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<第一章 第2話>
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<第一章 第2話>
「ヴァレンティーナ様!」
制服少女たちが、思わず叫んだ。
金髪少女が、口を開いた。最初に火掻き棒で襲ってきた少女だ。
「この女が、ルイーザを誘拐した犯人です!」
即座に、ルビー・クールが反論した。
「そんなこと、してないわ! なにを証拠に、そんなこと言うの!」
ヴァレンティーナが、金髪少女に視線を向けた。
「エミーリア、わかるように説明しなさい」
「この女の制服を見てください。多数の血痕が、染みになっています。そのうえ、左胸に、穴が開いています。その穴の周囲は、少し焦げています」
たしかに、そのとおりだ。
エミーリアが、言葉を続けた。
「つまり、ルイーザを誘拐したあと、彼女に暴力を振るい、顔を殴って大量に出血させた。だから、制服に血の染みが多数ついている。それから、この女の一味は、ルイーザを陵辱して、殺した。心臓を銃で撃ち抜いて。そのあと、この女がルイーザの制服を身につけ、あたくしたちを拉致するために、だましに来た。ルイーザの時と同様に」
すぐさま、反論した。
「違うわ! そんなこと、してないわ! この制服は、あたしが先週の月曜日に、仕立てたばかりよ」
「先週ですって? だったらなぜ、多くの血痕が染みついてるのよ!」
その問いに、すみやかに答えた。
「この一週間、戦ってきたからよ! 無産者革命党と!」
「左胸に開いた穴は、どう説明するのかしら?」
嫌みたっぷりの口調で、尋ねた。エミーリアが。
「いいわ。見せてあげるわ」
そう言ってルビー・クールは、右手の火掻き棒を、左手に持ち替えた。右手で、胸のボタンを一つはずした。右手を内ポケットに入れた。
取り出した。銀製懐中時計を。
見せつけた。弾丸が食い込んでいる銀時計を。
「この銀時計は、祖父の形見よ。祖父が若いとき、戦場に行く前に、特注した。蓋の部分と、底の部分に、鉄板が一枚ずつ入っているの。心臓を撃たれたけど、二枚目の鉄板で止まったわ」
「まるで、小説のようね。現実の話とは、思えないわ」
「だけど、事実よ」
エミーリアが、ヴァレンティーナに視線を向けた。
「ヴァレンティーナ様。この女は、ルイーザ拉致犯の一味です。今すぐ拘束して、情報を吐かせましょう」
「一味じゃないわ。あたしは、あなたたちを救出に来たのよ」
そのルビー・クールの言葉に、ヴァレンティーナが、冷ややかに言い放った。
「救出? 必要ないわ」
間髪入れずに、反論した。
「必要あります! なぜなら、明日の正午に、みなさんは、絞首刑にされるからです!」
「絞首刑? そんなこと、誰がするの?」
「無産者革命党です」
「ありえないわ」
「なぜ、そう思うのですか?」
「なぜなら」
ヴァレンティーナが、なぜか、上から目線で言い放った。
「彼らとは、取引したからよ」
「取引ですって!」
ルビー・クールが叫んだ。
「だまされたのよ!」
エミーリアも叫んだ。
「勝手に決めつけないでよ! なにも知らないくせに!」
「彼らがペラペラと嘘をつくことは、身に染みて知っています!」
ヴァレンティーナが、反論した。落ち着き払って。
「彼らは、最初は野蛮な無法者だと思ったけれど、話してみると、そんなに悪い人たちではないわ」
「連中は、極悪非道の悪人です! だまされてるんです!」
「彼らを誹謗中傷するのは、やめなさい!」
「誹謗中傷ではありません! 彼らは、みなさんを公開絞首刑にする予定です。明日の正午に」
「証拠は、あるの?」
「我々が、つかんだ情報です。間違いありません」
「その情報が、間違ってる可能性も、あるわね」
「なぜそんなに、彼らの肩を持つのですか?」
「彼らは、約束を守っているからよ」
「どんな約束ですか?」
「あたしたちに危害を加えない、という約束よ」
「危害を加えているじゃないですか! 一名、拉致されたでしょ!」
貴族令嬢たちが、押し黙った。
ルビー・クールが、言葉を続けた。
「このホテルは、無産者革命党一個中隊百名に、常時監視されています。したがって、貴族令嬢一名の拉致は、無産者革命党の黙認がなければ、不可能です」
「その可能性は、あるわね」
そう言いながら、ブルネットの髪の制服美女が、前に進み出た。
彼女も、ルビー・クールよりも体格が大きい。半回りほど。
中級貴族令嬢だ。
エミーリアが彼女に、すがるように尋ねた。
「マルガレーテ様。だとしたら、この薄汚い女も、無産者革命党の一味では?」
「その可能性も、あるわね」
「違います」
きっぱりと言い切った。ルビー・クールが。
マルガレーテが尋ねた。
「先ほどあなたは、我々、と言ったけれど、我々って、あなたと誰のことかしら」
ルビー・クールが、答えた。落ち着きを、取り戻しながら。
「協力者の市民と労働者たちです」
「おかしいわ」
エミーリアが、口をはさんだ。
「無産者革命党は、すべての労働者から支持されているのよ」
クラッとした。頭が。
彼女たちは、洗脳されている。無産者革命党の大嘘に。
