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<第二章 第5話>
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<第二章 第5話>
あっという間の出来事だった。三十秒も、かからなかった。
最初に、魔法の釘を投げつけた。九名の男たちが、絶叫した。右目に、魔法の釘を突き立てられて。
次の瞬間、雨傘の先端を、突き刺した。男たちのみぞおちに。次々と。
全員、一撃で悶絶した。
その直後、彼らの脳天に、雨傘を振り下ろした。次々に。
十名全員を、失神させた。
雨傘の骨は鋼鉄製で、重量は五キログラムもある。ルビー・クールが、護身用に特注したものだ。
重量があるため、女の腕力でも、大抵の男ならば、一撃で失神させることができる。
ルビー・クールが、手招きした。大きなしぐさで。
三台の馬車が、走り出した。
十字路の手前で停まるやいなや、労農革命党の戦闘員たちが降りてきた。失神中の無産者革命党の党員十名を、道路脇に移動させた。馬車の通行のジャマになるからだ。
労農革命党の小隊長と、簡単な打ち合わせをした。
「この方法で、警備網を突破しましょう」
ヴァレンティーナに簡単な報告を済ませたあと、後方の馬車に乗り込んだ。
三台の馬車が、走り出した。
ヨハナが、猟銃を持っていた。銃口は、上に向けている。
火掻き棒は、エミーリアが手にしている。
メラニーは、キッチンナイフだ。
口を開いた。エミーリアが。にらみながら。
「猟銃は、返さないわよ」
「いいわ。北東エリアのホテルに着くまではね」
メラニーも、口を開いた。
「良い手際だったわ。十名を、あっという間に倒すなんて。距離があったから分からなかったけど、魔法攻撃も使ったのかしら」
「ええ。最初にね」
「その雨傘、普通の雨傘じゃないわね。ふつうの傘なら、人を殴ったら、折れるか曲がるかするわ」
「ええ。特注品よ。傘の骨は鋼鉄製」
そこで、口をはさんだ。エミーリアが。
「まだ、信用したわけじゃないわ。あなたのことを。どうやら、無産者革命党と戦っていることは、本当みたいだけど」
そのあと、沈黙が流れた。しばらくのあいだ。
また、停まった。馬車が。
ルビー・クールが降りた。赤い雨傘を持って。
先頭の馬車が、十名ほどの男たちに囲まれていた。男の一人が、ワインの瓶を抱えている。
労農革命党の工作員部隊だ。
ルビー・クールが近づくと、工作員部隊の隊長が、視線を向けた。
「すまん。作戦が失敗した」
彼は、二十歳代後半だ。他の隊員は、二十歳前後の青年ばかりだ。
労農革命党は、若者より、中高年の党員のほうが多い。
だが、無産者革命党は十歳代から二十歳代が中心のため、無産者革命党に化ける工作員には、若者を抜擢し、編成した。急ごしらえで、工作活動の未経験者が多い部隊のため、しくじっても、しかたがない。
「オレの力不足だ。役に立たず、すまん」
「気にすることないわ。世の中は、うまくいかないことだらけよ」
馬車の窓から、声をかけた。戦闘部隊の小隊長が、ルビー・クールに。
「第五ポイントは、増援により、敵の兵力が拡大したらしい」
第五ポイントは、第五ブロックで一番東の警備拠点だ。
「敵兵の人数は?」
「もう、三十名ほど集まっている。今後、さらに増加するかもしれない」
「馬車を全力疾走させたら、突破できるかしら?」
「突破はできるが、敵が後方から追いかけてくる」
第二ブロックと第五ブロックの間には、片道二車線の馬車道がある。第一東西通りだ。
中央分離帯はないが、通りの両側には歩道がある。そのため、通りの幅は、歩道を含めると、三十メートル以上ある。
無産者革命党の警備拠点は、第一東西通りの南側の歩道に設けられている。現在は増援により、南側に伸びる道路にも、たむろしているようだ。
馬車が全力疾走する距離は、百メートル未満だ。その程度の距離なら、馬車馬も、全力で走り続けることが、できるはずだ。
