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第三章 真夜中の暗殺作戦ふたたび<第1話>
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<第三章 第1話>
生後三日目の真夜中。どす黒い感情を感じて、レイニーは目を覚ました。
今夜も、暖炉の近くで、椅子に腰かけたスマーティアに抱かれている。スマーティアは、真夜中過ぎにニーティアと交代する。そのため、まだ零時前だ。
とはいえ、皆、午後八時頃には就寝するため、全員熟睡している。スマーティアは今夜も、居眠りをしている。
殺意を帯びたドス黒い感情は、昨晩よりも強かった。それに、窓の外から漂ってくるだけではない。どうも、屋根の上にも、いるようだ。
暖炉の火が、弱まった。水が降ってきたようだ。解けた雪が、暖炉の煙突から落ちてきたのか。
その直後だった。
ドサッと、大量の雪が落ちてきた。暖炉の中に。
暖炉の火が、消えた。
真っ暗になった。暖炉の周囲が。
おかしい。煙突から、大量の雪が落ちてくるなんて。
わざとだ。屋根の上の刺客が、雪を落として暖炉の火を消したのだ。
だが、そんなことをして、どうするのか。
暖炉の周囲は暗くなったが、室内全体が暗闇に包まれたわけではない。なぜなら、室内の壁数カ所には、高い位置に燭台が設置してあり、ろうそくの火が燃えている。そのため、視界は確保できる。
しばらく、待った。次の展開を。スマーティアが目を覚ましてくれればいいのだが、彼女は居眠りを続けている。
どす黒い感情が、強まってきた。二方向から漂ってきている。
一方は、窓から。
もう一方は、天井。
いや、天井だけではない。
三方向目が、現れた。
降りてきている。煙突から。
暖炉の上には、壁に半分埋め込まれたレンガ造りの煙突がある。
不気味な殺気が、煙突の中から漏れている。
その殺気は、ゆっくりと降りてきている。煙突の中を。
ありえない。煙突は、細すぎる。成人が入れるような太さではない。
人間ではないのか?
今度の刺客は。
得体の知れない不気味な殺気に、身の毛がよだった。
どうする?
赤んぼうの自分にできることは、泣いて大人たちを起こすことだけだ。
だが泣けば、大人たち全員の視線が、自分に集中してしまう。
それは、刺客に対して、隙をつくることになる。
どうするべきか。
レイニーが判断に迷っているうちに、煙突の中の殺気が、さらに降りてきた。ゆっくりと。
もう少しだ。もう少しで、暖炉の中に降り立つはずだ。得体の知れない殺気の正体が。
レイニーは身をよじって、視線を暖炉に向けた。
待った。殺気の正体が現れるのを。
泣くのは、確認してからだ。殺気の正体を。
目をこらしていると、暗闇に目が慣れてきた。壁際の燭台の灯りのおかげで、完全な暗闇ではないせいもある。
そのときだった。
ドサッという音と共に、降り立った。人型の生き物が。
大きさは、とても小さい。幼児くらいの大きさだ。五歳児くらいの大きさか。
だが、幼児ではない。
刺客だ。
顔中に、ひげを生やしている。まるで、サンタクロースのように。
小人の刺客だ。
コビトの刺客が、背後に右手を回した。
短剣を抜いた。幅広で、重量がありそうだ。
短剣といっても、彼にとっては大剣だ。
ニタリ、と笑った。コビトの刺客が。レイニーを見て。
強烈な殺意を感じた。それに、おぞましい欲望が入り交じったドス黒い感情を。
一歩、踏み出した。スマーティアに向かって。
その瞬間、泣いた。レイニーが。絶叫するように。まるで、火がついたかのように。
スマーティアが、目を覚ました。
次の瞬間、コビトの刺客が走り出した。彼女のほうへ。剣を振り上げながら。
彼女も、気づいた。コビトの刺客に。
悲鳴をあげた。スマーティアが。
あっという間に、距離を詰めた。コビトの刺客が。スマーティアとの距離を。
振り下ろそうとした。剣を。コビトの刺客が、スマーティアの足に。
その直後だった。
吹っ飛んだ。コビトの刺客が。スマーティアが蹴り飛ばしたのだ。右足で。
だがその反動で、腰かけていた椅子が後方にひっくり返った。
スマーティアは上半身を丸めて、倒れた衝撃からレイニーを守ろうとした。
直後に、叫んだ。
「ニーティア! ニーティア! 刺客よ!」
その直後だった。
現れた。煙突から暖炉の中へ。二人目のコビト刺客が。あごひげを生やした凶悪そうな顔つきだ。
背後から、剣を取り出した。
あごひげコビト刺客が、奇声をあげて襲いかかってきた。剣を振り上げて。
まだ椅子ごと後方に倒れたままのスマーティアに。
