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プロローグ 処刑直前からの逆襲
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プロローグ 処刑直前からの逆襲
絞首刑台広場は、一万人の悪党たちで、埋め尽くされていた。
帝都大乱勃発から八日目。二回目の土曜日。正午の少し前。南一区南東エリア。
絞首刑台上に、三名の少女が、連行されてきた。後ろ手に、手錠をかけられて。
三名とも、純白の制服を着ている。髪の色は、二名はブロンドで、もう一人はブルネットだ。三名とも、深くうつむいているため、表情は見えない。
少女たちの連行と同時に、広場の悪党たちが、興奮し始めた。
怒声や罵声が、浴びせかけられた。絞首刑台上の少女たちに。
絞首刑台の前には、観客席のように、上等な椅子が、十脚、並べられている。その椅子には、十名の男たちが、ふんぞり返っている。
彼らのすぐ後ろには、用心棒のような男たち十名が、立っている。
その五メートルほど後方に、規制線が張られている。興奮した悪党たちが、絞首刑台に殺到するのを、防ぐためだ。
中央の椅子に座っていた男が、立ち上がった。中肉中背で金髪だ。
続いて、その右隣の男も立ち上がった。黒髪の小男だ。
二人の男は、絞首刑台の前面に設置された階段を、ゆっくりと昇った。
広場の悪党たちの興奮が、さらに高まった。
絞首刑台上にいた作業員が、黒髪小男に、拡声器を手渡した。
黒髪小男が、拡声器を使って叫んだ。広場の悪党たちに向かって。
「これより、臨時革命政府主席が、演説を行う。全員、静粛にせよ!」
黒髪小男が、主席に拡声器を渡した。
主席が、声を張りあげた。拡声器を使って。
「偉大なる同志諸君!」
その一言で、一気に盛りあがった。広場を埋め尽くした悪党たちの興奮が。
「同志諸君! 我々の敵は、誰か?」
広場から、声があがった。「資本家」「ブルジョア」などといった言葉が。
「貴族」という声も、聞こえた。
「その通りだ!」
主席が怒鳴った。拡声器越しに。
「我々の敵は、我々を搾取し続けてきた資本家どもだ! 我々を抑圧し続けてきた貴族どもだ! 我々はなぜ、この両手に、なにも持っていないのか? それは、資本家どもと貴族どもが、奪い続けてきたからだ!」
そこでいったん、言葉を句切った。
広場は、興奮の渦に飲み込まれた。悪党たちは、興奮した面持ちで、次の言葉を待った。
ふたたび、主席が怒鳴った。
「だがそれは、昨日までの我々だ。すでに我々は、警察署を一つ、叩き潰した。敵の走狗である警察から、多くの銃を接収した。ゆえに、今の我々の手には、多くの銃がある。ライフル大隊! 銃をかかげよ!」
男たちが一斉に、ライフル銃を天高く突き上げた。広場の中央前方辺りだ。銃の数は、全部で五十挺。
広場から、大きな歓声が、あがった。
主席が、言葉を続けた。
「拳銃大隊、銃をかかげよ!」
男たちが一斉に、拳銃を持った手を突き上げた。ライフル大隊の両隣だ。その数、それぞれ五十挺ずつで、合計百挺だ。
さらに大きな歓声が、広場からあがった。
主席が、拡声器を持ち直した。
「本日これより、我々の革命の第二段階を、実行する! ここにいる貴族女どもを絞首刑にする!」
広場の悪党たちが、歓喜の声をあげた。
主席が、さらに言葉を続けた。
「絞首刑ののち、ライフル大隊を先頭に、北伐を開始する! ブルジョア地区の資本家どもは、皆殺しだ! 奪い尽くし、殺し尽くし、焼き尽くせ! 奴らの世界を、地獄に変えろ!」
興奮の絶頂に、達した。広場の悪党たちが、一斉に叫んだ。「革命万歳」、「無産者革命、万歳」と。
主席が、振り返った。
うつむく少女たちに、視線を向けた。
「おまえら、絞首刑になる気分は、どうだ? 今まで、虫けらのように踏みにじってきた者たちの手で、殺される気分は」
「踏みにじってきたつもりは、ないわ」
中央の金髪少女が、うつむいたまま答えた。
激昂した。主席が。
「ふざけるな! この寄生虫が! おまえら貴族もブルジョアも、我々を搾取し、生き血を吸う寄生虫だ!」
主席が、合図をした。三名の作業員が、少女たちの首に、太いロープをかけた。絞首刑用の頑丈な縄だ。
主席が、極悪そうな笑みを浮かべた。
「そうだ。殺す前に、見てやろう。絶望に、うちひしがれた顔を」
そう言いながら、中央の少女に近寄った。
少女が、顔をあげた。にらみつけた。
「絶望するのは、あなたたちよ」
「なに言ってやがる。おまえはもう、絶体絶命だ。誰も助けに来ない。処刑まで、秒読みだ」
「秒読みなのは、あなたの処刑よ」
「ふざけるな!」
そう怒鳴りながら、少女の髪をつかんだ。
金髪が、ごっそりと抜けた。
いや、違う。金髪のウイッグが、はずれたのだ。
ウイッグの下から現れたのは、真っ赤な赤毛だ。
驚愕の表情を見せた。主席が、石のように固まって。
赤毛の美少女ルビー・クールが、冷ややかに言い放った。
