24 / 53
<第四章 第5話>
しおりを挟む
<第四章 第5話>
男たちは、次々に失神昏倒した。エルザが大型スコップを、彼らの脳天に、打ち下ろすたびに。
男たちは、刃物で戦おうと振り返ろうとするのだが、両足が膝まで凍りついているため、充分に振り返ることができない。
男たちは、次々に大型スコップの餌食となった。
フランクの部下五名も、大型スコップを手に現れた。三名は、エルザと同様に、リビングルームから現れた。残りの二名は、ベッドルームのクローゼットの中からだ。
彼ら五名も、拉致部隊の隊員たちの脳天に、大型スコップを振り下ろした。次から次へと。
フランクが、現れた。部屋の奥のカーテン裏から。四十五口径の大型リボルバーを手に。
その際、ダリアの姿が一瞬見えた。カーテンの裏に隠れ、顔を少しだけ出して、魔法詠唱を続けている。姿をさらさないのは、敵からの銃撃を避けるためだ。
ルビー・クールが、上半身を起こした。掛け布団をめくって。
掛け布団の下には、枕二つと、リボルバー二挺が置かれていた。
銃口を枕にあて、掛け布団の内側から発砲したため、銃声が、ほとんどしなかったのだ。
ベッドの上のリボルバーのうち、一挺だけをホルスターに戻した。もう一挺を左手で持つと、身体の反対側に置いてあった鋼鉄製雨傘を、右手でつかんだ。
敵の男たちの一人が、叫んだ。
「おまえら、何者だ!」
「あたしは、貴族令嬢よ」
冷ややかに答えた。ルビー・クールが。ベッドの上に、土足で立ち上がりながら。
別の男が、叫んだ。
「なんで、こんなことするんだ!」
「決まってるでしょ。あなたたちが、貴族令嬢を拉致して、殺そうとするからよ」
そう答えながら、ベッドから降りた。
雨傘を振るい始めた。ルビー・クールが。
次々に、敵の男たちを悶絶させ、失神昏倒させた。敵の男たちは、刃物で立ち向かおうとするが、雨傘との圧倒的なリーチ差で、まったく歯が立たない。
ルビー・クールは一直線に、中隊長のもとへ向かった。その直線上の周囲にいるジャマな男たちを、雨傘で倒しながら。
床にうずくまる中隊長から、拳銃を回収した。
すぐさまベッドまで後退し、その拳銃をベッドの上に置いた。
その頃には、拉致部隊は壊滅していた。
最後の拉致部隊員が、殴り倒された。エルザの大型スコップで。
エルザが叫んだ。
「楽しかった!」
奇声をあげながら、笑い転げた。
ダリアが、カーテンの陰から現れた。小声で、「キチガイ女」と吐き捨てながら。
エルザのことだろう。
ルビー・クールが、自分のショルダーバッグの中から、荷造り用の細い紐を取り出した。
全員に、呼びかけた。
「作戦は、まだ終わってないわよ」
小分けした紐の束を、フランクの部下たちに渡した。
彼らの一人が、ぼやいた。
「めんどうだな。殺したほうが、楽だぜ」
すぐさま、ルビー・クールが反論した。
「死体の数が多いと、死体処理が大変になるのよ。生かしておけば、あとで警察に引き渡すことができるわ」
引き渡すのは、自由革命党の息のかかった悪徳警部だ。彼が、引き渡された無産者革命党の党員たちを、強盗罪で逮捕する。たとえ、強盗をしていなかったとしても。
一方、死体は、警察には引き渡さない。もし引き渡せば、悪徳警部であっても、殺人事件として、犯人を捜さなければ、ならないからだ。
ぼやきながらも、フランクの部下五名が、失神中の拉致部隊の隊員たちを、後ろ手に縛り始めた。
ルビー・クールは、ショルダーバッグからガーゼと包帯を取り出した。
自分が銃撃した男たちの脈を取り、生きている者に対しては、傷口にガーゼを当て、包帯を巻き始めた。
ダリアが、不思議そうな顔で尋ねた。
「なぜ、そんなやつらの手当てをするの? どうせ死ぬのに。しばらく地下室に閉じ込めておくのだから」
そのとおりだ。拘束した敵は、このホテルの地下倉庫に閉じ込めておく。北西エリアの警察機能が回復するまで。作戦がすべて順調に進めば、警察への引き渡しは、明日の日曜の午後だ。
「応急手当さえしておけば、死んでも、警察に引き渡すことができるわ。よそで銃撃されて、このホテルに逃げ込んできたので、従業員が応急手当をした。そういう筋書きよ」
このホテルには、裏手に馬車を停める駐車場がある。その駐車場の隅に、ゴミ焼却炉がある。だが、そのゴミ焼却炉は、それほど大きくない。一度に焼ける死体は、一体だけだ。
警察機能が回復したあとは、ゴミ焼却炉で死体を焼くわけには、いかない。だから、死体を増やすわけには、いかないのだ。
生存者の応急手当を、終えた。
ルビー・クールが、立ち上がった。
「さあ、次の作戦の打ち合わせを、するわよ」
第五章「絞首刑台広場で絶体絶命」に続く
男たちは、次々に失神昏倒した。エルザが大型スコップを、彼らの脳天に、打ち下ろすたびに。
男たちは、刃物で戦おうと振り返ろうとするのだが、両足が膝まで凍りついているため、充分に振り返ることができない。
男たちは、次々に大型スコップの餌食となった。
フランクの部下五名も、大型スコップを手に現れた。三名は、エルザと同様に、リビングルームから現れた。残りの二名は、ベッドルームのクローゼットの中からだ。
彼ら五名も、拉致部隊の隊員たちの脳天に、大型スコップを振り下ろした。次から次へと。