いや、彼女が抱いているレイニーに。
絶体絶命。
絶望で、頭の中が真っ白になった。
生後三日目の真夜中。どす黒い感情を感じて、レイニーは目を覚ました。
今夜も、暖炉の近くで、椅子に腰かけたスマーティアに抱かれている。スマーティアは、真夜中過ぎにニーティアと交代する。そのため、まだ零時前だ。
とはいえ、皆、午後八時頃には就寝するため、全員熟睡している。スマーティアは今夜も、居眠りをしている。
殺意を帯びたドス黒い感情は、昨晩よりも強かった。それに、窓の外から漂ってくるだけではない。どうも、屋根の上にも、いるようだ。
暖炉の火が、弱まった。水が降ってきたようだ。解けた雪が、暖炉の煙突から落ちてきたのか。
その直後だった。
ドサッと、大量の雪が落ちてきた。暖炉の中に。
暖炉の火が、消えた。
真っ暗になった。暖炉の周囲が。
おかしい。煙突から、大量の雪が落ちてくるなんて。
わざとだ。屋根の上の刺客が、雪を落として暖炉の火を消したのだ。
だが、そんなことをして、どうするのか。
暖炉の周囲は暗くなったが、室内全体が暗闇に包まれたわけではない。なぜなら、室内の壁数カ所には、高い位置に燭台が設置してあり、ろうそくの火が燃えている。そのため、視界は確保できる。
しばらく、待った。次の展開を。スマーティアが目を覚ましてくれればいいのだが、彼女は居眠りを続けている。
どす黒い感情が、強まってきた。二方向から漂ってきている。
一方は、窓から。
もう一方は、天井。
いや、天井だけではない。
三方向目が、現れた。
降りてきている。煙突から。
暖炉の上には、壁に半分埋め込まれたレンガ造りの煙突がある。
不気味な殺気が、煙突の中から漏れている。
その殺気は、ゆっくりと降りてきている。煙突の中を。
ありえない。煙突は、細すぎる。成人が入れるような太さではない。
人間ではないのか?
今度の刺客は。
得体の知れない不気味な殺気に、身の毛がよだった。
どうする?
赤んぼうの自分にできることは、泣いて大人たちを起こすことだけだ。
だが泣けば、大人たち全員の視線が、自分に集中してしまう。
それは、刺客に対して、隙をつくることになる。
どうするべきか。
レイニーが判断に迷っているうちに、煙突の中の殺気が、さらに降りてきた。ゆっくりと。
もう少しだ。もう少しで、暖炉の中に降り立つはずだ。得体の知れない殺気の正体が。
レイニーは身をよじって、視線を暖炉に向けた。
待った。殺気の正体が現れるのを。
泣くのは、確認してからだ。殺気の正体を。
目をこらしていると、暗闇に目が慣れてきた。壁際の燭台の灯りのおかげで、完全な暗闇ではないせいもある。
そのときだった。
ドサッという音と共に、降り立った。人型の生き物が。
大きさは、とても小さい。幼児くらいの大きさだ。五歳児くらいの大きさか。
だが、幼児ではない。
刺客だ。
顔中に、ひげを生やしている。まるで、サンタクロースのように。
小人の刺客だ。
コビトの刺客が、背後に右手を回した。
短剣を抜いた。幅広で、重量がありそうだ。
短剣といっても、彼にとっては大剣だ。
ニタリ、と笑った。コビトの刺客が。レイニーを見て。
強烈な殺意を感じた。それに、おぞましい欲望が入り交じったドス黒い感情を。
一歩、踏み出した。スマーティアに向かって。
その瞬間、泣いた。レイニーが。絶叫するように。まるで、火がついたかのように。
スマーティアが、目を覚ました。
次の瞬間、コビトの刺客が走り出した。彼女のほうへ。剣を振り上げながら。
彼女も、気づいた。コビトの刺客に。
悲鳴をあげた。スマーティアが。
あっという間に、距離を詰めた。コビトの刺客が。スマーティアとの距離を。
振り下ろそうとした。剣を。コビトの刺客が、スマーティアの足に。
その直後だった。
吹っ飛んだ。コビトの刺客が。スマーティアが蹴り飛ばしたのだ。右足で。
だがその反動で、腰かけていた椅子が後方にひっくり返った。
スマーティアは上半身を丸めて、倒れた衝撃からレイニーを守ろうとした。
直後に、叫んだ。
「ニーティア! ニーティア! 刺客よ!」
その直後だった。
現れた。煙突から暖炉の中へ。二人目のコビト刺客が。あごひげを生やした凶悪そうな顔つきだ。
背後から、剣を取り出した。
あごひげコビト刺客が、奇声をあげて襲いかかってきた。剣を振り上げて。
まだ椅子ごと後方に倒れたままのスマーティアに。
いや、彼女が抱いているレイニーに。
絶体絶命。
絶望で、頭の中が真っ白になった。
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