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<エピローグ 第4話>
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<エピローグ 第4話>
水曜日から始まる予定だった戒厳令の施行や、帝国陸軍の治安出動は、取りやめになった。
警察大臣が、治安回復宣言をしたからだ。帝都大乱十一日目、火曜日の夕方に、記者会見を開いて。
翌日の水曜日。新聞の一面の見出しは、全紙、治安回復宣言だった。
帝都大乱九日目、日曜日の夕方の段階では、無産者革命党の支配地域は、三エリア十二ブロックに、広がっていた。
具体的には、南二区の南西エリアと南東エリア、南三区南西エリアだ。それぞれのエリアの南部地区、第七ブロックから第九ブロックの合計十二ブロックだ。
もちろん、十二ブロック全体を、一面的に支配していたわけではない。半分弱ほどの面積を、飛び飛びに、支配していた。
支配できなかった地区は、帝都最大マフィアの銀狼会と、帝都第二勢力のマフィア鉄血会の縄張り、それに、老舗革命団体である労農革命党の統治地域だ。労農革命党は、一部の地区にバリケードを作り、立てこもり続けていた。
だが、日曜日の深夜から、月曜日の未明にかけて、状況が激変した。
共和国特殊工作部隊の全小隊が、一斉に、帝都から撤退したからだ。ルビー・クールの差し金により。
無産者革命党の各師団は、それぞれ、特殊工作部隊一個小隊から、支援を受けていた。
南二区南西エリア、南二区南東エリア、南三区南西エリアは、無産者革命党の第四師団、第五師団、第七師団が、それぞれ、担当していた。この三つの師団は、師団幹部たちが健在で、加えて、特殊工作部隊の小隊長とも、関係が良好だった。特殊工作部隊小隊長の助言を受け入れて、支配地区の防衛体制を築いていた。
しかし突然、月曜日の朝、共和国特殊工作部隊が、忽然と消えた。なんの前触れもなく。
月曜日の朝九時から、一斉攻撃が、始まった。銃で武装した警官隊によって。
ダリアと、自由革命党大幹部である彼女の祖父を通じて、自由革命党員の副署長に、情報が伝えられていたからだ。共和国特殊工作部隊が、帝都から撤退した、と。
この日、警官隊が攻撃対象にしたのは、無産者革命党第四師団と、第七師団だ。南二区南西エリアと、南三区南西エリアの両方から、挟撃した。
警官隊の戦力は、二つのエリアとも、それぞれ、五百名ずつだ。
無産者革命党の各師団は、保有する拳銃の数は、五十挺プラスアルファだ。
パニックに陥った。無産者革命党は。警官隊の激しい銃撃で。
頼りにしていた共和国特殊工作部隊も、消えていた。
特殊工作部隊員がいれば、狙撃により、警官隊の前進を止めることができた。
だが、それはもう、できない。
敗走した。為す術なく。南二区南東エリアへ。第四師団と、第七師団が。
南二区南東エリアで、第五師団と合流した。それにより、戦力は、一万人近くにまで増加した。
その日の夕方、警察大臣補佐官のルーデンドルフのもとに、報告が届いた。南三区警察署が、同区から、無産者革命党を一掃した、と。
続いて、南二区警察署からも、報告が入った。南二区南西エリアから、無産者革命党を一掃した、と。
翌火曜日、午前九時。ルーデンドルフが、命じた。一斉攻撃の開始を。
彼が再編成した三千名の警官隊は、南二区南東エリアの第七、第八、第九ブロックで、北側から、南へと進軍した。
南二区と南三区の警官隊それぞれ五百名ずつが、第七ブロックの西側と、第九ブロックの東側を固めた。
もはや、無産者革命党は、逃げ道をふさがれた。袋のネズミ状態となった。
しかし、徹底抗戦した。無産者革命党は。
だがそれも、昼頃までだった。昼過ぎには、三千名以上の死傷者を出し、南へと敗走した。
帝都の周囲は、十メートルを超える城壁に囲まれている。南二区南東エリアには、帝都の外に出る門は、ない。
五千名以上の無産者革命党員が、帝都の南側城壁に追い詰められ、降伏した。
無産者革命党三個師団の師団長、副師団長、師団参謀、計九名のうち、死亡は四名、逮捕は三名だった。残り二名は、行方不明だ。
