恋演技

第4章第5話 はずかしすぎちゃう

　そのときだった。
　部室のドアが開ひらいた。
　おおっ、という歓声があがった。
　部長と、眼鏡をかけた上級生がいた。
　「コイエンギ、コイエンギ、いいねえ」
　部長が楽しそうな声をあげた。
　「これはスクープですね」
　眼鏡の上級生が、スマホを取り出して、写メを撮り始めた。
　ヤンキー先輩が、舌を大きく伸ばして、蛇のように動かした。
　「おとなしくしろ！　すぐに気持ちよくしてやるぜ」
　そう言ってから、ボクの頬ほおをなめ始めた。
　「いや！　やめて！」
　おおっ、と新聞部がうなった。
　「迫真の演技ですね」
　そのとき、ヨシツネ先輩とランスロット先輩が、現れた。写真部と映研を引き連れて。
　写真と、動画を撮られた。
　「演技中の絵も撮れたし、インタビューにしようか」
　その部長の一言で、解放された。
　助かった、と思った。
　だけど、そのあとのほうが、超がつくほど、はずかしかった。
　セーラー服を着た状態で、写真部に何枚も写真を撮とられちゃった。いろいろなポーズを指示されて。映研にも、動画を撮られちゃった。
　ボクの高校生活は、どうなっちゃうの？　こんな女装写真や動画が、全校中に広まったら。
　ああ、どうしよう。こまっちゃう。