「あなたの革命の時間は、ここで終わり。ここからは、あたしたちの逆襲の時間よ」
第一章「救出難航で絶体絶命」に続く
絞首刑台広場は、一万人の悪党たちで、埋め尽くされていた。
帝都大乱勃発から八日目。二回目の土曜日。正午の少し前。南一区南東エリア。
絞首刑台上に、三名の少女が、連行されてきた。後ろ手に、手錠をかけられて。
三名とも、純白の制服を着ている。髪の色は、二名はブロンドで、もう一人はブルネットだ。三名とも、深くうつむいているため、表情は見えない。
少女たちの連行と同時に、広場の悪党たちが、興奮し始めた。
怒声や罵声が、浴びせかけられた。絞首刑台上の少女たちに。
絞首刑台の前には、観客席のように、上等な椅子が、十脚、並べられている。その椅子には、十名の男たちが、ふんぞり返っている。
彼らのすぐ後ろには、用心棒のような男たち十名が、立っている。
その五メートルほど後方に、規制線が張られている。興奮した悪党たちが、絞首刑台に殺到するのを、防ぐためだ。
中央の椅子に座っていた男が、立ち上がった。中肉中背で金髪だ。
続いて、その右隣の男も立ち上がった。黒髪の小男だ。
二人の男は、絞首刑台の前面に設置された階段を、ゆっくりと昇った。
広場の悪党たちの興奮が、さらに高まった。
絞首刑台上にいた作業員が、黒髪小男に、拡声器を手渡した。
黒髪小男が、拡声器を使って叫んだ。広場の悪党たちに向かって。
「これより、臨時革命政府主席が、演説を行う。全員、静粛にせよ!」
黒髪小男が、主席に拡声器を渡した。
主席が、声を張りあげた。拡声器を使って。
「偉大なる同志諸君!」
その一言で、一気に盛りあがった。広場を埋め尽くした悪党たちの興奮が。
「同志諸君! 我々の敵は、誰か?」
広場から、声があがった。「資本家」「ブルジョア」などといった言葉が。
「貴族」という声も、聞こえた。
「その通りだ!」
主席が怒鳴った。拡声器越しに。
「我々の敵は、我々を搾取し続けてきた資本家どもだ! 我々を抑圧し続けてきた貴族どもだ! 我々はなぜ、この両手に、なにも持っていないのか? それは、資本家どもと貴族どもが、奪い続けてきたからだ!」
そこでいったん、言葉を句切った。
広場は、興奮の渦に飲み込まれた。悪党たちは、興奮した面持ちで、次の言葉を待った。
ふたたび、主席が怒鳴った。
「だがそれは、昨日までの我々だ。すでに我々は、警察署を一つ、叩き潰した。敵の走狗である警察から、多くの銃を接収した。ゆえに、今の我々の手には、多くの銃がある。ライフル大隊! 銃をかかげよ!」
男たちが一斉に、ライフル銃を天高く突き上げた。広場の中央前方辺りだ。銃の数は、全部で五十挺。
広場から、大きな歓声が、あがった。
主席が、言葉を続けた。
「拳銃大隊、銃をかかげよ!」
男たちが一斉に、拳銃を持った手を突き上げた。ライフル大隊の両隣だ。その数、それぞれ五十挺ずつで、合計百挺だ。
さらに大きな歓声が、広場からあがった。
主席が、拡声器を持ち直した。
「本日これより、我々の革命の第二段階を、実行する! ここにいる貴族女どもを絞首刑にする!」
広場の悪党たちが、歓喜の声をあげた。
主席が、さらに言葉を続けた。
「絞首刑ののち、ライフル大隊を先頭に、北伐を開始する! ブルジョア地区の資本家どもは、皆殺しだ! 奪い尽くし、殺し尽くし、焼き尽くせ! 奴らの世界を、地獄に変えろ!」
興奮の絶頂に、達した。広場の悪党たちが、一斉に叫んだ。「革命万歳」、「無産者革命、万歳」と。
主席が、振り返った。
うつむく少女たちに、視線を向けた。
「おまえら、絞首刑になる気分は、どうだ? 今まで、虫けらのように踏みにじってきた者たちの手で、殺される気分は」
「踏みにじってきたつもりは、ないわ」
中央の金髪少女が、うつむいたまま答えた。
激昂した。主席が。
「ふざけるな! この寄生虫が! おまえら貴族もブルジョアも、我々を搾取し、生き血を吸う寄生虫だ!」
主席が、合図をした。三名の作業員が、少女たちの首に、太いロープをかけた。絞首刑用の頑丈な縄だ。
主席が、極悪そうな笑みを浮かべた。
「そうだ。殺す前に、見てやろう。絶望に、うちひしがれた顔を」
そう言いながら、中央の少女に近寄った。
少女が、顔をあげた。にらみつけた。
「絶望するのは、あなたたちよ」
「なに言ってやがる。おまえはもう、絶体絶命だ。誰も助けに来ない。処刑まで、秒読みだ」
「秒読みなのは、あなたの処刑よ」
「ふざけるな!」
そう怒鳴りながら、少女の髪をつかんだ。
金髪が、ごっそりと抜けた。
いや、違う。金髪のウイッグが、はずれたのだ。
ウイッグの下から現れたのは、真っ赤な赤毛だ。
驚愕の表情を見せた。主席が、石のように固まって。
赤毛の美少女ルビー・クールが、冷ややかに言い放った。
「あなたの革命の時間は、ここで終わり。ここからは、あたしたちの逆襲の時間よ」
第一章「救出難航で絶体絶命」に続く
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