弟分の一人が、声を絞り出した。青ざめた表情で。
「そういえば、噂で聞いたことがある。クレイジー・ドッグの縄張りを乗っ取った女、ジャッカルの娘には、女の相棒がいた、と。その女は、凄腕の拳銃使いだが、拳銃を使わなくとも、男たちをバッタバッタと倒したとか」
「それって、あんたのこと?」
パール・スノーの問いに、無表情のまま答えた。
「ノーコメントよ」
沈黙が、流れた。数秒間。
全員が、青ざめていた。ルビー・クール以外。
口を開いた。ルビー・クールが。
「それじゃあ、拷問を始めるわね。痛い思いをしたくなかったら、早く吐くことね」
「だれが、吐くか! 仲間は、絶対に裏切らねえ」
そう、ギュンターが強がった。
左手のリストバンドから、釘を一本、取り出した。魔法詠唱しながら。釘の先端は、針のように鋭く加工されている。
その釘を、見せつけた。
「これは、魔法の釘よ」
「嘘つけ! どう見ても、本物だろ!」
「一流の魔女は、魔法で本物を出すことができるのよ」
もちろん、ハッタリだ。
魔法は、すべて幻だ。
だが、幻痛による心臓麻痺で、人間を殺すことができる。一流の魔女になれば。
もっとも、ルビー・クールの魔法力では、弱すぎて、人は殺せないが。
言葉を続けた。
「おとなしく吐かなければ、あなたの目を、この魔法の釘で、潰すわよ」
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