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<エピローグ 第2話>
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<エピローグ 第2話>
帝都大乱勃発から、十一日目の火曜日。
朝九時に、馬車で出発した。
同じ馬車に乗っているのは、ルビー・クール、ダリア、フランクの三名だ。その後ろを、二台の馬車が続いた。一台はフランクの部下三名が、もう一台は会計士とその助手たちが、乗っている。
ダニエルは、今日は、休みを取ったようだ。
いや、おそらく、フランクかダリアが、強制的に休暇を取らせたのだ。ルビー・クールと顔を合わせると、殺し合いになる可能性があると、考えたからだろう。
馬車を出してすぐに、銀行の前で、馬車を停めた。
ダリアには、先にカジノに行ってもかまわないと言ったのだが、彼女は、待つと答えた。
どうやら、ルビー・クールがいない状態で、エルザと会うのは嫌なようだ。
たしかにエルザは、しばしば予測不能の言動をする。それにより、殺し合いになる可能性がある。
だが、ルビー・クールがいれば、殺し合いを止めてくれる。
ダリアは、そう考えているようだ。
銀行では、口座を作り、貸金庫の契約をした。
銀行員に、帝国魔法学園の学生証を見せたら、スムーズに進んだ。
彼には、こう言った。
「ゲートが、いつ開くか、わからないから、貴重品を貸金庫に預けたいのよ」
ゲートとは、平民区と貴族区の間にある警察の常設検問所の通称だ。
帝都大乱勃発後、ゲートは閉鎖されている。
そのため、ルビー・クールをはじめ、帝都大乱勃発時に平民区にいた貴族は、貴族区に戻れない。
貸金庫には、金貨六百枚、六十万キャピタを入れた。
口座には、もともと持参していた金貨一枚千キャピタ(著者注:日本円で十万円相当)を預けた。その程度の金額なら、下層下級貴族令嬢が持っていても、おかしくない金額のため、怪しまれることはない。
実際、今回、平民区に来る際に、トラブルに巻き込まれる可能性もあると思い、多めに資金を持ってきていた。金貨三枚、銀貨十枚、銅貨十枚、青銅貨十枚だ。合計金額は、四千百十キャピタ(著者注:日本円で四十一万千円)だ。これまでに、ホテル代や食事代などで、千五百キャピタほど使った。
銀行を出てから、しばらく走ったところで、ふたたび、馬車を停めた。鞄屋を、見つけたからだ。
ボストンバッグを、二つ買った。店にいた時間は、十分間から十五分間くらいだ。
ボストンバッグを買ったのは、金貨を入れるためだ。
エルザは、金庫の中の金貨の半分を、くれると言った。
金庫の中の金貨は、四百四十万キャピタから、四百八十万キャピタ(著者注:日本円で四億八千万円相当)はあるはずだ。
その半分なので、ルビー・クールの取り分は、二百二十万キャピタから二百四十万キャピタ(著者注:日本円で二億四千万円相当)だ。
すでに六十万キャピタを受け取っているので、残りは、百六十万キャピタから百八十万キャピタ(著者注:日本円で一億八千万円相当)だ。
重量にして、十六キログラムから十八キログラムだ。
そのため、二つに分けないと、片手に持つことができない。
午前十一時過ぎ、カジノに到着した。エルザが新オーナーとなったカジノに。
カジノでは、すでに顔見知りの二十歳前後のチンピラ十名以外に、見知らぬ顔の三十歳前後のチンピラが、十名いた。
彼らは、エルザの父ジャッカルが、新たに支援に送った連中だ。
エルザが見事、クレイジー・ドッグのカジノと縄張りを手に入れたため、人手が必要だと考えて、派遣してくれたのだ。
だが彼らは、全員、脳筋タイプの男たちだった。戦いのときは、戦力にはなるかもしれないが、実務では使えない連中ばかりだった。
しかたがないので、ルビー・クールが、必要な実務の指揮を執った。
まずは、カジノの支配人と従業員たちを呼び出した。
彼らに対し、ルビー・クールが、エルザの紹介をした。新オーナーであることと、従業員の待遇が、これまで通りであることを、伝えた。
次に、引き取り手のない死体の合同葬を行った。
その死体は、クレイジー・ドッグの部下たちの死体だ。
死体を、カジノの裏手の駐車場に運んだ。近所の教会の牧師を呼んで、葬式をあげてもらった。
エルザは一晩で、裏帳簿全部に、目を通していた。裏帳簿全部を、ダリア配下の会計士に見せた。取引条件だった偽造酒製造・密売グループの情報が記された部分を示して。
会計士とその助手たちは、偽造酒製造・密売グループの情報を、手書きで写しを取った。
夕方までには、その作業は終わった。
エルザとダリアの共闘関係は、夕方、午後四時頃には、終了した。