午後五時になる前に、ルーデンドルフは電話で報告した。警察大臣に。任務が完了したことを。
第5話に続く
水曜日から始まる予定だった戒厳令の施行や、帝国陸軍の治安出動は、取りやめになった。
警察大臣が、治安回復宣言をしたからだ。帝都大乱十一日目、火曜日の夕方に、記者会見を開いて。
翌日の水曜日。新聞の一面の見出しは、全紙、治安回復宣言だった。
帝都大乱九日目、日曜日の夕方の段階では、無産者革命党の支配地域は、三エリア十二ブロックに、広がっていた。
具体的には、南二区の南西エリアと南東エリア、南三区南西エリアだ。それぞれのエリアの南部地区、第七ブロックから第九ブロックの合計十二ブロックだ。
もちろん、十二ブロック全体を、一面的に支配していたわけではない。半分弱ほどの面積を、飛び飛びに、支配していた。
支配できなかった地区は、帝都最大マフィアの銀狼会と、帝都第二勢力のマフィア鉄血会の縄張り、それに、老舗革命団体である労農革命党の統治地域だ。労農革命党は、一部の地区にバリケードを作り、立てこもり続けていた。
だが、日曜日の深夜から、月曜日の未明にかけて、状況が激変した。
共和国特殊工作部隊の全小隊が、一斉に、帝都から撤退したからだ。ルビー・クールの差し金により。
無産者革命党の各師団は、それぞれ、特殊工作部隊一個小隊から、支援を受けていた。
南二区南西エリア、南二区南東エリア、南三区南西エリアは、無産者革命党の第四師団、第五師団、第七師団が、それぞれ、担当していた。この三つの師団は、師団幹部たちが健在で、加えて、特殊工作部隊の小隊長とも、関係が良好だった。特殊工作部隊小隊長の助言を受け入れて、支配地区の防衛体制を築いていた。
しかし突然、月曜日の朝、共和国特殊工作部隊が、忽然と消えた。なんの前触れもなく。
月曜日の朝九時から、一斉攻撃が、始まった。銃で武装した警官隊によって。
ダリアと、自由革命党大幹部である彼女の祖父を通じて、自由革命党員の副署長に、情報が伝えられていたからだ。共和国特殊工作部隊が、帝都から撤退した、と。
この日、警官隊が攻撃対象にしたのは、無産者革命党第四師団と、第七師団だ。南二区南西エリアと、南三区南西エリアの両方から、挟撃した。
警官隊の戦力は、二つのエリアとも、それぞれ、五百名ずつだ。
無産者革命党の各師団は、保有する拳銃の数は、五十挺プラスアルファだ。
パニックに陥った。無産者革命党は。警官隊の激しい銃撃で。
頼りにしていた共和国特殊工作部隊も、消えていた。
特殊工作部隊員がいれば、狙撃により、警官隊の前進を止めることができた。
だが、それはもう、できない。
敗走した。為す術なく。南二区南東エリアへ。第四師団と、第七師団が。
南二区南東エリアで、第五師団と合流した。それにより、戦力は、一万人近くにまで増加した。
その日の夕方、警察大臣補佐官のルーデンドルフのもとに、報告が届いた。南三区警察署が、同区から、無産者革命党を一掃した、と。
続いて、南二区警察署からも、報告が入った。南二区南西エリアから、無産者革命党を一掃した、と。
翌火曜日、午前九時。ルーデンドルフが、命じた。一斉攻撃の開始を。
彼が再編成した三千名の警官隊は、南二区南東エリアの第七、第八、第九ブロックで、北側から、南へと進軍した。
南二区と南三区の警官隊それぞれ五百名ずつが、第七ブロックの西側と、第九ブロックの東側を固めた。
もはや、無産者革命党は、逃げ道をふさがれた。袋のネズミ状態となった。
しかし、徹底抗戦した。無産者革命党は。
だがそれも、昼頃までだった。昼過ぎには、三千名以上の死傷者を出し、南へと敗走した。
帝都の周囲は、十メートルを超える城壁に囲まれている。南二区南東エリアには、帝都の外に出る門は、ない。
五千名以上の無産者革命党員が、帝都の南側城壁に追い詰められ、降伏した。
無産者革命党三個師団の師団長、副師団長、師団参謀、計九名のうち、死亡は四名、逮捕は三名だった。残り二名は、行方不明だ。
午後五時になる前に、ルーデンドルフは電話で報告した。警察大臣に。任務が完了したことを。
第5話に続く
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