「追いかけてくる敵は、後方の馬車のあたしが、迎撃するわ」
作戦が、きまった。強行突破作戦が。
あっという間の出来事だった。三十秒も、かからなかった。
最初に、魔法の釘を投げつけた。九名の男たちが、絶叫した。右目に、魔法の釘を突き立てられて。
次の瞬間、雨傘の先端を、突き刺した。男たちのみぞおちに。次々と。
全員、一撃で悶絶した。
その直後、彼らの脳天に、雨傘を振り下ろした。次々に。
十名全員を、失神させた。
雨傘の骨は鋼鉄製で、重量は五キログラムもある。ルビー・クールが、護身用に特注したものだ。
重量があるため、女の腕力でも、大抵の男ならば、一撃で失神させることができる。
ルビー・クールが、手招きした。大きなしぐさで。
三台の馬車が、走り出した。
十字路の手前で停まるやいなや、労農革命党の戦闘員たちが降りてきた。失神中の無産者革命党の党員十名を、道路脇に移動させた。馬車の通行のジャマになるからだ。
労農革命党の小隊長と、簡単な打ち合わせをした。
「この方法で、警備網を突破しましょう」
ヴァレンティーナに簡単な報告を済ませたあと、後方の馬車に乗り込んだ。
三台の馬車が、走り出した。
ヨハナが、猟銃を持っていた。銃口は、上に向けている。
火掻き棒は、エミーリアが手にしている。
メラニーは、キッチンナイフだ。
口を開いた。エミーリアが。にらみながら。
「猟銃は、返さないわよ」
「いいわ。北東エリアのホテルに着くまではね」
メラニーも、口を開いた。
「良い手際だったわ。十名を、あっという間に倒すなんて。距離があったから分からなかったけど、魔法攻撃も使ったのかしら」
「ええ。最初にね」
「その雨傘、普通の雨傘じゃないわね。ふつうの傘なら、人を殴ったら、折れるか曲がるかするわ」
「ええ。特注品よ。傘の骨は鋼鉄製」
そこで、口をはさんだ。エミーリアが。
「まだ、信用したわけじゃないわ。あなたのことを。どうやら、無産者革命党と戦っていることは、本当みたいだけど」
そのあと、沈黙が流れた。しばらくのあいだ。
また、停まった。馬車が。
ルビー・クールが降りた。赤い雨傘を持って。
先頭の馬車が、十名ほどの男たちに囲まれていた。男の一人が、ワインの瓶を抱えている。
労農革命党の工作員部隊だ。
ルビー・クールが近づくと、工作員部隊の隊長が、視線を向けた。
「すまん。作戦が失敗した」
彼は、二十歳代後半だ。他の隊員は、二十歳前後の青年ばかりだ。
労農革命党は、若者より、中高年の党員のほうが多い。
だが、無産者革命党は十歳代から二十歳代が中心のため、無産者革命党に化ける工作員には、若者を抜擢し、編成した。急ごしらえで、工作活動の未経験者が多い部隊のため、しくじっても、しかたがない。
「オレの力不足だ。役に立たず、すまん」
「気にすることないわ。世の中は、うまくいかないことだらけよ」
馬車の窓から、声をかけた。戦闘部隊の小隊長が、ルビー・クールに。
「第五ポイントは、増援により、敵の兵力が拡大したらしい」
第五ポイントは、第五ブロックで一番東の警備拠点だ。
「敵兵の人数は?」
「もう、三十名ほど集まっている。今後、さらに増加するかもしれない」
「馬車を全力疾走させたら、突破できるかしら?」
「突破はできるが、敵が後方から追いかけてくる」
第二ブロックと第五ブロックの間には、片道二車線の馬車道がある。第一東西通りだ。
中央分離帯はないが、通りの両側には歩道がある。そのため、通りの幅は、歩道を含めると、三十メートル以上ある。
無産者革命党の警備拠点は、第一東西通りの南側の歩道に設けられている。現在は増援により、南側に伸びる道路にも、たむろしているようだ。
馬車が全力疾走する距離は、百メートル未満だ。その程度の距離なら、馬車馬も、全力で走り続けることが、できるはずだ。
「追いかけてくる敵は、後方の馬車のあたしが、迎撃するわ」
作戦が、きまった。強行突破作戦が。
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