これで、ルビー・クール、エルザ、ダリアの三者の共闘も、終了した。
第3話に続く
帝都大乱勃発から、十一日目の火曜日。
朝九時に、馬車で出発した。
同じ馬車に乗っているのは、ルビー・クール、ダリア、フランクの三名だ。その後ろを、二台の馬車が続いた。一台はフランクの部下三名が、もう一台は会計士とその助手たちが、乗っている。
ダニエルは、今日は、休みを取ったようだ。
いや、おそらく、フランクかダリアが、強制的に休暇を取らせたのだ。ルビー・クールと顔を合わせると、殺し合いになる可能性があると、考えたからだろう。
馬車を出してすぐに、銀行の前で、馬車を停めた。
ダリアには、先にカジノに行ってもかまわないと言ったのだが、彼女は、待つと答えた。
どうやら、ルビー・クールがいない状態で、エルザと会うのは嫌なようだ。
たしかにエルザは、しばしば予測不能の言動をする。それにより、殺し合いになる可能性がある。
だが、ルビー・クールがいれば、殺し合いを止めてくれる。
ダリアは、そう考えているようだ。
銀行では、口座を作り、貸金庫の契約をした。
銀行員に、帝国魔法学園の学生証を見せたら、スムーズに進んだ。
彼には、こう言った。
「ゲートが、いつ開くか、わからないから、貴重品を貸金庫に預けたいのよ」
ゲートとは、平民区と貴族区の間にある警察の常設検問所の通称だ。
帝都大乱勃発後、ゲートは閉鎖されている。
そのため、ルビー・クールをはじめ、帝都大乱勃発時に平民区にいた貴族は、貴族区に戻れない。
貸金庫には、金貨六百枚、六十万キャピタを入れた。
口座には、もともと持参していた金貨一枚千キャピタ(著者注:日本円で十万円相当)を預けた。その程度の金額なら、下層下級貴族令嬢が持っていても、おかしくない金額のため、怪しまれることはない。
実際、今回、平民区に来る際に、トラブルに巻き込まれる可能性もあると思い、多めに資金を持ってきていた。金貨三枚、銀貨十枚、銅貨十枚、青銅貨十枚だ。合計金額は、四千百十キャピタ(著者注:日本円で四十一万千円)だ。これまでに、ホテル代や食事代などで、千五百キャピタほど使った。
銀行を出てから、しばらく走ったところで、ふたたび、馬車を停めた。鞄屋を、見つけたからだ。
ボストンバッグを、二つ買った。店にいた時間は、十分間から十五分間くらいだ。
ボストンバッグを買ったのは、金貨を入れるためだ。
エルザは、金庫の中の金貨の半分を、くれると言った。
金庫の中の金貨は、四百四十万キャピタから、四百八十万キャピタ(著者注:日本円で四億八千万円相当)はあるはずだ。
その半分なので、ルビー・クールの取り分は、二百二十万キャピタから二百四十万キャピタ(著者注:日本円で二億四千万円相当)だ。
すでに六十万キャピタを受け取っているので、残りは、百六十万キャピタから百八十万キャピタ(著者注:日本円で一億八千万円相当)だ。
重量にして、十六キログラムから十八キログラムだ。
そのため、二つに分けないと、片手に持つことができない。
午前十一時過ぎ、カジノに到着した。エルザが新オーナーとなったカジノに。
カジノでは、すでに顔見知りの二十歳前後のチンピラ十名以外に、見知らぬ顔の三十歳前後のチンピラが、十名いた。
彼らは、エルザの父ジャッカルが、新たに支援に送った連中だ。
エルザが見事、クレイジー・ドッグのカジノと縄張りを手に入れたため、人手が必要だと考えて、派遣してくれたのだ。
だが彼らは、全員、脳筋タイプの男たちだった。戦いのときは、戦力にはなるかもしれないが、実務では使えない連中ばかりだった。
しかたがないので、ルビー・クールが、必要な実務の指揮を執った。
まずは、カジノの支配人と従業員たちを呼び出した。
彼らに対し、ルビー・クールが、エルザの紹介をした。新オーナーであることと、従業員の待遇が、これまで通りであることを、伝えた。
次に、引き取り手のない死体の合同葬を行った。
その死体は、クレイジー・ドッグの部下たちの死体だ。
死体を、カジノの裏手の駐車場に運んだ。近所の教会の牧師を呼んで、葬式をあげてもらった。
エルザは一晩で、裏帳簿全部に、目を通していた。裏帳簿全部を、ダリア配下の会計士に見せた。取引条件だった偽造酒製造・密売グループの情報が記された部分を示して。
会計士とその助手たちは、偽造酒製造・密売グループの情報を、手書きで写しを取った。
夕方までには、その作業は終わった。
エルザとダリアの共闘関係は、夕方、午後四時頃には、終了した。
これで、ルビー・クール、エルザ、ダリアの三者の共闘も、終了した。
第3話に続く
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