どうしたものかと、ルビー・クールは、心の中で頭を抱えた。
「ヴァレンティーナ様!」
制服少女たちが、思わず叫んだ。
金髪少女が、口を開いた。最初に火掻き棒で襲ってきた少女だ。
「この女が、ルイーザを誘拐した犯人です!」
即座に、ルビー・クールが反論した。
「そんなこと、してないわ! なにを証拠に、そんなこと言うの!」
ヴァレンティーナが、金髪少女に視線を向けた。
「エミーリア、わかるように説明しなさい」
「この女の制服を見てください。多数の血痕が、染みになっています。そのうえ、左胸に、穴が開いています。その穴の周囲は、少し焦げています」
たしかに、そのとおりだ。
エミーリアが、言葉を続けた。
「つまり、ルイーザを誘拐したあと、彼女に暴力を振るい、顔を殴って大量に出血させた。だから、制服に血の染みが多数ついている。それから、この女の一味は、ルイーザを陵辱して、殺した。心臓を銃で撃ち抜いて。そのあと、この女がルイーザの制服を身につけ、あたくしたちを拉致するために、だましに来た。ルイーザの時と同様に」
すぐさま、反論した。
「違うわ! そんなこと、してないわ! この制服は、あたしが先週の月曜日に、仕立てたばかりよ」
「先週ですって? だったらなぜ、多くの血痕が染みついてるのよ!」
その問いに、すみやかに答えた。
「この一週間、戦ってきたからよ! 無産者革命党と!」
「左胸に開いた穴は、どう説明するのかしら?」
嫌みたっぷりの口調で、尋ねた。エミーリアが。
「いいわ。見せてあげるわ」
そう言ってルビー・クールは、右手の火掻き棒を、左手に持ち替えた。右手で、胸のボタンを一つはずした。右手を内ポケットに入れた。
取り出した。銀製懐中時計を。
見せつけた。弾丸が食い込んでいる銀時計を。
「この銀時計は、祖父の形見よ。祖父が若いとき、戦場に行く前に、特注した。蓋の部分と、底の部分に、鉄板が一枚ずつ入っているの。心臓を撃たれたけど、二枚目の鉄板で止まったわ」
「まるで、小説のようね。現実の話とは、思えないわ」
「だけど、事実よ」
エミーリアが、ヴァレンティーナに視線を向けた。
「ヴァレンティーナ様。この女は、ルイーザ拉致犯の一味です。今すぐ拘束して、情報を吐かせましょう」
「一味じゃないわ。あたしは、あなたたちを救出に来たのよ」
そのルビー・クールの言葉に、ヴァレンティーナが、冷ややかに言い放った。
「救出? 必要ないわ」
間髪入れずに、反論した。
「必要あります! なぜなら、明日の正午に、みなさんは、絞首刑にされるからです!」
「絞首刑? そんなこと、誰がするの?」
「無産者革命党です」
「ありえないわ」
「なぜ、そう思うのですか?」
「なぜなら」
ヴァレンティーナが、なぜか、上から目線で言い放った。
「彼らとは、取引したからよ」
「取引ですって!」
ルビー・クールが叫んだ。
「だまされたのよ!」
エミーリアも叫んだ。
「勝手に決めつけないでよ! なにも知らないくせに!」
「彼らがペラペラと嘘をつくことは、身に染みて知っています!」
ヴァレンティーナが、反論した。落ち着き払って。
「彼らは、最初は野蛮な無法者だと思ったけれど、話してみると、そんなに悪い人たちではないわ」
「連中は、極悪非道の悪人です! だまされてるんです!」
「彼らを誹謗中傷するのは、やめなさい!」
「誹謗中傷ではありません! 彼らは、みなさんを公開絞首刑にする予定です。明日の正午に」
「証拠は、あるの?」
「我々が、つかんだ情報です。間違いありません」
「その情報が、間違ってる可能性も、あるわね」
「なぜそんなに、彼らの肩を持つのですか?」
「彼らは、約束を守っているからよ」
「どんな約束ですか?」
「あたしたちに危害を加えない、という約束よ」
「危害を加えているじゃないですか! 一名、拉致されたでしょ!」
貴族令嬢たちが、押し黙った。
ルビー・クールが、言葉を続けた。
「このホテルは、無産者革命党一個中隊百名に、常時監視されています。したがって、貴族令嬢一名の拉致は、無産者革命党の黙認がなければ、不可能です」
「その可能性は、あるわね」
そう言いながら、ブルネットの髪の制服美女が、前に進み出た。
彼女も、ルビー・クールよりも体格が大きい。半回りほど。
中級貴族令嬢だ。
エミーリアが彼女に、すがるように尋ねた。
「マルガレーテ様。だとしたら、この薄汚い女も、無産者革命党の一味では?」
「その可能性も、あるわね」
「違います」
きっぱりと言い切った。ルビー・クールが。
マルガレーテが尋ねた。
「先ほどあなたは、我々、と言ったけれど、我々って、あなたと誰のことかしら」
ルビー・クールが、答えた。落ち着きを、取り戻しながら。
「協力者の市民と労働者たちです」
「おかしいわ」
エミーリアが、口をはさんだ。
「無産者革命党は、すべての労働者から支持されているのよ」
クラッとした。頭が。
彼女たちは、洗脳されている。無産者革命党の大嘘に。
どうしたものかと、ルビー・クールは、心の中で頭を抱えた。
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