フランクが、現れた。部屋の奥のカーテン裏から。四十五口径の大型リボルバーを手に。
その際、ダリアの姿が一瞬見えた。カーテンの裏に隠れ、顔を少しだけ出して、魔法詠唱を続けている。姿をさらさないのは、敵からの銃撃を避けるためだ。
ルビー・クールが、上半身を起こした。掛け布団をめくって。
掛け布団の下には、枕二つと、リボルバー二挺が置かれていた。
銃口を枕にあて、掛け布団の内側から発砲したため、銃声が、ほとんどしなかったのだ。
ベッドの上のリボルバーのうち、一挺だけをホルスターに戻した。もう一挺を左手で持つと、身体の反対側に置いてあった鋼鉄製雨傘を、右手でつかんだ。
敵の男たちの一人が、叫んだ。
「おまえら、何者だ!」
「あたしは、貴族令嬢よ」
冷ややかに答えた。ルビー・クールが。ベッドの上に、土足で立ち上がりながら。
別の男が、叫んだ。
「なんで、こんなことするんだ!」
「決まってるでしょ。あなたたちが、貴族令嬢を拉致して、殺そうとするからよ」
そう答えながら、ベッドから降りた。
雨傘を振るい始めた。ルビー・クールが。
次々に、敵の男たちを悶絶させ、失神昏倒させた。敵の男たちは、刃物で立ち向かおうとするが、雨傘との圧倒的なリーチ差で、まったく歯が立たない。
ルビー・クールは一直線に、中隊長のもとへ向かった。その直線上の周囲にいるジャマな男たちを、雨傘で倒しながら。
床にうずくまる中隊長から、拳銃を回収した。
すぐさまベッドまで後退し、その拳銃をベッドの上に置いた。
その頃には、拉致部隊は壊滅していた。
最後の拉致部隊員が、殴り倒された。エルザの大型スコップで。
エルザが叫んだ。
「楽しかった!」
奇声をあげながら、笑い転げた。
ダリアが、カーテンの陰から現れた。小声で、「キチガイ女」と吐き捨てながら。
エルザのことだろう。
ルビー・クールが、自分のショルダーバッグの中から、荷造り用の細い紐を取り出した。
全員に、呼びかけた。
「作戦は、まだ終わってないわよ」
小分けした紐の束を、フランクの部下たちに渡した。
彼らの一人が、ぼやいた。
「めんどうだな。殺したほうが、楽だぜ」
すぐさま、ルビー・クールが反論した。
「死体の数が多いと、死体処理が大変になるのよ。生かしておけば、あとで警察に引き渡すことができるわ」
引き渡すのは、自由革命党の息のかかった悪徳警部だ。彼が、引き渡された無産者革命党の党員たちを、強盗罪で逮捕する。たとえ、強盗をしていなかったとしても。
一方、死体は、警察には引き渡さない。もし引き渡せば、悪徳警部であっても、殺人事件として、犯人を捜さなければ、ならないからだ。
ぼやきながらも、フランクの部下五名が、失神中の拉致部隊の隊員たちを、後ろ手に縛り始めた。
ルビー・クールは、ショルダーバッグからガーゼと包帯を取り出した。
自分が銃撃した男たちの脈を取り、生きている者に対しては、傷口にガーゼを当て、包帯を巻き始めた。
ダリアが、不思議そうな顔で尋ねた。
「なぜ、そんなやつらの手当てをするの? どうせ死ぬのに。しばらく地下室に閉じ込めておくのだから」
そのとおりだ。拘束した敵は、このホテルの地下倉庫に閉じ込めておく。北西エリアの警察機能が回復するまで。作戦がすべて順調に進めば、警察への引き渡しは、明日の日曜の午後だ。
「応急手当さえしておけば、死んでも、警察に引き渡すことができるわ。よそで銃撃されて、このホテルに逃げ込んできたので、従業員が応急手当をした。そういう筋書きよ」
このホテルには、裏手に馬車を停める駐車場がある。その駐車場の隅に、ゴミ焼却炉がある。だが、そのゴミ焼却炉は、それほど大きくない。一度に焼ける死体は、一体だけだ。
警察機能が回復したあとは、ゴミ焼却炉で死体を焼くわけには、いかない。だから、死体を増やすわけには、いかないのだ。
生存者の応急手当を、終えた。
ルビー・クールが、立ち上がった。
「さあ、次の作戦の打ち合わせを、するわよ」
第五章「絞首刑台広場で絶体絶命」に続く
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クアドロフォニアは突然に
七星満実
ミステリー
過疎化の進む山奥の小さな集落、忍足(おしたり)村。
廃校寸前の地元中学校に通う有沢祐樹は、卒業を間近に控え、県を出るか、県に留まるか、同級生たちと同じく進路に迷っていた。
そんな時、東京から忍足中学へ転入生がやってくる。
どうしてこの時期に?そんな疑問をよそにやってきた彼は、祐樹達が想像していた東京人とは似ても似つかない、不気味な風貌の少年だった。
時を同じくして、耳を疑うニュースが忍足村に飛び込んでくる。そしてこの事をきっかけにして、かつてない凄惨な事件が次々と巻き起こり、忍足の村民達を恐怖と絶望に陥れるのであった。
自分たちの生まれ育った村で起こる数々の恐ろしく残忍な事件に対し、祐樹達は知恵を絞って懸命に立ち向かおうとするが、禁忌とされていた忍足村の過去を偶然知ってしまったことで、事件は思いもよらぬ展開を見せ始める……。
青春と戦慄が交錯する、プライマリーユースサスペンス。
どうぞ、ご期待ください。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる